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【第0558稿】マスコミが間違った報道をするだけで、「被害者と加害者が簡単に入れ替わる時代」を象徴するニュース

女子ゴルフで珍事件 キャディーが選手に“キレて”立ち去る→大西葵は号泣でティーショットしばし打てず

◇23日 女子ゴルフ アース・モンダミンカップ第1日(千葉県袖ケ浦市、カメリアヒルズCC)

 キャディーが選手と激しい内輪もめの末に途中交代するという国内ツアーでは珍しい”事件”が起こった。大西葵(YKK AP)の帯同キャディーがラウンド前半に”キレ”てコースから立ち去った。

 10番からスタートし、8ホール目の17番パー4の第2打地点。大西の打球は左ラフからシャンクし、右サイドのレッドペナルティーエリアへ。ボールが「境界線を横切った地点から2クラブレングス以内にドロップ」して第4打を打とうとした大西に対し、帯同の大江順一キャディーは「元の場所(第2打地点)から1クラブレングス以内」へのドロップを進言。これを大西が受け入れなかったことで大江キャディーがキレた、という。

 キャディーバッグを選手のもとへ運ぼうとせず、見かねた同伴競技者のキャディーが大西のいる地点へ持っていくと、このことにもキレ、17番グリーンから18番ティーグラウンドに向かう途中でも怒声をあげていた大江キャディー。大西は18番ティーで泣き出し、しばしティーショットを打つことができなかった。

 これら一部始終は競技委員が見守っており、大西本人がルール上の問題がないことを確認の上、18番ティーショット後から石井忍コーチへのキャディー交代を申し出た。さらに、同コーチの体調に問題が生じため、4番ホール以降は大西のクラブ担当者がキャディーバッグを担いでラウンドを完了した。

 大江キャディーは選手らからの事態報告前にコースを去っており、日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)は「キャディー本人からも事実確認し、その後、トーナメント事業部会で選手およびキャディーの処分等を審議することになると思います」としている

 同キャディーは藤田光里の帯同だった2015年5月の中京テレビ・ブリヂストンレディスプロアマ大会で選手との激しい口論など「同伴のアマチュア客をも不快にさせる態度を見せていた」として、JLPGAから「2週間の職務停止」処分を受けたことがある。
(リンク切れに備え全文転用 中日スポーツより)

これが初動の報道内容。

中日スポーツさんはこの記事を、どういう情報を元に書いたのか。いや別に中日スポーツさんを責めているわけではないが、多分どこかの誰かがこの一件を報道し、追随する他社がその記事を元に簡単なリサーチを行って記事を書いたんだと思う。

<国内女子ゴルフツアー アース・モンダミン・カップ>◇初日◇23日◇千葉・カメリアヒルズCC(6639ヤード、パー72)◇賞金総額3億円(優勝5400万円)◇有観客開催
 大西葵(27=YKK AP)に帯同する大江順一キャディーが、ラウンド中に大西にブチキレて、職務を途中放棄するトラブルが発生した。

 日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)によると、大西があるホールで第2打を打つ際、大江氏とプレーをめぐって意見が対立。大江氏は「もうやってられない!」と言い捨て、コースから出ていったという。大西がキャディーバックを担いでいけないため、コーチら関係者が急きょ代役を務めた。協会関係者は大江氏がキレて、コースから立ち去った事実は把握しており「双方から話を聞いた上で、後日トーナメント事業部会で処分を審議します」とコメントした。

 大江氏は15年中京テレビ・ブリヂストン・レディースのプロアマ戦で藤田光里の帯同キャディーを務めたが、ラウンド中に藤田と口論。大江氏の行動が同伴プレーヤーを不快にさせたとして、JLPGAから処分を受けた。藤田は注意、大江氏は実質2試合分の職務停止処分を命じられた。
(リンク切れに備え全文転用 日刊スポーツより)

こっちもやっぱりこういう内容。

見る限り、「このキャディーには前科があるから、きっとキャディーが悪いのだろう」という記事構成なんだよね。

これが日本の常識というか、当たり前になっている。前科(犯罪だけでなく、似たような処分を受けたという意味で)を持つ人間は、とりあえず先に叩かれる。

もちろんそうなってしまう理屈も分かるけど、まー同調する人間の多いこと多いこと。あっという間に悪者にされてしまった大江キャディーは、スポーツ紙のみならず大衆紙からもバッシングを受けることになる。

