【 レビューあり 】 Miharu SAKA 『nocturne』 京都府
ZINE REVIEW by いのうえ あかね(PARK GALLERY)
ZINE には、作り手の大切にしているもの、伝えたいことがたくさん詰め込まれている。
それに共感する時もあれば、それぞれの受け手の感覚や感情次第で、新たな発見や出会いに広がったりもする。
手に触れることができる媒体だからこその表現方法があるのも、 ZINE のおもしろいところだなーとわたしは思う。
今回紹介するのは、京都から届いたイラストレーター Miharu SAKA さんによる ZINE『nocturne(ノクターン)』。
A6サイズの1枚の紙を折り本にして、小さなカードのようでありながら、実は大きな1枚の紙。開いてみるとどんな景色が広がるのかがとても楽しみだ。
Miharu SAKA さんは普段、イラストレーションのほかにも立体作品やガラスを素材とした作品を制作している。今回の ZINE にも、 1冊1冊の帯に、透明の半立体的なお花のモチーフが添えられており、ZINE としてだけではなく、1つの立体作品としても楽しむことができる。ゆらゆらと揺れるお花のモチーフは、太陽に透かして光を取り込みたくなる。すこし濁りのある透明な存在感。なんともきれいである。
今回は帯だけでなく、 “透かし” という現象を用いて、Miharu SAKA さん自身の過去の体験や音のイメージを表現しているそう。
そっと帯を抜いて、折り本を開いてみると、細い茎を持った、華奢な花が咲き誇る。
そこに集うのは楽器を持った音楽隊。もしかしたら妖精なのかな? 不思議な世界の、決して怖くはない存在。それぞれの穏やかな表情や、月夜にライトアップされたかのような背景から想像すると、きっとこの子たちは何かを演奏しているようだ。テレビもラジオも消して、絵の中から聞こえる音に聞き耳を立ててみる。見る人によって聞こえてくる音楽はちがうかもしれないけれど、それがいい。この ZINE を開けば、そんな好奇心と想像力が湧いてくる。
ZINE を広げて終わりではない。光に透かしてみると、表裏の絵の関係によって、違う色が見えたり線が見えたりするのである。
とても不思議な気持ちになる。紙に光を取り込むことで、さっきまで見ていたはずの風景が一気に変わり、さらなる世界が広がるのだ。たった1枚の ZINE に見えて、いくつもの物語、いくつもの景色を見せてくれる。
夜に輝く月明かりで、または穏やかな太陽で、この ZINE をたのしんでみてほしい。
Review by いのうえあかね(PARK GALLERY)
【 ZINE について 】
夏の自由研究のような気持ちで作りました。透かしという現象を用いて過去の自分の体験や音のイメージを折本によって表現できないかと思い制作しました。
価格:¥660(税込)
ページ数:8P
サイズ:105 × 148mm
作家名:Miharu SAKA(京都府)
日々の生活の中からモチーフを選び、イラストレーションを軸に立体作品やガラスを素材とした作品など多岐にわたる。
https://www.instagram.com/mi_haru_s
【 街のオススメ 】
石清水八幡宮のケーブルカーからの眺めが好きです。気分転換に山登りができる距離感が良いです。
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