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高校生も浪人生も【勉強】×【やりたいこと】が当たり前の時代が来る

こんな方に向けた記事です。

✓自分の進路の決め方がわからずに困っている中学生・高校生
✓子供の進路についてどのようにサポートしたらいいかわからない保護者の方
✓進路指導の方針に迷っている学校の先生、塾の先生


学習塾は昔も今も成績を上げることばかり考えている

「うちの子の成績を上げてください」
「こんな学力で行ける大学ありませんよね」
「そちらに預ければ成績が上がりますか?」
「先生はどこ大学の出身ですか?」
「合格実績を教えてください」

学習塾を運営しているとよく聞く、親御さんのこんな話はもう聞き飽きました。


もっと聞き飽きた、いや見飽きたものがあります。

先の親御さんの要望に対応する、学習塾の宣伝文句です。

成績が上がる●●塾
志望校合格率●●%
東大●人合格
最高の教材
わかるまで教えます
成績保証・合格保証
カリスマ講師の授業


学習塾は昔からずっと変わっていません。

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最近では、AI教材の登場により、「講師の役割は生徒のモチベーションアップ」と謳う塾が出はじめています。


率直に言って、このような認識は全く新しくありません。昔から塾の講師はそういった性質を持っています。

いまの学習塾にとっての問題は、そんなところにはないのです。


社会は成績の良さだけではなく、問題意識を持った面白い人を必要としている

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その問題を見極めるため、社会の方に目をうつしてみます。


現代社会においては、IT化が急速に進み、次から次へと新しいサービスが世に出てきています。これまでの当たり前がどんどん見直され、業界そのものが次々に新しいものに変わっています。


このような流れに伴って、社会で価値を出す人材も、徐々に変化してきています。

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若くしてメディアに取り上げられるのは、難関大で真面目に勉強ばかりしている方というよりはむしろ、独自の問題意識を持って活動して成果をあげている方です。


年功序列だった一昔前とは違い、デジタルネイティブである若い世代の方が、IT技術を使ったサービスに明るいことも多々あります。

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GoogleやApple、日本企業ではYahooやDeNA、サイバーエージェント等が、学歴を募集要項に含めていないのはもはや常識です。


勢いのある企業はどこもダイバーシティを重要視し、女性の活用をはじめ、個の存在に価値を置き始めています。

言われたことを淡々とやる人材はどんどんAIに代替されていき、主体的で面白い人材が残って、目立って、結果を出していくことになります。


こういった社会に対応するために
学習塾はどうあるべきでしょうか



大学生だけではなく高校生の段階から【やりたいこと探し】が必須である。

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このような社会に対応するために、学習塾のあるべき姿として考えられるのは以下のとおりです。

学習塾は、【勉強】だけでなく【やりたいこと探し】もサポートする必要がある


我々がこのように考える主な理由は3つあります。

1.高校生にやりたいことが必要な理由:大学の偏差値だけでは就職できなくなってきている
2.高校生に勉強が必要な理由:社会の変化に対応するためには、新しいものを知るための【知識】×【考える力】×【意欲】が必要
3.学習塾がサポートする理由:学習塾はソフト面の高大接続が最も簡単な場である


一つずつ説明します。


1.高校生にやりたいことが必要な理由:大学の偏差値だけでは就職できなくなってきている

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学歴が「それだけで十分」というものではなくなってきていることについては、すでに10年以上前から指摘されています。

例えば『多元化する「能力」と日本社会 ハイパー・メリトクラシー化のなかで』(2005年 ※1)という本で、本田由紀さんは

学校教育における知的な側面での学習成果(「学力」)およびその証明としての教育上の履歴(「学歴」)は、いまだ社会的地位の選抜・配分において重要なものであり続けている。しかし、それだけでは、社会の中での自分の立場を、それもできるだけ望ましい立場を確保する上で、十分ではなくなってきているのだ。メリトクラシーの指標としての教育達成に加えて、「ポスト近代型能力」に該当するさまざまな不定形の能力が、これまでよりもはるかに明示的な形で要請されるようになってきていると考えられるのだ。(p25-26)

