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BUMPの『青の朔日』の歌詞

青の朔日の歌詞の意味を考える。

Irisのアルバムで初めて聞いたから、というだけではない。

「正しいかどうかなんて事よりも
あなたのいる世界が笑ってほしい」

とにかくこの歌詞が好きなので、なんだこれと思って色々と考えてみた。


タイトル

青の朔日

朔日とは月の一日めのこと。
始まりの日のこと。

詳しくはこう。
朔とは新月のこと。天体観測が今より精密になる前は新月の日を月初めとしていた。この意味で新月と区別して、暗月と呼ぶこともある。

月の後ろに太陽が並んでおり、月の表面が見えない状態。月が太陽を隠す状態。
余談だが、Irisについて来たホームシック衛生のライブの一曲目、メーデーのバックの映像で月の向こうから太陽の明かりが出て、星の鳥になる演出最高だったな。

他にも、欠けた月が元に戻る日。月が新しく始まる日という意味もある。
旧暦、陰暦の一日めの日。
ちなみに欠けた月が満ちていき満月になる日が十五夜。



Aメロ


終わらない夜の途中
灯を忘れた夜には
戻れない日の指切りを
カシオペアの代わりに



最初からかなり分かりづらい。絶望の中ではないかと思う。
灯りのない暗い夜という今を歩くために、昔の思い出を、灯りの代わりに思い出す情景。

鳥になった宝物が
落とす影を追っていたら
真っ暗にまぎれて混ざって
見つけられないままで



宝物が飛んでいって追いつけない。
せめて影を追いかけていたら、影すら真っ暗に紛れて追えなくなってしまった。

Bメロ


いくつめかのドアを開けて
繰り返す景色を泳ぐ
心がまだ疲れながらそのためだけに動いてる



ドアの数もわからない。同じように繰り返す毎日の中で、「気付いたらもう今年も終わってしまう」という気持ちが近いだろうか。
心は疲れ切っているが、毎日を繰り返すためだけに動いている。

これはきっと帰り道
夢の向こうに続く道
綻びた唄を纏えば何も怖くはない



ここからだ。この歌はここからがいい。
「綻びた唄をまとえば何も怖くはない」。
ここがいい。
ボーカルの藤原さんはライブでよく、
君だけのために生まれた歌が、君だけを目指して行くよ。君が辛い時も、君は気付かないかもしれないけど、君のために歌は近くに居るよ。
というような言葉をよく言う。『メーデー』のようなこの思いが歌作りの原点なんだろう。これを思い出す。
どんなに灯りのない暗闇の中にいても、唄を纏えば何も怖くはない。進んで行ける。

サビ


命は理由に出会えた
燃えて消える意味を知った
その火が視界を照らした
青く青くどこまでも
明日が全てを失っても
あなたの鼓動だけは歌ってほしい
ならば私は戦える
たとえこの耳で聴けないとしても



この歌の語り手が分かる。
これはBUMPの歌から聞くあなたに向けた歌だ。

生まれた歌は理由に出会えた。燃えて消える、生まれて死ぬ、月のように現れて消える意味を知った。
その火が暗闇の中で青く青くどこまでも視界を明るく照らす。
月の向こうから覗く太陽の輝きは青い。まさに青の朔日。

「明日が全てを失ってもあなたの鼓動だけは歌ってほしい」
これがいい。
明日の全てよりあなたに生きていてほしい。この愛が嬉しい。

あなたが生きるためなら戦える、たとえこの耳であなたの鼓動が聞けないとしても、あなたのために戦える。
なんて心強いんだろう。
これは歌を聞くあなたのために生まれてくれた歌だ。

Aメロ2番


思い出せなくなった
虹を覚えてる空には
くたびれた靴が響くよ
それでも歩いていると
掴もうとしてすり抜けた事を
忘れない掌
指を蓋にして隠して
強さに変える魔法



幼い頃追いかけていたであろう虹を思い出せない自分、対して虹を覚えている空。
生きて来て汚れてくたびれた靴。ここまで一緒に生きて来た証の愛しい汚れでもあるが、ここでは「それでも歩いている」ので疲れ切っている感覚が強い。
幼いまま虹を掴もうとしてすり抜けたことを自分は忘れていても、掌は忘れない。
指を蓋にして掌を隠して、こぶしにして、強さに変える。

