長谷川海 個展 『たゆたう』 INTERVIEW by PARK GALLERY
—— 絵を描こう!と思ったきっかけを教えてください。
長谷川:小・中学校の頃、勉強やクラスメイトとの交友関係がうまくいかないこともあって、休みの日は叔母によく美術館に連れていってもらっていました。最初に観た絵はゴッホ、ミロ、松本竣介です。画家の作品だけではなく「生き様」を見ることで、絵を見ること、描くことがとても好きになりました。小学3年くらいから画家になりたいと思っていましたが、美術の成績は良くなかったので美大受験は苦労しました。
美大の卒業後は美術画商で1年間働いたんですが、挫折。
その後、本格的に画家を志すようになりました。
憧れているのは、ゴッホやモーリスドニ、ルオーです。ゴッホの作品は「色彩と構図のバランス」と「魂のような絵」といいますか、その精神性に惹かれます。モーリスドニは人物への慈愛と光へのアプローチが本当にすごいと感じます。ルオーに関しては、黒の使い方や、躍動と静寂の合わさったような画面構成⋯うまく言えないですが、とても美しいです。
—— 今回の「たゆたう」でも多く見られる「水」のモチーフ。長谷川さんが「水」のモチーフが好きな理由を改めてお聞かせください。
1番の理由は、安心するからだと思います。お母さんのお腹の中という感じもあるかもしれません。絵を描くときは、自分じゃない誰かが描いているという感覚もあります。
子どもの頃は「*おゆまる」で工作したり、ソフビで遊んでいたり、透明で柔らかい物は昔からすきでした。
—— 「たゆたう」という言葉は本当に長谷川さんの作品の空気感を表しているかと思いました。この言葉を選んだ理由を教えてください。
方向性が定まらない、曖昧で不安定に漂う状態。もしかしたらこれが自分自身の作風なのかもしれないと思うようになってきました。流れて溶けてまた回帰する。まさにいまの現状であると思い「たゆたう」にしました。
—— 長谷川さんが描く「ひと」はどこか穏やかで、怒りや苦しみのない平和な世界に生きているような気がします。何か描くときに気にしていることはありますか?
「現実」というのは、中々に奇想天外で、自律神経を刺激してくるので「救心」や「命の母」を飲んだりして、その場を逃れる事があります(笑)。なので、私の絵の中に怒りや苦しみの感覚は必要ないと思っています。
気にしているわけではないのですが、眠ると体調がよくなったりしますし、旅に出れば少しだけ心が楽になります。そんな絵が描きたいです。
—— 旅先というと展示作品「砂丘」のイメージなど、旅先で見たものモチーフも結構あったりしますか?
旅先のモチーフは多いです、この「砂丘」は鳥取砂丘です。「プール」は夢の絵ですが、潜在的にハワイの夜のプールのイメージがあるかもしれません。
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—— 宗教画のような「祈り」を感じる絵が多いなと感じました。何か意識していることはありますか?
うーん。難しい質問ですね。食事をするときに感謝したり、眠る時に「今日も何事もなくてよかった」と感じたり、「当たり前」の日常がとても尊いということを意識して生活しています。
あと、古典絵画が好きなこともあるかもしれません。特に中世の宗教画や物語画の中に約束事を探すのも楽しいですし、絵から慰めや魂の安息を感じています。
—— どういう時に描きたい風景を思い浮かべますか?
風呂場で考えます。風呂は思考の時間に最適です。
—— デジタルで書いてる時とアナログで書いてる時の違いみたいなのもあれば知りたいです。
個人的にはデジタルの時は色彩を強くキメたい時にとても使いやすく、逆に「くすみ」や、渋い表現をしたい時は、アナログで制作します。
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—— 今後やりたいことがあれば教えてください。
染色に興味があります。まだ全然出来てないですが、機会があれば染色の作品を発表したいです。
—— 個展にお越しくださる方々へメッセージをお願いします。
お越しいただいたみなさま、本当に見に来ていただいて、どうもありがとうございます。私の絵が、みなさまの心の安らぎにつながれば幸いです。
また家族、友人、ギャラリーのみなさまに心から感謝いたします。みなさまのご尽力あって今回の展示だと思っています。絵を発表できる機会を与えていただきうれしいです。
長谷川海(はせがわ・うみ)
1992年生まれ。女子美術大学卒業。
旅の思い出や日常の絵を描く。
https://www.umihase.com
https://www.instagram.com/umihasegawa
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