と書いています。



この本は、簡単に言うと、「価値が置かれている人物像が変化してきています」という内容です。

価値が置かれている人物像
昔:学校や受験で良い成績を収める
今:独自の発想、積極的な行動、人を巻きこむ、新たな価値を創造し続ける


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もちろん著者の本田さんは

学業成績だけでなく、人格全体(個性)が社会によって評価の対象になるのは息苦しいし、格差を広げる

と、批判的に取り扱っています。


しかし、学者になるならばともかく

普通に生活していく多くの人は、この「社会が理想とする人物像の変化」を感じ、それに適応していかなければなりません。


社会で必要とされている人物像が昔と比べて変わってきている以上、学歴だけでは十分ではないことは明らかです。


実際、「学歴が高ければ就職は大丈夫」というのも、もう過去の話です。


2020年2月の日経新聞電子版でも、1年前倒しで就職活動をして、内定をもらえない早稲田生のことが取り上げられています。

日本経済新聞 電子版 ”就活生、「専門スキル」で武装せよ。ー惑う就活「新ルール」(1)ー” 日本経済新聞 2020/2/2 ※2


この早稲田生がなぜ内定をもらえないのかは、この記事からはわかりませんが

少なくとも「学歴」だけで就職が決まるほど甘くはないことはわかります。

記事内では

足元の大卒求人倍率は2倍弱。就活生1人に2社近い求人がある売り手市場は続いているのに、なぜ二極化が進むのか。

と、二極化について言及されていました。


これが上で提示した本田さんの「社会が理想とする人物像の変化」と関係していると考えるのはごく自然なことです。



実際には、「大学生になってからやりたいことを探せばいい」という意見があると思いますが、少なくとも現場感覚では、この考え方はとても甘いと感じます。

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一旦テキトーに志望校を決めて、その大学に向けて勉強をしている時の非効率性は無視できません。

行きたい大学が決まれば、勉強に対するモチベーションは高まり、大学入学後も迷わずに、自分のやりたい方向に向かって行動できます。


以上から、いまや学歴のみならず、自分の問題意識をもって積極的に社会に働きかけるような新しい力、つまり、「やりたいこと」に向けて突き進む力が、大学生だけでなく高校生にも必要なのです。



2.高校生に勉強が必要な理由:社会の変化に対応するためには、新しいものを知るための【知識】×【考える力】×【意欲】が必要

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2019年2月6日~3月8日で実施されたパーソル総合研究所の成長意識調査によると、

自分の成長を目的として行っている勤務先以外での学習や自己啓発活動は、日本だけが「何もしない」率46.3%で圧倒的最下位です。


Q.あなたが自分の成長を目的として行っている勤務先以外での学習や自己啓発活動についてお知らせください。(複数回答/選択肢11項目)

パーソル

(パーソル総合研究所 APAC就業実態・成長意識調査(2019年)を元に作成)

==調査概要==
・期間:2019年2月6日~3月8日
・対象地域:APAC14の国・地域(主要都市)
・サンプル数:各国1,000人
【対象条件】
・20~69歳男女
・地域(日本):東京、大阪、愛知
・就業している人(休職中除く)
・対象国に3年以上在住
・別途実施した「働く1万人の就業・成長定点調査2019」(2019年2月実施/インターネット調査)から条件にあう1,000サンプルを抽出

調査の詳細はこちら


社会はどんどん進化を続け、次々と新しい技術やサービスが生み出されています。新しいものを学んでいく姿勢がなければ、社会に対応できるはずがありません。

一方日本は、自己研鑽しない人が46.3%と国際比較において最も高いです。
(ボランティア活動への参加が44%と高い点も特徴だが)


変化が早い今の社会に対応するには、勤務先以外でも自己研鑽が必要不可欠なのは言うまでもありません。


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さらに、たとえ成長意欲があったとしても、そもそも「新しいものを知る力」がないと、社会が変化するスピードについていくことができません。


この「新しいものを知る力」に、年齢は関係ないと思います。若いからそれだけで良いわけでもなければ、シニアだから不要なものというわけでもありません。

どんどん新しいものが出てきて社会が変化していく以上、「新しいものを知る力」が必要不可欠になってきます。「新しいものを知る力」がない人から淘汰されていくだけです。


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以上のことから、新しいものを知るための【基礎知識】×【考える力】×【意欲】がすべて揃わないと、社会の変化に対応するのは難しいです。


