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シルクのシャツ

まさか自分が、こんなにたくさんシルクのシャツとかブラウスを持つ日が来るとは思わなかった。しかもわりと古いのばっかり。

赤、ピンク、ベージュ、黄色、黄緑、緑、水色、青、紫。虹色全色をコンプリートしてみてあらためて感心する、ショッキングピンクとグラスグリーンの発色の鮮やかさ。見るたびにため息が洩れる。が、彩度の高さに比例して色落ちも激しいので、洗う時には細心の注意を要する。

そもそもドライクリーニング指定されているのに自宅で洗濯することがまちがいなのだが、ドライクリーニングでは水溶性の汚れが落ちないし、その辺のクリーニング屋に依頼する勇気もない(古い衣類の扱いに慣れてなさそうで怖い)。シルク手洗い専用洗剤も持っているのだけれど、なにせ日本でしか買えない高価な品物なので、あまり気軽にじゃぶじゃぶ使えない(複雑な絵柄の高級スカーフ用にキープしてある)。

試行錯誤ののち、デリケート衣類用洗剤かハンドソープを溶かした水の中で素早くちゃちゃっと振り洗いして絞って、濃いお酢(カルキ除去用に使う濃度14%くらいのやつ)に3分ほど浸けて色留めする、という自己流の方法に落ち着いた。自己流と書いたけれど、ロンドンの有名ヴィンテージ服店も同じやり方で古いシルクを洗っていることを偶然に知ったので、一般的な方法なのかもしれない。シャツのシェルボタンが酢で少しずつ傷むのは、もうしかたない。

薄くて軽くて収納場所をほぼ取らないのに、シルクのシャツは存在感が偉大。テキスタイルじたいの表情が豊かなので、光るアクセサリーは要らない。発色の良さもさることながら、しっとりしていてかつ光沢もあるという生き物っぽい手触りによるところが大きいと思う。

ふにゃふにゃで自立しないから、着られた身体の動きに完全にシンクロする。ボディコンシャスとかスキニーシルエットとは真逆ベクトルで、どれだけふんわり空気を纏えるかどうかがキモ。

なるべく汚したくないというのもあるけれど、ガサツに動くとシルクが悲しむ気がするので、しぐさがおのずとゆっくり優雅になる。

1990年代後半以降のシルク地の服は、色留めがきちんと効いているので扱いやすい。ただ、色が私には魅力的でないのだよね。70-80年代のキレた彩度の色の方が、気分が断然アガる。

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