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issue 07 「海賊王に おれはなれない」 by ivy


「好きな歴史上の人物は誰ですか?」

色々なパターンがあると思うんだけど、これがいるかいないかで世界史・日本史という科目が、拷問か娯楽かを左右することになる。ただ、この問いに対する私の答えは、絶対歴史の教科書には出てこないし、なんなら「歴史上に名を残したか」という前提からして微妙かもしれない。

バーソロミュー・ロバーツ。18世紀に大西洋やカリブ海沿岸を荒らしまわった、ウェールズ出身の海賊船長。どうして彼を知ることになったのか、なぜ好きなのか。興味を持ってくれる人がいるのかすら怪しいけれど、今回は、そんな海賊ロバーツ船長について ーー



IVYLOOK_海賊



そもそも『カリブの海賊』って、ディズニーのアトラクションや映画だけの話ではなくて、本当にいたんだよ、っていう話から。

17世紀から18世紀にかけて、カリブ海の植民地からヨーロッパへ資源を輸
送する船を狙い、金品を奪い取る、簡単にいえば海の泥棒。ただ、ワンピース然り、パイレーツオブカリビアン然り、単なる犯罪者としてというより、ロマンのある、一種のヒーロー的描かれ方をするのは、当時抱かれていたイメージによるところも大きい。

当時、植民地や船での劣悪な環境での労働は、当時社会の最下層にいた人たちが担っていて、島流しに近い形でやってきた人や経済的・社会的弱者、ドロップアウトした人が集まっていた。そういう状況から海賊に転身をした人が実際にも大半を占めていて、社会の最底辺から一攫千金を狙う、というストーリーができあがる。そう。これは、当時の社会に対するカウンターカル
チャー。オリジナルのドクロの旗は船長ごとに違って、イメージ通り独特なファッションに身を包んで、海賊独自のしきたりや文化もあったことから、いよいよ香ばしい。

で、今回の主役、ロバーツは、教養があり、策略家、カリスマ的リーダーでもあり、ある意味海賊らしくないくらいのスペックの持ち主。軍艦や貿易船など、自分たちよりも遥かに有利な戦力の船を次々に捕らえ、400隻の船を獲物にしたといわれている。漫画の中みたいなキャラだけど、これが本当にいた人物の話なんだからすごい。戦いの際には、自らを誇示するようにダイヤモンドのアクセサリーや真っ赤な衣装を身につけ先頭に立ち、海賊団はロバーツによる鉄の掟で統率。まさにドラマチックな海賊のイメージは、ロバーツによって作られたんじゃないか、ってくらいのインパクトがある。

何より、有り余るスペックがありながら社会に中指突き立てて戦いを挑むなんて、最高にパンク。圧政を強いられ、一部の権力層による搾取のピラミッドが形成されていた時代に、見えない自由が欲しくて海へ飛び出したかのようにも思える。革命家や民主活動家じゃなく、自らの欲望に突き動かされるがまま、噛み付いていくのがまたいい。





そんなロバーツについて、たまたま何かの本で知って、そこから神保町中の本屋を探し回って本を探し回るくらいハマったから、当時何かしら、そういう存在へのシンパシーなり、カウンターカルチャーへの目覚めなりがあったと思われる。

歴史の隅っこで忘れ去られていきそうなカウンターカルチャー、海賊について。調べてみたら、思った以上にこれが面白いんだ。

一度ハマったらなかなかの沼だよ?



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ivy(アイビー)
会社員で物書き、サブカルクソメガネ。
自己満 ZINE 製作や某 WEB メディアでのライターとしても活動。
創り手と語り手、受け手の壁をなくし、ご近所付き合いのように交流するイベント「NEIGHBORS」主催。
日々出会ったヒト・モノ・コトが持つ意味やその物語を勝手に紐解いて、タラタラと書いています。日常の中の非日常、私にとっての非常識が常識の世界、そんな出会いが溢れる毎日に、乾杯ッ!
https://www.instagram.com/ivy.bayside​

イラスト:あんずひつじ
珈琲にまつわるウェブメディア「オトナリ珈琲」さんで、<ストリートとメシ>をテーマにコラム『路端のブランチ』を連載中!こちらもぜひ!


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