「新しいものを知る力」を養う上で、高校での勉強は、これらすべての基礎になります。

これが高校生にとっては勉強もやはり不可欠である理由です。



3.学習塾がサポートする理由:学習塾はソフト面の高大接続が最も簡単な場である

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「いい大学、いい会社」という人生バラ色の王道コースに陰りが見える今、

迷いなく生きていくための目標の定め方や、目標となる人の見つけ方、自分の軸の探し方など、数多くの方法が提案されています。


将来が多様化し、今の仕事がなくなってまだ存在していない新しい仕事が増えると言われている今日、高校生は進路の決定がかなり難しくなっています。



リクルートマーケティングパートナーズの「高校生と保護者の進路に関する意識調査」(2019年 ※4)では、高校生の進路決定に関する情報がまとめられています。

==調査概要==
・期間:2019年9月1日~10月25日
・有効回答数:
  高校生1,997人 (全問無回答1人を除く)
  保護者1,759人 (全問無回答6人を除く)
・調査方法:
  高校生 ホームルーム時にアンケート実施
  保護者 高校生から保護者へアンケートを手渡しで依頼、実施。
・対象:
  高校2年生とその保護者
・対象条件:
  一般社団法人全国高等学校PTA連合会より依頼した9都道府県、各3校ずつ計27校の公立高校


まず、高校生が進路を考える上で「誰から影響を受けているか」を調べた結果を見てみます。




【高校生】進路を考えるうえで(高校生に対して)影響を与えている人(全体/複数回答)

影響を与えている人


調査結果は、

母親>父親>友人>兄弟>担任の先生>先輩  の順に影響を受ける

となっているようです。


身近な人から影響を受けるのは当然の結果といえる一方で、これでは、大学のことや就職、生き方について学べる存在が、近くに多くいるとは言えません。


というのも、まず第一に、時代の変化が早すぎて、親の世代と今の時代がかなり違うため、親の話が昔ほど当てはまらなくなってきているからです。


実際に今の親世代も「子供の人生は子供自身が決めるべき」という考えの人が多いです。

以下は、進路の話をする時に「保護者がよく使う」と高校生が認識している言葉の割合を示しています。




【高校生】進路の話をするときに保護者がよく使う言葉(全体/複数回答)

保護者がよく使う言葉

(リクルートマーケティングパートナーズ 「高校生と保護者の進路に関する意識調査」(2019年)を元に作成)


このグラフからも「自分の好きな事をしなさい、やりたい事をやりなさい」と言われていると認識している高校生の割合が最も高いです。それだけ親世代がやりたいことをやるように子供に伝えているようです。

ただ、たんに「自分の好きな事をしなさい」というだけでは、高校生が自らの進路を決める上でのアドバイスとしては不十分であることは明らかです。


第二に、学校の先生や塾の先生は、学習指導のプロではありますが、日々学校運営や塾の運営、授業の準備や実際の指導等で忙しいため、今の大学生事情や就職市場にまで詳しい先生はごくわずかです。なので、こちらも有効なアドバイスは難しいでしょう。


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ここで進路選択について考えてみると、「生きていく上での自分の軸」のようなものを見つけられれば、進路決定する上でかなり有効な判断基準になり得ます。

しかし、学校と部活に明け暮れる経験しかない場合は、自分の軸を見つけるのは難しい場合が多いです。



将来の方向性がほんのかすかでも見えている人であれば、進路を考える上で間違いなく参考になるのは

やりたい仕事に今ついている人から直接話を聴く
行きたい大学・学科に今通っている人から直接話を聴く

の二つです。

これは誰かの単なる意見ではなく、自分が興味を持っているものの「リアルを知る」方法だからです。



ですが、実際に、高校生が目指している人・憧れている人がいるかどうかを聞いた質問では、目指している人・憧れている人は全体の26%しかいません。

【高校生】目指している・憧れている人はいるか(全体/単一回答)

目指している人

(リクルートマーケティングパートナーズ 「高校生と保護者の進路に関する意識調査」(2019年)を元に作成)


それだけ人生を参考にできる人が少ないと考えられます。


ここで、高校生が影響を受けやすい順「母親>父親>友人>兄弟>担任の先生>先輩」で考えると、高校生にとって目標となりやすいのは、多くの高校生が次に進む先である大学に現に通っている先輩です。

