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センチュリーホールで逢いましょう

 この詩は1989年から1992年にかけ、愛知県名古屋市の名古屋国際会議場センチュリーホールで行われた『スーパーフュージョン』という複数のインストゥルメンタルバンドやグループでのジョイントライブの、92年に行われた時のものを描いてます。書きだしたのがライブから帰ってすぐでありますのを念頭において、どうぞ。



あなたは 守りたい存在が ありますか?



【1】

年に一度だけ そのホールは

非常に特殊な“場”をもつ

名称は

『名古屋国際会議場センチュリーホール』

収容人数約3000人

ステージの広さと音の鳴りの良さは定評で

大手の有名アーティスト達は

必ずライブに使用する

まだ出来て四年目の

白く大きなコンサートホールは

年に一夜 音楽が集まる場所になる

-『ヘリオス スーパーフュージョン』


言いだしっぺはこう言ったそうな

「新しいファンを開拓し

第二のフュージョンブームを」と

彼の説得と周りの協力で

向こう側も動いてくれ

結果 それは大成功し

また 彼自身が

「前からいっぺんやってみたかった」という

昔好きだった

二つのバンドの競演も実現できた

でも  また新しいやりたい事を見つけたのか

『最初で最後』の予定が

いつの間にやら『毎年恒例』に

きっと その時言った事を実現させようと

本気で


89年の夏の最中に始まったそれは

今年でもう4回目

年を重ねる度にすごくなってゆく

「来年はどんな組み合わせだろうね」

次回を期待する気持ちは

お祭りを待つ感じに似ている

ワクワクしながら好きな人達は待っている

お祭りの知らせが来る夏とお祭りそのものを


つくる人とかなでる人とみる人が

同じ思いを抱き 集う場所

音楽が大好きな人達が幸せになれる場所

いつまでも そこにあると いいな


【2】

ライブがあるのなら

必ずそこにいる

当たり前に思っていた日々が壊れた

夏の終わりを待たずに

突然吹き荒れる別れの風


果たして 知らない方が幸せなのか

早めに知ってよかったのか よく分からない

でも もう起こってしまった事

他人が口出しできない事 なのはよく分かった

                                 分かりたくなかったけれど


笑い声 ざわめき 歓声

様々な声と音に

かき消されてしまった小さな音

                                     何かが崩れ落ちてゆく-


本当は 人は強くも弱くもない

両方とも もっているのだ

ただ どちらかが隠されているだけで

誰でも そうなのだよ みんな


支え切れなくなり崩れ落ちた柱を

誰かが責めるだろう

また一緒に支えてきた他の3本の柱達も

責められるだろう

しかし今まで柱が支えてきた存在の重さを

そういう人達は果たして

理解しているのだろうか

崩れた柱は

辛くて苦しくてくやしいかったろう

3本の残った柱達だって

辛くて苦しくてくやしいかったろう

その周りも

更に大勢のみているしかできない周りも


同じだよ きっと みんな 強くて 弱いんだよ


8月が去り

日比谷での一夜が終わるのを待っていたのか

秋風が吹き始める 一つの季節が終わってゆく

夏の夜の笑顔と思い出を残して


そして日々は流れて お祭り当日

しとしとと雨が降る中 会場に集った観客達は

入口に貼られた紙に足を止め見入る

はっきりと伝えられる事実と

「ごめんね」と「がんばるから」という

気持ちが書かれてあった


それでも前に進まなければならない為の

5歩目が これから 始まる


【3】

本筋に入る前の序章みたく

午後6時45分頃

客がまだ全員座りきっていない会場に

アコースティックギターの使い手が現れる

静かに 時には激しく

広いステージにただ一人

でも 優しく切なく力強い音が響き渡る


そんなオープニングアクトから

少々間を置いて 午後7時10分頃

青い照明

モウモウとたかれたスモークのステージに

一人のピアノ弾きが現れる

待ってましたとばかりに上がる歓声の中

ピアノの音が流れ出す

まもなく他の5人のメンバーも現れ

緩やかに曲が始まる

     かと思いきやノリノリになっちゃって

     しかもまだ1曲目だというのに

