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7−3:成果をあげるなかれ

役所の手続きは未だに紙中心。
学校はオンライン授業を導入しようとしない。
企業内のサービス部門は動きが遅い。

多くの人が便利快適になることでも、中々変わらない。
このnoteを読めばその理由がわかります。

◆◆◆

◆予算はどのように決まるのか?

いかに大切さを説いたとしても、予算型組織においては効率やコスト管理は美徳ではない。予算型組織の地位は、予算の規模と人の数で計られる。より少ない予算や、より少ない人間で成果をあげても業績とはされない。むしろ組織を危うくしかねない。予算を使い切らなければ、次の年度には予算を減らせると議会や役員会に思わせるだけである。

役所、公営の学校、病院、企業内のサービス部門などは予算によって支払いを受けているいわゆる「予算型組織」です。

「予算型組織」の関心ごとは、いかに多くの予算を手に入れるかです。

そのため、「予算がどう決定されるのか?」を知ることで、彼らがどう行動するのかを考えることができます。

予算の決まり方は①予算の規模と②人の数です。

まず、全体を統括する立場の人間が①全体の予算の規模を算出します。彼はその予算を部署や公的機関全体に適切に配分します。その際、考慮するのが、②人の数です。人が多い部署にはより多くの予算を、少ない部署にはより少ない予算を配分していきます。

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予算が人の数によって決まる以上、予算型組織はより多くの人を組織内に留めようとします。これが彼らが成果を生まない原因となっています。

仮に、ある予算型組織が効率的に仕事をこなすことに成功したとしましょう。例年よりも少ない人数にも関わらず、大きな仕事をこなせたのです。良いことですよね。しかし予算を決める側はこう考えてしまいます。

「少ない人数で成果が上げられるなら、来年度の予算は削減しよう」

結果として、その予算型組織に支払われる予算は少なくなってしまいます。
効率を高めて結果を出すことが逆に予算を減らす原因となってしまうのです。

年度末になると、役所関係の組織は予算消化を目的として、宴を行ったり、不要な部材を購入したりしていますよね。これは彼らにとっての成果である次年度の予算を確保するための行いなのです。また、役所の仕事が一向に改善されないのも同じ理由です。人を削減することを避けるために、効率を求めて改善しようとはしないのです。

◆予算をめぐる対立

しかも予算型組織では、効率よりも成果のほうが危うくされる。われわれの事業は何かとの問いは、常に危険である。論議をまき起こす。そうして起こる議論は、関係当事者間に対立をもたらす。もちろん議論は避けたい。そこで国民と自らをあざむかなければならなくなる。

予算型組織に対して「われわれの事業は何か」と問うことは危険です。

この問いは、顧客を決めて、その欲求を満たすために自分たちの役割を明確にするための問いです。本来であれば、企業内で同じ志を持つために有効な問いですが、予算型組織に対してこの問いを投げかけると対立を招いてしまいます。

なぜなら、どの予算型組織も「より多くの予算があれば、より大きな役割を果たせる」と信じているからです。

つまり、予算型組織同士でより多くの予算を獲得するための争いになってしまうからです。自分たちがより多くの予算を手に入れる正当性を証明するために、本来よりも事業を大きく見せようとするのです。

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◆予算に依存するデメリット

予算に依存することは、優先順位をつけ、活動を集中する妨げとなる。しかし、優先順位の高い目標に資源を集中することなしに、成果をあげることはできない。そのうえ予算に依存することは、まちがったもの、古くなったもの、陳腐化したものの廃棄を難しくする。その結果、公的機関は、非生産的な仕事に関わりを持つ者を大勢抱えることになる。

予算は、人の多いところへより多く流れる性質があります。

その結果、大きく2つのデメリットが生じてしまいます。

①仕事に対して、優先順位がなくなる
予算型組織にとって仕事は予算獲得のために大切なものです。彼らにとってはどんな仕事も等しく予算を手に入れるための手段でしかありません。だから、仕事に優先順位をつけられず、どんな仕事も単純にこなすだけになってしまいます。

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②不要な仕事に溢れてしまう
仕事は多ければ多いほど、予算型組織はより多くの予算を手にできます。そのため、明らかに不要な仕事でも維持しようとします。そして、そんな不要な仕事をこなすための大勢の人間を抱えてしまいます。

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◆予算型組織の性質

人は報われ方に応じて行動する。それは、報酬、昇進、メダル、ほめ言葉のいずれであっても変わらない。予算型組織も、その支払いの受け方のゆえに、貢献ではなく予算を生み出すものこそ成果であり業績であると誤解する。
これが予算型組織に特有の性質である。

予算に依存してしまうのは予算型組織が持つ性質です。

アスリートはメダルをもらうことで喜びを感じます。
営業マンは出世することで喜びを感じます。
それと同じ。

予算型組織は予算をもらうことで喜びを感じるのです。

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だから、不要な仕事でも廃業しようとしません。

どんな仕事であれ予算を手に入れることに繋がるからです。

したがって今日、あらゆるサービス機関が守るべき原則は、「現在行っていることは永遠に続けるべきものである」ではなく、「現在行っていることは、かなり近いうちに廃業すべきものである」でなければならない。

だからこそ、予算型組織が守るべき原則はこうです。

「現在行っている仕事は、極力早めに廃業すべきである」

予算型組織が行うどんな仕事も、続けようとしてはならず、意識して捨てようとしないといけません。


◆予算は悪いものではない

予算に依存することは、それ自体、悪いことでも望ましからざることでもない。十五世紀のヨーロッパの軍や中国の軍閥のような自給自足の軍隊は、絶えず戦い、恐怖をもたらし、略奪と暴行を繰り返していた。そのような軍は、政治のための手段とはなりえない。シビリアン・コントロールと軍事費の予算化は、まさにこの「戦争の自由企業」をなくすものだった。

ここまで予算のことを悪のように書いてきましたが、完全に悪ではありません。

予算に依存させることはすなわち、他の何かへの依存を防ぐことにつながります。

例えば「戦争企業」を廃業できます。戦争を生業にする企業は、戦いから利益を得ていました。戦いが多ければ多いほど彼らの利益は上がるため、彼らが望むのはより多くの戦争です。言い換えると戦争企業は戦争に依存していたのです。

しかし、彼らの収入源が予算に変わります。すると、彼らは無理に戦争をする必要がなくなり、予算に依存するようになります。戦争企業を予算に依存させることで、彼らをコントロールすることができるのです。その結果、「戦争の自由企業」を廃止することが可能になるのです。

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◆◆◆

予算型組織は良くも悪くも予算に依存しています。結果として、仕事に優先順位を持てず、不要な仕事でも捨てられずに抱え込んでしまいます。では、どうすれば彼らの問題を減らすことができるのでしょうか。

ドラッカー先生は、この問題を極力減らせると言います。

その方法について次回からnoteに書いていこうと思います。

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