先輩に会って話を聞くためには、部活や高校で縦のつながりがあればいいですが、そういった繋がりがない場合は難しくなります。


進路を考える上で間違いなく参考になるのは

興味がある大学や学部学科、進路について、今実際にそこに通っている大学生と一対一で直接話すこと

これに尽きると思います。


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少しだけ年上の人と一対一で話す機会は、学校では作りにくいのが現状です。

卒業生が来たり、キャリア教育の講師がきたり、大学生がたくさんきて座談会をやったりと、最近ではこういったことにも力を入れる高校が増えてきています。


しかし、どこまでいっても「一対一」という機会はなかなか実現できないのが現状です。学校という集団が同時に一対一で外部の人と話すのは現実的ではないからです。


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一方、

少し年上の人と一対一で話すことができる場所として、最も融通がきくのは学習塾と考えます。



学習塾は、旧来の缶詰状態の学習空間を想像すると、何の変哲もない教室さえあれば成り立ちます。


しかし、卒業生との交流を積極的に行ったり、生徒同士で進路の話をしたりなど、学習塾の工夫次第でかなり色々なことができます。


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さらに、大手塾でなければ基本的に人数は少~中人数程度なので、大学生と一対一で話をする機会も、学校と比較すると格段に設けやすいのです。

また、学校より先生と生徒の距離が近い場合が多いので、どんな大学生が合うか等を考慮に入れて、大学生を呼ぶこともできます。


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このように学習塾は、工夫の余地を多分に含んだ学び場だと思います。

勉強を教えるだけではなく、今の大学生と強いネットワークを持っていることが、今後の学習塾には必要だと考えます。



高大接続というと、一般的には高校・大学・入試の3つの一体性に関する話ですが、

高校生が興味がある大学や学部学科、進路について
今実際にそこに通っている大学生と一対一で直接話すこと

こそが超ソフトな面で高大接続を支えるものだと信じています。



*********


最後にまとめますと、

1.高校生にやりたいことが必要な理由:
大学の偏差値だけでは就職できなくなってきています。

社会が求める理想の人物像が変化してきているため、学歴だけではなく、独自の発想、積極的な行動、人を巻きこむ力等、多くの能力が求められています。

その「新たに求められている力」の根本は、「自分のやりたいことはなにか」という問いからスタートする力です。



2.高校生に勉強が必要な理由:
社会の変化に対応するためには、新しいものを知るための【知識】×【考える力】×【意欲】が必要

社会の変化に対応するためには、まず原動力として新しいものを知りたいという【意欲】があり、新しいものを理解するのに必要な【知識】と、その知識を使ってどんなことができるかを【考える力】が必要です。



3.学習塾がサポートする理由:
学習塾はソフト面の高大接続が最も簡単な場である

学習塾は、工夫次第で大学生をどんどん呼んだりして、高校生の進路サポートを充実させることができる場です。さらに言えば、目標になりうる大学生と一対一で話ができる場を提供することができるめったに無い学び場です。



以上の3つの理由から

学習塾は、【勉強】だけでなく【やりたいこと探し】もサポートする必要がある

と強く思います。


学習塾には無限の可能性があります。

これだけ融通が利く学び場は他にはなかなかありません。


融通が利くからこそ学習塾は、時代の流れを最大限読み、強い想いを持った人が、将来の担い手である高校生に少しでも良い学びや経験を提供しようと試行錯誤する場であると考えます。



最後に
ここまで読んでくださったあなたに是非うかがいたいです

「勉強」のことしか考えない学習塾に未来はあると思いますか?


ー書いた人ー


=出典まとめ=


※1
本田 由紀(2005年). 多元化する「能力」と日本社会 ーハイパー・メリトクラシー化のなかで  NTT出版


※2
日本経済新聞 電子版 ”就活生、「専門スキル」で武装せよ。ー惑う就活「新ルール」(1)ー” 日本経済新聞 2020/2/2


※3
パーソル総合研究所 APAC就業実態・成長意識調査(2019年)


※4
リクルートマーケティングパートナーズ 高校生と保護者の進路に関する意識調査(2019年)








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