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【 レビューあり 】 umetu 『パッチワーク』 大阪府

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ZINE REVIEW by 加藤 淳也(PARK GALLERY)

今年の COLLECTIVE も今日でおしまい。81タイトルという数の ZINE が集まったのもすごいなと思うし、佐賀への巡回という新しいことにチャレンジできたのも、とてもうれしい。何より、この不思議な企画を快く受け止めてくれた嬉野のコーヒースタンド『おひるね諸島』さんに感謝です。

こんなにたくさんのパーソナルな ZINE が一堂に集まるというのはなかなかない機会だと思っています。しかもジャンルもクオリティも本当にバラバラ。本当に驚くほど、バラバラ。

例えばインディペンデントな本を扱う書店や雑貨屋はたくさんあるし、アートブック関連の販売イベントも全国各地であるけれど、スペースの都合でどうしても店主や主宰者によって精査(審査)されたり、ブースの出店料が高かったりと、「ZINEって気軽だよ」と言いながらも、意外となかなか「発表する」というハードルは高いのです。

だからぼくらが意識しているのは「ハードルを下げる」ということ。なにも作家が勇気を出さなくても、ぼくらから47都道府県に向かって「あなたを探している」というニーズをはっきりと提示することで、「発信したい」と思っているひとが気軽に参加できるのかなと思っています。

あとは、チェックはするけれど審査をしない。これも決めてることです。どこの誰とは言わないけれど、ZINE でクオリティやセンスを見るようになったらぶっちゃけこのシーンは「終わり」だと思う。そしてもうこれは2020年以降に現れた、大勢の<センスさん>たちのせいで終わりに向かってるとぼくは思っています。この話は長くなるのでまたどこかで。

みんなちがって、みんないい。— 金子みすゞ

あなたが明日、今日よりすこしでも豊かに生きられるために、ぼくらはパーソナルで不完全な ZINE を集め、発信し続けます。COLLECTIVE は、そういう集合体なのです。

100冊の ZINE売るより1枚の原画を売る方が、経営はきっとうまくいくけれど、ぼくらはもっとたくさんの人が、気軽に自分のことを発信できる世界を目指します。SNS のような軽薄な世界での発信じゃなくてね。

ぼくらはいつでもみなさんの味方です。

はじめて ZINE を作ってみた。また来年も ZINE を作ろう。もっといい ZINE を作りたい。誰かに届けたい、伝えたい。そんな風に、COLLECTIVE を通じて誰かがどこかでそう思ってくれることが、ぼくらのエネルギーです。

さて、今回紹介するのは umetsu さんによる ZINE『パッチワーク』。玄光社『イラストレーション』に掲載された COLLECTIVE の情報を見て、大阪からエントリーしてくれた。SNS がないので、謎のベールに包まれている umetsuさん。肩書きこそないけれど、しっかりとイラストレーションで構成された1冊。しかも加藤がかなり好きなタイプのイラストだ。ずっと作ってみたかったという ZINE ができたタイミングでこの COLLECTIVE に出会い、せっかくだから誰かに見て欲しいという思いに至って参加してくれたという。

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大阪に限らず、地方で ZINE を作って、誰かに見せたい、発信したいと思ったら、どこに行けばいいんだろうって思う人は多いかと思うし、実際に話を聞いているとそういう人は多いみたい。だから、こういう人たちのプラットフォームになれるのはとても誇りだ。

さて、肝心の内容に関して。

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『パッチワーク』というタイトルからもあるように、umetsuさんが日頃見てきたものや聞いたもの、感じたことをイラストにして、切り取り、ツギハギして印刷した1冊。ご自身?かは定かではないけれど、着せ替え人形のように描かれた1人の女性を中心に、雪や宝石、月のような物理的なものから、心の中を切り取ったような抽象的な模様までが描かれ、配置されていく。その時の心理状況を表すオーラのようで、心情を探るのが楽しい。

着せ替えられていく洋服のセンスのよさも見所。

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めくるたびに、どういう気持ちで作ったのだろう、どういうものを見て、何を感じてきたんだろうと、umetsuさんのことがどんどんと気になりはじめる。SNS にいないからこそ、その正体不明の状況が、さらに気持ちを増幅させていく。

Instagram で新しい作家に出会う、ということが随分と多くなったこの時代に、COLLECTIVE はこういう出会いや発見を運んでくれる。ただ待っていては絶対に出会えないセンスの光る作家さんはこの世にまだまだたくさんいて、COLLECTIVE はその入り口の1つとして、かたちになってきている。
umetsuさんのほかの絵ももっとたくさんみてみたい。


そして、来年はどんな作家に出会えるんだろう。今から楽しみだ。


Review by 加藤 淳也(PARK GALLERY)


【 ZINE について 】

自分の見たもの、きいたもの、感じたことをパッチワークみたいに貼りつけて印刷したものです。ずっと作ってみたかったzineを作ってみて、せっかくなので誰かに見てもらいたいと思いました。

価格:¥330(税込)
ページ数:20P
サイズ:148 × 210mm


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作家名:umetu(大阪府寝屋川市)

【 街の魅力 】
都会過ぎず、田舎過ぎず、スーパーも多く過ごしやすいです。
スーパー銭湯 ねやの湯 ... 漫画も沢山あり、ドリンクバーもあるのでずっと居れるところです。

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