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【 レビューあり 】 夜学舎 『B面の歌を聞け』 奈良県

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ZINE REVIEW by ivy(ゲスト)

ZINE において、「思い」は最大のキーワードになる。


会社員として消費者向けのブランドマネジメント、ライフワークとしてメディアでのライティング、創作活動のアウトプットとして ZINE 製作を並行して行う私には、特にこれが強く感じられる。


上記3つの全てで文字と言葉を扱う表現はついて回るし、ゴールが「伝える」ことであるという点では、共通している。その一方で ZINE だけにおいていえるのは、「私が伝えたい」が全ての根源になり得るということ。


メディアでも会社での仕事でも、伝えるべき内容というのは、100%私自身で決められるということは原則としてない。一方で ZINE は、自ら主体性をもって伝えたいことがない限り、そもそも作ろう、ということにはならないはずだ。


さて、ライターで作家の太田明日香さんによる手作り雑誌「B面の歌を聞け」は、この ZINE における特殊性を強く打ち出しつつ、それ自体を作品の魅力に昇華している点が印象に残った。

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まず、中のコンテンツは、太田さんによるエッセイ的なものからインタビュー、寄稿等で構成されているが、どれもが執筆者自身の思いを根幹として書き上げられたものであるのが伝わってくる。ワードで作られた紙面構成はシンプルかつ手作り感満載な誌面がそうした作り手の生の声を反映している。宅録のカセットテープで歌を聴いているような、ちょっとした感情の揺らぎや筆を執るときの手の震えまでこぼさずに伝えてくれているような、手仕事の魅力が詰まっている。

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そして、何よりそのテーマだ。今回の出展作品は創刊号「服の自給を考える」。各々でこのテーマについて考えることが前提の上に成り立っているし、何より太田さんと同じだけの熱量でこのテーマに向き合える人だけがこの雑誌に関わっているのではないだろうかと感じられる内容だ。


「B面の歌を聞け」


まさにこの雑誌のスタンスを端的にいい表す、見事なタイトルだ。敢えて、レコードを裏返してB面を聴く。どうして?聴きたいから。社会のB面、人格のB面、そうした側面に目を向けるのも、合理性よりも、目を向けたいと思う発信者としての思いがあるからこそ。


この ZINE に限らず、今回棚に並んだ ZINE すべてが創り手の思い抜きには語れない。だからこそ、その思い自体を作品の魅力に昇華した本作に最大限のリスペクトを捧げたい。

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ゲストレビュアーとして声をかけていただいて、様々な作家の思いに触れながら、自分なりの手紙を書くつもりで書き進めてきた。最後のレビューがこちらの作品となったが、改めて、全ての作品に込められた思いにもう一度触れたくなった。

レビュー:ivy(ゲスト)


---- 以下 ZINE の詳細と街のこと ----


【 ZINE について 】

ライターの太田明日香がワードで作る手作り雑誌。世の中の主流がA面ならその裏側はB面。B面スピリットを忘れず消費社会をサバイブするためのヒントを提案。創刊号テーマは「服の自給を考える」。

価格:¥1000(税込)
ページ数:40P
サイズ: 148 × 210mm


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作家名:夜学舎(奈良県奈良市)

ライターの太田明日香が運営する自主制作本レーベル。第一作目『愛と家事』(2016年、しろうべえ書房発行)は、創元社から書籍化。第二弾は年一回発行予定の雑誌『B面の歌を聞け』。

https://www.instagram.com
https://twitter.com/yagakusha

【 街の魅力 】
鹿と大仏
【 街のオススメ 】

① ふうせんかづら ... ハイテクを駆使した24時間年中無休の無人古書店。やばい。

② YAMATO Craft Beer SWITCH(近鉄奈良駅店)... ハイテクを駆使した全自動無人のクラフトビールスタンド。やばい。

③ 古書 柘榴ノ國 ... パンクが流れる渋い品揃えの古書店。純文押し。やばい。
【 同じ街で活動するひと 】
・生駒あさみさん ... 奈良が好きすぎて移住してきた奈良マニアの人。奈良愛がやばい。
・棚音文庫さん ... ふうせんかづらで本を出店しているおじさん。品揃えがセンスよくてやばい。


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