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よむラジオ耕耕 #10 『おじさんとわかもの』


加藤:こんにちは、こんばんは。パークギャラリー の加藤淳也です。

星野:こんにちは、こんばんは。PUNIO の星野 蒼天(そら)です。早いもので、あっという間に10回を迎えましたね。

加藤:いろいろありましたね。5月になって印象的なのはリスナーさんから「お便り」が届いて読むようになったことだよね。いろいろな話を聴くのはやっぱり楽しいし、反応をもらえるのはうれしいよね。

ヤクザだって生きている


加藤:星野くんは、最近何してるの?

星野:最近ですか。写真家の間峠武蔵くんの個展の期間中は一日中展示のことを考えたりしていましたけど、最近は時間ができたので、Spotify でポッドキャストを聴いてますね。

加藤:おー参考にもなるし、いいね。

星野:友達から教えてもらった番組でおもしろかった番組があって、音楽雑誌『snoozer』編集長の田中宗一郎さん(通称 タナソウ)がやっているポッドキャストで『the sign podcast』て言う番組があるんですけど、その中でおもしろい回があって。星野源と一緒に作った『Same Thing』て曲で知ってる人もいるかと思うんですが、『スーパーオーガニズム』というバンドのヴォーカルの Orono Noguchi さんと、『ヤクザ』の文化を取材して文章を書いている鈴木智彦さんと3人で話してる回なんですが。

加藤:すごいの聞いてるね(笑)

星野:もちろんヤクザの犯罪は肯定できないし、反社会的勢力は否定されるべきではあるんですが、それに対する国や警察の扱い方には疑問が残っているという話で。つまり、ヤクザは「人がやりたくないこともやってる」という視点があるんですよね。だから彼らなりの決まりとかルールもあって、その中で自分たちなりの仕事をしてるって感覚があるらしいんです。だから、ヤクザや反社とされてる人には、その国の『悪いところ』が全部濃縮されていて⋯とか、そういう話はおもしろいなと思って。一見しりぞけがちな問題も、視点を変えるといろいろ気づくことがあるなという。

加藤:必要悪ってやつだよね。あくまでイメージだけど、パチンコ屋とかの経営も必要だろうし、ローンの審査は通らないけれど借金をしないと生きていけない人もいる中で、お金を借りれるのはヤクザしかいない、みたいなこともきっとあるよね。

星野:そうですね。ヤクザだけじゃなく、自分が恵まれてる環境にいるから、無意識のうちに避けているものや見えていなかったことがあると思ったんです。そこへの視点ってなかなか気づきにくいですよね。

加藤:そうだね、いわば自分の反対側にいる人たちの話というか。

星野:ラジオを聴きながら、その問題はどうやって解決していったらいいのかなって考えた時に、やっぱりこうしてラジオを通じてでもいいので、社会のことや物事をちゃんと聞いて、知って、話し合うことだったりと思いました。

加藤:ヤクザを肯定するのではなく、それぞれの立場やつらさを想像することも大事だよね。 

星野:『耕耕』もそうですけど、PARK GALLERY って、良し悪しじゃなく、あいまいな部分にもちゃんと向き合って話せる場じゃないですか。加藤さんもあいまいな部分を許容した上で発言してくれていたりするし。でも例えばヤクザが一概に悪いわけではないとか、そういう話ができる相手ってすごく限られていると思うんですよね。

加藤:人によっては嫌悪感すら覚えるかもね。

星野:そういうあいまいな価値観が許容される世界って、いつになったら来るんですかね⋯。みんながちゃんとあいまいを許容して話し合うことができる世界。白でも黒でもないグレーを許せる世界っていつ来るんですかね。こういうのって若いゆえの特有な悩みかも知れませんが…。

加藤:どうなんだろう。まぁ、明らからに『あいまいさ』を許す世界や社会ではないよね。例えば文字だけでニュアンスが伝っていないというだけなのに誤解されたまま厳しい態度を取られたりするじゃんね。そういう時に、悲しくなるし気持ちも病むし、そうなるとだんだん発言もしずらくなってくるし…。いつしか僕らは『そういう社会』で生きてるから、暗黒時代はもっと続くんじゃないかな。さらに進化しそう(笑)。

星野:絶望が待っていますね(笑)。

加藤:解決策とかはない気もするけれど、唯一ぼくらが解決できることがあるとするならば、一人ひとりが想像力を持って話せるようになるということかな。想像することは思いやることにもつながるし、それってアートとか、カルチャーでなら育める気がするんだよね。とはいえ強制、強要するのは違うから、せめてぼくらとぼくらの周りの大切なひととの間だけででも『態度』として示していかなきゃいけないんじゃない。

星野:なるほど。

加藤:セクシャルマイノリティの話もそうだけど、白・黒・グレーだけじゃなくてもっとたくさんの『グラデーション』が何事にもあって、段階があるんだから、物事をこうだと決めつけさえしなければグラデーションに目を向けることができるよね。すべてのことに目を向けるのは難しいかもだけれど、困っているひとが近くにいるならなおさら。そこに対していちいちちゃんと真面目に向き合えばいいだけの話だと思う。

