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猫背で小声 season2 by 近藤学

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猫背で小声がちょうどいい、会社員・近藤学による人気エッセイのシーズン2。人生の半分を『自分磨き』(ひきこもり)に費やした青年が、社会の窓を開いて外に出るまでの小さな物語をシーズン…
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2022年12月の記事一覧

猫背で小声 season2 | 第9話 | 黒か光か

嫌なことがあった。 嫌なこととはまるで墨のようだ。 一滴の墨を水に垂らすと、一瞬にして透明な水に拡がっていく。 一瞬にして黒く冷たい気持ちになっていく。 仕事がつらい。ストレスは溜まる。ストレスが溜まるとうまく唾が飲み込めない症状が出てくる。 この症状はひきこもっていた時に顕著に出ていたが、 また出た。 『限界』という言葉は使いたくないが、もう休んでしまいたい。 投げやりに仕事を放り投げて逃げるように休むのではなく、段階を踏んで、ちゃんと休みたい。それは会社と

猫背で小声 season2 | 第8話 | 膜張さん

隠しているわけではないけれど、ぼくにはいま「離人症」という症状がある。 メンタルの病気なのだが、かんたんに言うと「生きている現実感がない」。 自分の見ている風景に膜が張られたようで、現実の世界に自分がいなくなってしまったような症状に悩まされている。 通称「膜張(まくはり)さん」 自分の中ではそう呼んでいる。 わかってはもらえないだろうけれど、知恵を絞って目一杯わかりやすく言うなら、「録画した荒い画質の世界」で生活しているような感じ。 まず視界がクリアじゃない。