見出し画像

しごとをしながらなにかになる ① 2人展『深呼吸』に寄せて

生きるということは、深く呼吸をするということ。

深呼吸というタイトルをつけたのには大きな意味があるようでない。
長く、深い息を吸った方が遠くまで潜れるだろう。だれだって深く潜って遠くまでいきたいときがある。

元スタイリストの甲斐田亜希さんと仕事をしながら画家を目指す高木沙織さんによる2人展『深呼吸』はそんなイメージをもとに名付けられた。生きるために、自分のアイデンティティを失わないために、何か別の仕事や労力で、短距離ランナーのように細かく息をはいてきた2人が、「絵を描いて生きていこう」と誓ったその節目になる展示。彼女たちのその様子というか状況を『深呼吸』と名付けたのだと思うけれど、わりと1秒くらいでパッと出た言葉だ。

生きるということは、呼吸をするということ。困ったり行き詰まったらどんな呼吸をしているか想像してみるとよいと思ってる。

早起きして描いてみた

ギャラリーのオーナーという立場上、仕事をしながら絵を描くというのがどのくらい大変か、自分なりに感じてみたいと思って、1ヶ月近く毎日絵を描くということを繰り返して実践してみたことがある。その時に思ったのが、「絵以外の時間に追いかけられている感じ」だった。あと5分でキリのいいところまで描き終えなければいけないという感覚がストレスだった。そんなんでいい絵ができるわけがない。妥協点を見つけるのが『絵』(この場合はイラスト)の世界なんだと強く感じた。いい走りをしたというより、とにかく早く走ったという感じ。息があがってあがって仕方がないという感じ。

でも、いつもより1時間だけ早起きした。どんなに眠くてもどんなに疲れていても、1時間だけ早起きしてみる。そうすると「絵を描く時間」があるんだなって思った。もちろん夜は眠いけれど。いつか習慣になる。

しごとをしながらなにかになる

今回、「仕事をしながらクリエティブを仕事にする」というざっくりとしたテーマでアンケートを取ってみてる。それはこれがパークギャラリーにくる多くの作家の悩みであり、多くの若いクリエイターの悩みだからだ。何より「諦めてしまう」要因の1つでもあると思う。ただ「仕事をしながら活動する」って「2足のわらじ(古臭いし嫌な言葉だよね)」と言われるし、ネガティブに捉えがちだけど、別に悪いことじゃないと思う。その方がバランスが取れるひともいれば、自分らしさを(または自分の自覚していない自分の魅力を)外から吸収するひともいる。1足しか履いてないせいで想像力の乏しい誰かの猿真似みたいな作品になってしまってるひともいる。一概には言えない。フリーランス戦国時代、SNS で誰でも明日にはスターみたいな時代だから、むしろ働きながら活動することは、今の時代、推奨できると思う。問題は仕事先の内容や、仕事仲間との関係性にあるように思う。

そうやって浮き彫りになってくる問題を少しでもみんなで意見しあって解消していけたら。また、具体的な解消はなくても、少しでも安心したりリラックスできたらと思い、アンケートを集めています(協力お願いします)

さて、回答をシェア

Q:平均的な1日の作業(制作)時間の分配を教えてください

1日平均で、仕事以外の時間の制作時間は1〜2時間。うーん短い。もちろん仕事から帰ってあと、「その他」という時間がある。それを充てればいいのでは? と思いがちだけれど、でも多くのひとは仕事のあとはヘトヘトで、制作なんてできないと漏らす。テレビも見たいし映画も見たい、本も読みたいよね。ずっとオンはキツイと思う。だから多くのひとは「週末まとめて作業する」ことで、制作時間を確保しているよう。でも、週末は美術館巡りやイベント、友達の誘いなど、インプットの時間にも使いたいところ。そのバランスが難しい。個人的には、週末だけにせず、ちょっとでもいいから毎日何かしら些細なことでもいいから自分のなりたい業種に関わるものを触ってみるというのがオススメかと思う。テーブルの上のメモの落書きでも。朝食の写真でも。アイデアスケッチでも。もしくは週末に描きためたり撮りためたものを寝る前に SNS で発信するのもいいと思う。つまり『作家』だという自覚がなくなってしまう時間を減らすことが大事だと思う。作家というかフリーター、会社員という自虐的な要素が負のスパイラルを生んでしまうのではないかと思う。

Q:制作の時間を作るために工夫していることはありますか?

