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【映画感想】最高のディストピア!【JUNK HEAD】

解像度ひくい

※イラストは自分で描いたファンアートです。

皆さんは、ストップモーションアニメをご存じですか?
最近だと見里朝希監督の『PUIPUIモルカー』や『マイリトルゴート』が話題になりましたね。
簡単に言えば、人形を少しずつ動かして写真を撮影し、それを動画にした作品です。
1秒の映像を作るために約10~24枚の画像を撮影する必要があるため、とてつもない時間と労力を必要とします。(※JUNK HEADの場合は24枚)
今回は、7年という月日をかけて撮影されたストップモーションアニメ映画『JUNK HEAD』をご紹介します。

【JUNK HEAD(ジャンクヘッド)】(堀貴秀監督)(2021年3月26日公開)

ジャンクヘッドは、堀貴秀監督がほぼひとりで撮影したというストップモーションアニメ作品です。
冒頭30分はほぼひとりで撮影したそうですが、追加制作のメンバーを入れても12人程度という少人数で、尚且つ映画製作の勉強をした方が居ないという、正に狂気と情熱によって作り上げられた一作。
カナダ・モントリオールで開催されるファンタジア国際映画祭で最優秀長編アニメーション賞を受賞するなど、世界的にも評価されているSFアニメ映画です。
日本では逆輸入という形で上映が始まりましたが、公開館を増やしながら多くの人々を魅了しています。

●あらすじ●

遥か昔、人類は核の冬により汚染された地上を捨て去り、地下で暮らす事を検討する。そして、地下開発のための労働力として人工生命体・マリガンを創造した。しかし、マリガンは自我に目覚め、クローンを増やし人類に反乱を起こす。人類とマリガンの戦いは120年間続き停戦。それからは人間が地上で、マリガンが地下で暮らす事となった。

それから1600年後。遺伝子操作によって人類は不死と呼べる寿命を得たが、代償として生殖能力を失った。更にウイルスの流行によって人口は減少。絶滅の危機に陥った人類は、生殖能力を持つ個体が居るのではないかと、地下で独自の進化を遂げたマリガンの調査を開始する。

地上でダンス講師をしていた主人公・パートンは、人口減少のため仕事を続けられなくなり、地下調査員に応募。地下世界で個性豊かなマリガン達と出会い、死と隣り合わせの探索を続ける事に。果たしてパートンは、人類再生のための希望を見つける事が出来るのか。

●感想●(※以下、多少のネタバレを含みます)

私がジャンクヘッドを知ったのは、偶然YouTubeのおすすめ欄に出てきた宣伝動画でした。配給会社であるGAGA★のアカウントで冒頭10分を期間限定公開していたり(※5月末まで)、手軽に作品の雰囲気や内容に触れる事が出来たのです。
一目見て、その独特の世界観、不気味で奇妙ながらも愛嬌のあるキャラクター達、そして作品の熱量に圧倒されました。

これは絶対に見に行かねばならない。

ある種の使命感に駆り立てられた私は、初めて足を運んだミニシアターで、スクリーンに映し出される奇天烈な世界に時間も忘れのめり込んでいたのです。

ストップモーションアニメとは思えない細やかな動き、SFでありながらも王道で分かりやすいストーリー、可愛らしいキャラクター達。下品な描写や残酷な描写もあるので万人受けする作品ではありませんが、この作品が放つ狂気と熱意は、確かに観客を惹きつける強大な力がありました。そして私も映画館を出た頃には、すっかり最高のディストピアの虜になっていたのです。

この『JUNK HEAD』という作品は三部作になる予定だそうで、今作は一作目となります。4、5年後に二作目が完成予定らしく、完結までには10年くらいかかりそうですね。続く!という所で終わる作品ではありますが、個人的には区切りの良い場面で終わったため、未完成感はあまり感じませんでした。基本的にはコミカルでシュールな雰囲気なのですが、終盤は感極まって泣きそうになり、エンディングで流れるメイキング映像に感嘆し、非常に密度の高い99分を過ごす事が出来ました。

早く続きが見たい、いつまでも待ちます。

主人公のパートンが出会うマリガン達は、どれも曲者ぞろいです。人間とマリガンの闘いから1600年が経過しているので、お互いの間に憎しみは無く、むしろ人間はマリガンを作った神様として扱われています。マリガンは独自の進化を遂げているため、人間に近い見た目をして話す者も居れば、変異種や野生の狂暴なマリガンも居ます。知能の低い野生種はマリガンや小動物を捕食するため、パートンも何度も襲われる羽目になります。捕食シーンは血がびしゃびしゃ飛び散って中々にショッキングです。

私はパートンの事を神様と慕う3バカ兄弟(アレクサンドル、ジュリアン、フランシス)が特に可愛らしくて大好きです。他にも、頭部だけになったパートンに機械の身体を与える博士(ドクター・ルーチー)や、物語において重要な役割を担っていそうな女の子・ニコなど、魅力的なキャラクターがたくさん登場します。今作は一作目という事で、ほとんど出番の無いキャラクターやまだまだ謎に包まれた部分が多いのですが、人間味のある言動や独特の造形が彼らの魅力を感じさせてくれます。

7年かけて制作された99分間のアニメ映画という事で、そこまでこだわるか!というレベルの映像に終始驚かされました。ストーリーに関係ない動き(頭を搔いたり、画面の端で取っ組み合いのケンカをしたり)もキャラクターに命を吹き込んでいますし、なんといってもアクションシーンが圧巻です。ラスボスとの戦闘シーンは、本当にストップモーション技法で撮影したのかと思うほどヌルヌル動いて大迫力でした。どうやって撮影したんだろうと思っていたら、エンディングでそのシーンのメイキング映像が流れていたのですが、ワイヤーで人形を吊るしていた模様。実写映画のワイヤーアクションのようですね。メイキング映像がかなり興味深かったので、二作目が出るまでに一作目のBlu-rayが発売されて、本編+メイキングがじっくり見られたら嬉しいなぁと思う今日この頃です。

映画館でパンフレットを買ったのですが、これが55ページくらいある設定資料集になっておりまして、映画内で描き切れなかった設定やキャラクターの情報、そしてメイキング資料がこれでもかとギッシリ詰まっています。特に撮影セットや人形、制作過程の写真など、見ているだけで楽しいです。私が購入したものは3刷目だったのですが、全国的に品薄なため、公式サイトの通販でも買えるようです。映画を見ていて今のシーン何?となった場面も、パンフレットでしっかり説明があったり、ジャンクヘッドの世界を隅々まで楽しむ手助けをしてくれました。

映画館によっては撮影に使った人形が展示されているとの事なので、いつか本物の人形やセットを見る機会があったら良いですね。このご時世では難しいかもしれませんが、移動型の展示会とかやって頂きたいです。最近ではグッズも発売され始め、深夜のテレビ番組でも紹介され、ジャンクヘッドの世界は日々広がり続けていると感じております。

興味のある方は是非、最高のディストピアに足を踏み入れてみては如何でしょうか。

以上、私パーレイの好き勝手な映画語りでした。ありがとうございました。





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