Bメロ2番


あとどれだけ息をしたら
これでよかったと思える
心がずっと砕けながら
カケラの全部で動いてる



疲れ切ったまま、自分の歩いて来た道も、その最中ついた汚れも、目指す先も良かったと思えない。
キラキラした虹や宝物を追いかけていた綺麗な心ではもはやなく、砕けてボロボロになりながら、それでもなんとか、日々を辞めずに諦めずに、カケラの全部で動き続けている。

これはきっと帰り道
あの日と同じじゃなくていい
ただもう一度だけ逢いたい
何も怖くはない



失った夢や希望や大事なものと、もう一度逢うための帰り道。
あの日見た虹と同じではなかったとしても、もう一度だけ逢いたい。
帰り道だが幼い頃と同じではない。今の汚れたままのバラバラの心のあなたが逢いに行く。
何も怖くはない。まだ暗闇のままだろうと、もう何も怖くはない。

サビ2番


泣かないでって祈るのは
足跡の下の涙
迷いを乗っけた爪先で
進め進め魂ごと
正しいかどうかなんて事よりも
あなたのいる世界が笑ってほしい
だから私は生きている
時計の針にも奪えない力



「正しいかどうかなんて事よりもあなたのいる世界が笑ってほしい」
この歌詞が一番好きだ。
この歌のメッセージの中で一番力のある歌詞だと思う。

「泣かないでって祈るのは足跡の下の涙」
心が限界を迎えて溢れて落ちた涙を、超えて進んだ足跡の下から、その涙が泣かないでと祈る。
どこに進むか迷ったままの爪先で、進め進めとエールが送られる。
例えその先が正しくなかったとしても、間違っていたとしても、正しいかどうかなんてことよりも、進んだ先の世界が笑っていてほしい。
だから、そんな世界に進めるように、あなたの側で歌は生きている。例え何年経っても、歌を作ったBUMPがなくなったとしても、歌の力は時計の針にも奪われない。ずっとあなたの側で歌は生き続ける。

ラスサビ


鳥になった宝物が
落とす影 まだ探してる
ああ もう一度だけ逢いたい
何も怖くはない



歌を聴き改めて、宝物を探す。
宝物を探すのを辞めていたわけではないが、もう一度逢うために歩む事は何も怖くはない。

命は理由に出会えた
燃えて消える理由を知った
その火が視界を照らした
青く青くどこまでも
明日が全てを失っても
繋げた鼓動だけは唄ってほしい
だから私は生きている
カケラの全部で



歌と同じく、あなたも、ただ毎日を繰り返していた自分の命の理由に出会う。
命の火を燃やし、消える意味を知る。
命の火が人生の暗闇を青く青くどこまでも照らす。
明日が全てを失ったとしても、ここまで繋げた鼓動だけは歌ってほしい、ここからも歌い続けてほしい。
だから歌はカケラの全部であなたのために生きている。

泣かないでって祈るのは
足跡の下の涙
迷いを乗っけた爪先で
進め進め魂ごと
間違いかどうかなんてことよりも
あなたのいる世界が続いてほしい
ならば私は戦える
たとえその時側にいないとしても



自分が落とした涙は、落とした自分に向かってどうか泣かないでほしい、超えた先に幸あれと祈る。
たとえ正しくなくても、人に間違いと言われる道であろうとも、そんな事は重要ではない。
ただ、あなたが選んで進んだ、そして作った世界が続いてほしい。
そのためならば歌は戦える。
そして、あなたが生きている限り、何度でも歌はあなたのために戦う。
あなたが歌の力に気付けない時も、歌から離れ側にいない時だったとしても、歌はずっとあなたのために戦う。


あなたが今続ける事に疲れていたとして、進むべき道が分からないとしよう。
そんな時に思い出してほしいのは、あなたが好きだった宝物や虹。
それらはあなたが忘れていても、ずっとあなたの中で、あなたの一番側であなたの応答を願っている。
あなたがそれを思い出して、また目指す時、周りの人の誰もが力になってくれなくても、あなたの側にいる歌が力になる。
歌はずっと、あなたのために、あなたと一緒に戦ってくれる。
あなたのために生まれて、あなただけを目指して来て、あなたの側で、あなたと一緒にいる。

fire signや、メーデーの頃から今もずっと変わっていない強いメッセージを受け取った。
この曲が収録されているアルバムがIrisでよかった。
Irisについてきたライブ映像がホームシック衛生でよかった。
歌詞を通して改めて生きる意味を知り直した。
お洒落なタイトルに込められた熱い声援をしっかり受け取った。
いい歌だ。

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