女子ゴルフ選手に“逆ギレ”で職務放棄の男性キャディに批判殺到…“社会人として失格”の声

日本で開催された女子ゴルフの大会で、選手にキャディが“逆ギレ”するという異例の“事件”が発生。当事者であるキャディには批判の声が殺到している。

発端は23日に千葉県袖ケ浦市で開催された女子ゴルフのアース・モンダミンカップの初日、10番からスタートした8ホール目。

各メディアによると、17番パー4の第2打を大西葵選手(27)がシャンク(ミスショットのこと)すると、ボールは右サイドのペナルティエリアへ。しかし、その後4打目の対応を巡って、大西選手と帯同していた大江順一キャディの意見が対立。大西選手の判断に納得がいかなかった大江キャディが声を荒げ、キレたという。

「その後、怒りのおさまらない大江キャディは大西選手のバッグを放置。そのことに気づいた同伴選手のキャディがバッグを大西選手のもとへ持っていこうとすると、大江キャディはこのことにも怒り、怒声をあげたそうです。こうした状況に大西選手はひどく傷つき、18番では涙を浮かべて、しばらくティーショットを打てなかったといいます」(スポーツ紙記者)

18番ティで大西選手は、競技員に帯同キャディの交代を申し入れ、コーチを務める石井忍氏が代理のキャディに。その後、プレーは続行されたという。

日本女子プロゴルフ協会トーナメント事業部担当の寺沢範美副会長は、各メディアの取材に対して、「キャディーの交代は体の不調などでやむなくはあるが、(それ以外は)なかなかないこと」とした上で、詳しい状況については「調査中です」としていた。

異例のキャディ交代劇について、前出のスポーツ紙記者は言う。

「プロの世界では、いかにメンタルを平静に保つかが勝敗を分ける鍵になります。そのためにはキャディのサポートが欠かせません。バッグを持つだけでなく、選手が焦っている時に冷静に意見をするなどしてサポートする必要があります。選手と意見が対立することは当然あると思いますが、自分の意見が通らないからといってキレて、選手を泣かせるというのは本末転倒もいいところです」

キャディの務めを果たさず、逆ギレして職務放棄した大江キャディに対して、ネット上では厳しい声が相次いでいる。

《もう大江氏は永久追放でいいんじゃないかと思います。》
《キャディは選手が気分良くプレーするように様々な気遣いをするのが大きな役割の1つだと思うけど、普通に考えてキャディとしての適性がないと思う》
《大江順一キャディ、社会人として失格です》
(リンク切れに備え全文転用 週刊女性より)

この記事に至っては、「各メディアによると」と書かれており、つまり自分たちで調査したわけではなく、マスコミがこういう報道をしたので、その裏付けを取るだけの意見聴取をしたに過ぎない。


ところが。


YouTubeでこういう映像が流れ始め、潮目が変わる。

他のニュース情報とこの映像の会話から以下のように推測します。
① 池ポチャ後、キャディーは元の位置から打つ選択肢も考えられるためにゴルフバッグを残して、池まで行った。
② まだ、どちらから打つか決めていないのに、同伴競技者のキャディーが気を利かせたつもりで大西選手のゴルフバッグを持ってきてしまった。
③ 大江キャディーは、元の位置から打つかもしれないのに、バッグを持ってきてしまった同伴競技者のキャディーに大声で注意した(「なんで持ってくるんだよ!」みたいに強めの口調だった?)
④ そのことに対して、大西選手は大江キャディーに注意した。(18Hの会話で「(バッグを)持ってきてくれてありがとうで終わりじゃん。」と大西選手は言っているので、他の記事にあるようにどこから打つか揉めたのではなさそう。)
⑤ そこから口論になった。大西選手としては同伴競技者のキャディーに対して申し訳ない気持ちがあり、大江キャディーとしては元の位置の目印のためにバッグを残しておいたので持ってくる方が悪いと反論した感じでしょうか。この映像で、大西選手は同伴競技者のキャディーに「すみません、ごめんなさい」と謝っている。
⑥ 池ポチャだと思った球が池の淵に止まっており、大西選手はそこから第3打を打つことを選択。(飛球線上にある看板が邪魔でボールの位置を動かせるか競技委員を呼んで確認したが、ペナルティーエリアの赤線の内側だったので救済措置を受けられず、そのまま3打目を打った。)ペナルティーエリアの赤線の内側なので、元の位置から4打目を打つ選択肢もあった。
⑦ この映像にあるドンという音はドライバーのヘッドで地面を叩いている音なので、大江キャディーの舌打ちではないですね。
⑧ 大西選手は感情が高ぶって涙ぐんだが、大江キャディーが怒鳴って泣いたわけではなさそう。
⑨ 18Hティーショット後、大西選手は「(担がなくて)いいよ、それ(ゴルフバッグ)」といって、大江キャディーを解任。
⑩ その後、ロープ外にいる石井コーチにキャディーを頼みに行っている。
⑪ 石井コーチが大江キャディーの肩をポンポンと叩いているのが印象的でした。