なるべく手の届くところに画材を置く。仕事の休憩時間を充実させる。仕事中でもパッと思い浮かんだアイデアは必ず書きとめて制作時に役立たせる。など。なるべく手の届くところに画材(写真家ならカメラや好きな写真集、映画などでもいいよね)を置くというのはぼくもすごくいいと思う。逆にこの時間に必ずやるとか決めてしまうと、自分のルールに押し潰されてしまうという声も。性格にもよるだろうけれど少しくらいルーズなルールを持った方がいいのだと思う。

ついでに

ぼくの経験上、時間を作るのも大事だけれど、何かを「決めてやる」のが効率いいかと思っています。連載とかシリーズみたいな気分でやってみる。例えばいつかやる『個展』に向けてみる。つまりテーマやコンセプトを事前に決めてみる。『花と暮らし』と決めたら『花だけ徹底的に描く』。そういう時間の使い方をすると『迷う時間』が節約されるのでいいかと思うし、反復の作業の中でこぼれてしまうものの中に(花を描かないといけないのについ別のものを描いてしまったなどのズレの中に)、意外な自分の「好き」や「特性」を見つけられたりします。またはそのズレも「花」に分類してしまえばいい。それが新しいテーマになり、自分だけのオリジナルの感覚になっていく。そうやって作家が生まれていくような気がします。そういった意味でも個展を想像する=見せる相手を想像する。些細でもいいから毎日描く。というのはとってもいいと思います。

夏休みの宿題をギリギリに済ませていたタイプのひとは個展をもう前のめりで決めてしまうのもいいかと思いますね(お待ちしています!)。

少し長くなってしまったので、今日はここまで。アンケートもう少したまったらまた書きます。

で、あんた誰?ってひとは以下。

加藤 淳也 プロフィール
1982年生まれ。2000年に山形から上京。2002年、下北沢のスズナリ横丁の小さなバーでバーテンダーをやりながらライブハウスのスタッフを兼任。数々のライブイベントのオーガナイザーを務めながら音楽レーベルを立ち上げる。2005年、写真家やアートディレクターが所属するエージェントに勤務。第一線の広告の現場で、制作のノウハウを学ぶ。2008年、ウェブメディアやギャラリーを運営するデザイン会社へ転職。ディレクターとして2012年に独立。以後、クリエイティブな機能を持つアートギャラリー PARK GALLERY として、実店舗を東京・末広町で運営しつつ、広告制作や本の編集ディレクションを手がけている。主な仕事に、Reborn-Art Festival 2019 ウェブサイト制作、東京都現代美術館 Exhibition 特設サイト制作、EDWIN 2019 Exhibition 空間演出、L'Arc~en~Ciel アートワークプロデュース、佐賀の観光ガイドブック『さがごこち』編集、東京新聞『STAND UP STUDENTS』などがある。ラップユニット WEEKEND としてアルバムを2枚リリース(2012年に解散)。2016年より、毎年神奈川県で大豆の農業体験イベントを運営。

加藤 淳也 instagram
https://www.instagram.com/junyakato_parkgallery/

インターネットラジオはじめました
https://youtu.be/lPiPHjCaPmc


🙋‍♂️ 記事がおもしろかったらぜひサポート機能を。お気に入りの雑誌や漫画を買う感覚で、100円から作者へ寄付することができます 💁‍♀️