星野:確かにアートがそういう力を補える気がします。

加藤:そう。アートやアートのある場所での会話を通じていろいろな考え方や見方に触れることができると、アートだけじゃなく社会問題や個人的な問題の中にもグラデーションの色数がたくさん見えてくると思う。そうなると昨日の自分と違う視点で物事を考えられたりするから、あとは自分の中でその感覚を大事にしたり、友人や家族や恋人と共有すればいいんじゃんて思うけどね。『みんなで共有』して『世界をよくしよう』って考えちゃうと、もう宗教作るしかないし、それはそれで規律という名の分断が生まれる。だからぼくらはせめて小さなコミュニティから意識していきたいね。『ラジオ耕耕』はそういうあいまいさやグラデーションを大事にしていく番組にしたい。

おじさんのこともわかって!


星野:タナソウさんの『the sign podcast』のポッドキャストの中で他にも『全おっさん救済計画』というエピソードもあって、それもおもしろかったです。Oronoさんが、ライブ中に最前列の真ん中で、音楽に乗ることもなく真顔で腕組んで見てるおじさんがいて「なんでライブで音楽に乗らないんだ!おっさんていつもそうだ!」て怒りをぶちまけてたんです(笑)。それをタナソウさんと鈴木さんがなだめて、「おっさんにも言い分はあるんだ」っていう会話が議論されてて。

加藤:擁護するわけじゃないけれど音楽の聞き方は自由だし、おじさんも悪気があったわけじゃないんだってことだよね(笑)。

星野:そうです。おじさんも『スーパーオーガニズム』のライブに来てる時点でだいぶ理解ある人だと思いますし、何よりも、若者の象徴の Orono さんと、おじさん代表のタナソウさんと鈴木さんの三角関係がすごくよかったんですよね。Orono さんもタメ口だし、タナソウさんと鈴木さんも若者相手に偉そうにしないし、年齢を超えた関係性がそこにあったんです。

加藤:20代と50代の歳のだいぶ離れたひとたちが同じ問題について同じ目線で話すことで、もしかしたら意外といい関係を作ることができるかもしれないという例がそこにあるんだね。ちょうど今回届いたお便りの中で『おじさんとわかもの』の関係性についてのお悩みが届いてるから、それを紹介するね。「年上の男性が苦手」というお悩みです。

わたしは住んでいた地元の土地柄なのか、小学生の頃から高校生まで露出魔や痴漢に遭遇することが何度もありました。当時の私はあまりよく分かっておらず、友だちが一緒に帰るよと言ってくれたり、親が迎えにきてくれることで普通に過ごせていました。そんな昔の性的被害は、いま正直普段はほぼ忘れています。それでも、ときどき年上の男性を前にすると引いてしまいますし、今でも夜道を一人で歩くときは後ろを振り返って歩く癖があります。

ただ、このラジオを通じて、加藤さんと星野さん、作家さんたちがこんな風に年齢を超えて関係を築けること、大変うらやましく思いながら聞いていました。

今、年上の男性をできるだけ排除して生きている私にとって、新しい世界、可能性がまだあるのかもしれないと気づかされた気がします。

長くなりましたが、年上の異性に対する苦手意識、年齢を超えた人間関係を築く方法があればアドバイスください。わたしも素敵なレディーになりたいです。

20代女性 ラジオネーム『キャットカフェ』さん


加藤:ありがとうございます。ただ、深刻だね(笑)

星野:深刻ですね。キャットカフェさん。ここでこうして伝えてくれてありがとうございます。

加藤:きっと彼女の場合は、幼い頃の性被害のトラウマによって年上の男性とのコミュニケーションが「恐怖に感じる」ってことだから、さっきのポッドキャストの3人の関係とは少し違うことなのかもしれないけど。少し耕耕で耕してみます。

星野:確かに。あのポッドキャストでの3人の対談は特別な関係かもしれません。

加藤:そのポッドキャストの関係性って、若い子にとってはおじさんに対しての理解につながるし、おじさんたちからしても理解につながるし理解してもらうための救いになるわけじゃん。そういうコミュニケーションが常にできるなら、キャットカフェさんが新しいコミュニティを築くための新たな可能性になるかもしれないよね。星野くんも実際ポッドキャストを聞いたことでおじさんたちから学んだわけで。いいつながりだよね、ラジオも聞くもんです。

星野:聴いててよかったです。どこにつながるかわからないですからね。

加藤:ただ、キャットカフェさんのこのお悩みに対する回答を、残り時間でやるのは難しいかなと。来週にまたぎたいと思います。なので今日はリスナーのみなさんにも SNS を通じて事前にアドバイスをもらっているので今日はそれを紹介していきたいと思います。