選手を怒らせてしまった時点でキャディー失格ですが、自分から担ぐのを辞めてしまったわけではなさそうだし、一方的に叩くのはかわいそうな感じがします。
おそらく、同伴競技者のキャディーに対する大江キャディーの口調がきつかったのでしょう。
(ピン止めされているコメントより)

そして大江キャディー自身が口を開き、報道の一部を否定する。

大江順一キャディー「大声を出して騒いだ事実はない」大西葵への一部報道を否定

女子ゴルフの前週大会アース・モンダミンカップ第1R(23日)で、大西葵(27)とのトラブルで交代となった大江順一キャディーが周囲に「大声を出して騒いだ事実はない」などと一部報道内容を“否定”していることが27日、分かった。

 大西と大江氏は第1R前半の17番で、2打目のミスショット後の救済措置を巡って意見が対立し、口論になったとされる。その際、バッグを運ばない“職務放棄”とみられる行為があったという。18番ティーで、大西が競技委員に帯同キャディーの交代を申し出た。その後はメーカー担当者らが代役キャディーを務め、6オーバーの36位だった。

 大江氏の行為はトーナメント規定・キャディー規則の「エチケット、マナー、風紀を乱す等」に抵触しているおそれがあり、現在、日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)が関係者に事情聴取を行っているようだ。また、大江氏が選手に「帰れ」と言われてコースを離れたのではないかという見方も浮上し、情報が錯綜(さくそう)している。
(リンク切れに備え全文転用 報知新聞より)
「僕は怒っていない」大江順一キャディーが“職場放棄”トラブルの真相を激白
 6月23日に行われた女子ゴルフ「アース・モンダミンカップ」第1Rで、大西葵プロ(27)とトラブルとなり、“職場放棄”したと報じられたキャディーの大江順一氏(43)が「 週刊文春 」の取材に約60分にわたって応じ、初めて騒動の経緯について明かした。

 大西と大江氏は17番ホールで、2打目のミスショット後の対応を巡って意見が対立して口論となり、大江氏は大声を上げたとされる。その後、バッグを運ばない“職務放棄”とみられる行為もあり、大西は18番ティーで競技委員に帯同キャディーの交代を申し出た。18番からはクラブメーカーの関係者がバッグを担ぎ、大江氏はラウンド中に帰ってしまったという。

 大江氏は「僕が職務放棄をしたり、キレたりしたと報じられていますが、そんなことはありません。あくまでいつも通りにしていました。仮にこれで処分されるようなことがあれば不本意です」と切り出した。

 トラブルが起きた発端についてはこう説明。

「17ホールの2打目でシャンク(ミスショット)して、球が右手のレッドペナルティエリアに行った。そこで、どうリカバリーするのか三つ選択肢があり、ゴルフバッグを置いた位置から打ち直すこともできたので、ゴルフバッグとペットボトルを置いていた。後続組に我々の存在を知らせる安全確保の意味合いもあります。そうした上でボールを探しに行ったのですが、それがバッグを放置したと思われてしまった。良かれと思って同組のキャディーさんがバッグを持ってきてくれたんですが、まだゴルフバッグの位置から打ち直す可能性もあったので、僕は『置いておいてほしいんだよな』と言ったのです。すると大西プロから『せっかく持ってきたのにそんな言い方しなくてもいいじゃん』と言われて。あくまで大西プロのためにやっていたことなのに、頭ごなしにそう言われ、正直どうかと思いました」

 実際に大声を出したり、怒鳴ったりはしたのか。

「大きい声を出したのは、相手に聞こえるようにはっきり言わないと相手に伝わらないからです。コースは広いですし。僕は感情任せで言った言葉は一つもない。大西には『ラウンドが終わったら説明するね』と伝えたにもかかわらず、『ありがとうって言ったら終わりじゃん』と言われた。自分としてどうしたら良かったんですか? という思いがあります」

気持ちを切り替えようと思ったのに…
 途中でバッグを運ぶのをやめ、ラウンド中に立ち去ったことについてはこう説明。

「私はそれでも気持ちを切り替えて、盛り上がって行こうと思っていた。すると、18番ホールのティーグラウンドで大西プロが『いまキャディー代われますか?』と競技委員に問い合わせ、『大丈夫』との確認がされた。そこで大西プロのコーチの石井忍さんがいるのが目に入ったようで、『忍さん、かつげますか?』と。石井さんは『大丈夫だよ』と答えたので、その時点で僕は担当キャディーではなくなったのです。それで、自分の荷物をバッグから出して、立ち去りました」

