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猫背で小声 season2 by 近藤学

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猫背で小声がちょうどいい、会社員・近藤学による人気エッセイのシーズン2。人生の半分を『自分磨き』(ひきこもり)に費やした青年が、社会の窓を開いて外に出るまでの小さな物語をシーズン…
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#ひきこもり

猫背で小声 season2 | 第9話 | 黒か光か

嫌なことがあった。 嫌なこととはまるで墨のようだ。 一滴の墨を水に垂らすと、一瞬にして透明な水に拡がっていく。 一瞬にして黒く冷たい気持ちになっていく。 仕事がつらい。ストレスは溜まる。ストレスが溜まるとうまく唾が飲み込めない症状が出てくる。 この症状はひきこもっていた時に顕著に出ていたが、 また出た。 『限界』という言葉は使いたくないが、もう休んでしまいたい。 投げやりに仕事を放り投げて逃げるように休むのではなく、段階を踏んで、ちゃんと休みたい。それは会社と

猫背で小声 season2 | 第3話 | 死んじゃだめ。

いつの時代も苦しいことはある。 ひきこもり時代のぼくは毎日なにかに悩んでいて、生きた心地がしない毎日を過ごしていた。希望の持てない中学時代や、みんなが普通に過ごした高校時代も、毎日病んで苦しかった。本来なら「思春期」という病に罹るはずだったが、ぼくはあかりさえ灯らない将来に悩んでいた。 まず「統合失調症」という病気。 薬を飲んで休養する、ということを繰り返していたけれど、ベッドに横になっている時も気持ちが悪く、こんな状態がいつまで続くんだろうと、狭い部屋の中で現実と未来

猫背で小声 season2 | 第2話 | 働くことが、苦しくて。

朝、働くことに希望を見出せない時、なにを考えるか? ぼくは実家暮らしの独身で、彼女もおらず、守るものもない。「自分のために働いている」という答えが正しいのだろうか。自信はないが、多分そういう答えが出てくると思う。偉そうに聞こえるかもしれないけれど、ぼく自身、あまり仕事が好きではない。 仕事は事務職でデスクワークだ。 好きじゃないから月曜日の朝は病的に具合が悪くなる。具合が悪い、具合が悪い、と、自分の世界に入ってしまい、具合の悪い自分に冒されてしまう。会社に行っても具合の

猫背で小声 season2 | 第1話 | ビートたけしのお笑いウルトラクイズ

猫背で小声がちょうどいい、会社員・近藤学によるエッセイ「猫背で小声」のシーズン2がはじまりました。題して「猫背で小声 season2 〜あのころを支えていたもの〜引きこもり編」です。人生の半分以上を自分磨き(ひきこもり)で過ごしてきた近藤さんの物語をまだ読んでない人は、ぜひシーズン1からお楽しみください。   第1話 | あのころを支えていたもの ビートたけしのお笑いウルトラクイズ 当時ぼくは中学生。 学校には行かず、名ばかりの中学生だった。 今この連載を見てくれてい