年上の異性・属性以外の素敵ポイントを見つけてみよう。そんな私も怖いので心の壁は厚いですが。

SNS の投稿

加藤:いい切り口だと思います。タナソウさんのポッドキャストを例に出して考えると、音楽に理解があって、ライブにまで足を運んでくれる男性が少なからずいて、ただ、最前列で乗らずに音楽だけを聞いてたことに対して「来てくれただけいいじゃん!」て思えることがつまり『素敵ポイントを見つける』てことだよね。音楽の聞き方っていろいろあるのに踊れっていうのが若者の視点で。踊らないでちゃんとスピーカーの前で聴くっていうのがおじさんの視点。でもそれっておじさんの特徴ではないよね。若くても踊らないってこともある。つまり聴き方の中にはいろいろある。

星野:そうですね。

加藤:もちろん露出や痴漢は最低のことだし、性的な被害やパワハラ、セクハラは論外だけど、おじさんの中にはとても優しく親切に対応してくれるひともいるってことだよね。

星野:そうなりますね。

加藤:全部を肯定するのは危険だし、これは簡単に言えないことだけどね。猫被った人もいるから⋯。それこそどんなおじさんが来ようが『心の壁は厚め』っていうのは徹底したほうがいいと思う。ぼく個人の意見だけれど、年の差を超えたコミュニティとかクルーとかって別に美しいとは思わないし、同世代の仲間でも十分いいと思う。自然とつながるものかなと。

いろんな人がいるからひとくくりにはできないよね。

SNS の投稿

加藤:つまりそういうことだよね。おじさんや年上は痴漢する人ばかりじゃない。でも『心の壁は厚め』はいいと思う。

『克服しようと思うとしんどいので苦手だなと思いながら距離を保ち続けると、かなりマシになると思います。』

加藤:これ、僕はすごく共感できるな。全部を排除するのは難しいから、ちょっと苦手だと思ったら、その人と自分のあいだの着地点を見つける、くらいに考えておけば少しは楽になるかもね。もちろん悔しいかもしれないし嫌かもしれないけどね。と言っているうちにおっさんに腹立って来たな。めちゃくちゃ難しいな。

星野:ぼくも無理に距離を保つというか、無理やり仲良くすることはないよと思います。嫌いで苦手なら関わろうとしなくても、別に世界は狭まったりしない気がします。

加藤:そうだよね。ただ、アドバイスしておきながらなんだけど、多分キャットカフェさんはそんなことはもう知ってると思うんだよね。関わらなくていいと思っていたわけで、お便りにもあったけど年上の男性にずっと心を閉ざしてきたわけじゃんさ。でも『耕耕』を聞いてくれて、10歳以上も離れたふたりが話してることや、パークとか PUNIO とかで歳の差は関係ない交流があると知った時に「そんな世界もあるんだ、そっちいきたいかも!」って思ってくれたってことだよね。だったら回答から逃げるわけじゃないけれど「いつでも来てよ!」て思うよね。

星野:そうですよね、パークと PUNIO はいつでもウェルカムです。

加藤:まあ、これに関しては次週も耕していきましょう。なかなか難しい問題なので。それに加えてお便りもまだたくさんいただいているので、悩み相談やご意見を読み上げる回にしたいと思います。ポッドキャストや SNS に投稿フォームを貼りつけています。そこから匿名でもラジオネームでもいつでも意見やリクエスト、お悩みなど送れますのでどしどしお待ちしています。

星野:「自分も何か言いたいな」とか「ふたりに聞いてみたいこと」などあったら今度は7月で紹介したいと思うので、気軽に送ってもらえたらうれしいです。

\ 今週の1曲 /

東京・末広町『パークギャラリー』から明日のカルチャーを耕すインターネットラジオ『耕耕』。

https://lit.link/radiokoukou

CULTURE(文化)≒. CULTIVATE(耕す) 文化を耕すことは、暮らしを耕すこと。

ラジオ『耕耕』は、毎日の暮らしに必要不可欠とも言えるカルチャーをより深く楽しんでもらうための30分のトーク番組です。

PARK GALLERY ディレクターで編集者の加藤が、『アート』や『ものづくり』、カルチャーの発信基地とも言える『場づくり』をキーワードに、ギャラリーでの日々の営みで感じたこと、考えたことや、様々なクリエイター・アーティストと交流して得た気づきを、種を蒔くように話していけたらと思います。

すぐに役には立たないけれど、いつか必ず実がなるようなそんなラジオを目指していけたらと思います。その時はみんなで収穫を祝うかのように乾杯をして喜べたらと思います。

アートに興味があるひともないひとも、楽しんでもらえるかと思います。ぜひ聞いてみてください。

お便りフォーム(匿名でも投稿できます)
https://forms.gle/LBPNNWW3d4XRGKYV9

パーソナリティ:加藤淳也(PARK GALLERY)
https://www.instagram.com/junyakato_parkgallery/

アシスタント:星野蒼天(PUNIO / PARK GALLERY)
https://www.instagram.com/sora_hoshino/

4月5日よりだいたい毎週水曜日の夜にこっそり更新予定です。

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