 そして今回の騒動についてこう振り返った。

「今回は女性の選手が泣いてしまったということがクローズアップされてしまいました。そもそも僕は怒っていませんし、怒ったところで選手のパフォーマンスは上がりません」

 JLPGAに今後の処分について問うと、「現在調査中で、現段階でお答えできることがございません。調査内容についても回答は差し控えます」と回答した。

 食い違う大江氏と大西プロの言い分。JLPGAの調査の行方が注目される。

 6月29日(水)12時配信の「 週刊文春 電子版 」および6月30日(木)発売の「週刊文春」では、大江氏の経歴やゴルフ関係者からの評判、過去に交際していた女子選手との“トラブル”などについて報じる。
(リンク切れに備え全文転用 週刊文春より)

前述の動画とコメント欄を見る限りでは、一緒にラウンドを回っていた選手のキャディーが勝手に(気を利かせたとはいえ)バッグを移動させたことに対して大きな声で「なんで持ってくるんだ」と言った、というのが騒動の発端。そこだけ見るのであれば、

悪いのは気を利かせたというキャディー

だよね。ゴルフの詳しいところは分からないが、ルール上は「元の位置から打ち直す」か「池ポチャならそこから打つ」か「池に入っていなければそのまま打つ」の選択があったというわけでしょ?

そのためにバッグとペットボトルを置いておいたのに動かされたら、そりゃ怒るでしょうよ。まぁ、強いて言うなら、そういう状況だからいじらないでね、と先に言えば良かったとも言えるけど、それが彼らの中で常識の範疇にあるかどうか、じゃない?

改めて「あんまり詳しくないけど」という前提だけど、言うならば「グリーン上に置いたマーカーを勝手に動かされた」ようなものだよね。


もっと言えば、さ。


大江キャディーは、おそらく相当腹が立ったと思うんだよ。ラウンドの途中に解雇なんて屈辱以外の何ものでもないじゃん。仕事をしている最中に、だよ?大勢がいる前で「お前もういい。クビな」って言われてみ?キャディーとしての矜持を全部ぶっ壊されたわけだ。

でも大江キャディーはその場ではほとんど反論せず、競技の進行を妨げないよう(あるいは単に怒りに身を任せてかもしれないが)すぐにその場を離れた。そして、順序が違うのに「職場放棄したからクビになった」と報道される。

でも反論したのは数日経ってからなんだよね。それってもちろん周囲から何か言われていたのかもしれないけど、キャディーとして選手を守ろうとした、とも言えなくないわけで、ある意味一番紳士的な行動を取った、とも言えるんじゃないかと思う。

結果論だけど、大きく株を下げるのは大西選手になるわけだから、そうならないよう身を引いたところ、大西選手が何もフォローしてくれなかったので止む無く身を守るために口を開いた…という感じに見える。


前科と見た目(怖そう)というだけで、事実関係を無視して切り取った報道だけを見て散々バッシングしてさ。「何かおかしいぞ」と気付いた人が声を上げなければきっと大江キャディーはキャディーとしての仕事が出来ないくらいに追い込まれていたのかと思うとゾッとするよ。

大西選手もきちんと事情を説明したかったのだろうと思う。でもそれを止めた人間が必ず周囲にいるはず。何故大西選手の口をふさいだのか。それが女子ゴルフ界のためになる行為だった、とでもいうつもりだろうか。

結局当事者たちがどちらも痛い目に遭って、周りで助言した奴らには何の被害もないまま時間とともにかき消され、数年後に思い出したかのように誰かがぶり返すようなことを言ってまた叩かれる。


今ってそういう時代だよね。


大西選手と大江キャディーのどっちが正しいかなんてことは、正直そこはどうでもいいんだ。俺が言いたいのは、マスコミの報道1つで捻じ曲げられる事実というのが世の中にはごまんとあり、それに流されて容易にバッシングが出来るという今の在り方に問題がある、ってこと。


マスコミ、もっとちゃんと調べてから報道しろ。


お前らの仕事の甘さが世の中を狂わせているんだぞ。


そういう意味では文春が一番「事実」を語っている。恐ろしくもあり、頼もしくもある。だから「文春砲」っつって恐れられているんだろうな。


他のマスコミさんたちも、文春を見習えとは言わないが、もう少し事実関係をはっきりさせて報道して欲しい。

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