     バイオリン弾き2人とチェロ弾き

      計3人が客席乱入をしちゃって

      アタマからのこの行動に

      嬉しい不安を感じた

そんな1グループ目のライブの始まり

                                                            -G-クレフ


初めての音はとても印象的だった

バイオリン2つ・チェロ・ウッドベース

ピアノ・パーカッション

生楽器集団は様々な色を持っていた

客席乱入用の階段に腰掛けての

ほのぼのとした空気

激しいユニゾンが入ったハードな音

とても哀し気なスロー

どこかで聴いたような親しみやすさ

で 後半は大暴走!

バイオリン弾き達は再び客席乱入をするが

一人は通路を駆け抜け2階へ

もう一人は椅子の上を渡り駆けてゆく先は

一気に3階席に突っ走っていった!

観客は 皆 驚き 喜び 盛り上がり

カメラマン達は 皆 追いかけるのに 疲れて

そうしている内に終わりはやってきて

嵐の様な彼等はカッコ良くお辞儀をして

去っていった とりあえず


青い照明の中での準備が終わり

8時もとうに過ぎた頃

ステージに一人のギター弾きが現れる

待ってましたとばかりに上がる歓声の中

ピンクっぽい色のエレキギターが奏でられる

ワウを使っての楽しげなその音は

「ホワホワホヮ~ン」と愉快な音で

笑いをとったと思ったら

力強いカッティングに変わり

他の3人のメンバーも現れ

タンと踏んで始まる 曲

とても懐かしく感じる 音も 人も

でも ドラムセットには

見知らぬ方が座っていて

事実をここで改めて知り 受け止める

そんな2グループ目のライブの始まり 

                                                      -カシオペア


                事実を事実として受け入れる

                目を逸らさず 逃げ出さない

                それがどれだけしんどくても

                なければならない大切な事なのかは

                今の彼等をみていれば



「ヘーベルハウスバンド」とか言っちゃって

3人と初めて出逢う彼の音は

新しい楽しさと力強さに満ちていた

「命賭けて」の

“モモちゃん”と“ケロンパチ君”のバトル

ピックを使って奏でられるベースは

切なくて胸がつまる

「蛇使いの笛」な音のキーボードと

フレットレスギターがつくる

怪しくも不気味な重さ

とても22才とは思えない肝が据わった

パワーあるドラムソロ

ハイライトは毎度お馴染み

ベースソロでの客席乱入

座っている観客を煽りながら

オジサンベース弾きは疾走する

この瞬間を心から楽しもうと

やがては観客と掛け合いだし

後はもう盛り上がるばかり!

昨日をとりあえず忘れ

明日をどこかに置いといて

今はただ駆けてゆく音と

音に付いて走るたくさんの笑顔と

いっしょにいたいだけ

そうして あっという間に終わりは来て

笑顔のままで 4人は去った ひとまず


                   はじめから 弱いと思わない

                   ただ 負けたくないと思う

                   そうやって みんな

                   強くなってゆく

                   強くなってゆかなくちゃいけない

                   いつまでも

                   弱いままではいられないから


アンコールの拍手は途切れない

皆 次の場面をワクワクしながら待っている

と ほら ステージが明るくなった

まず カシオペアのメンバーが現れて

紹介を受け G-クレフのメンバーも現れて

スーパーフュージョン恒例

いわゆる「掟」である合同演奏が始まった


   1曲目はカシオペアの

   『PASSIONATE VOLTAGE』

   元々ハードでタイトな曲に

   血気盛んな弦楽器達の音が乗っかり

   輪をかけて激しくなる

   初めて出逢った音達は重なり合い

   ひとつの音楽を歌い上げてゆく

   個々の音のソロも みんな 力強い

   自己主張のカタマリみたいに

   それでいて 嬉しそうで


           さて 2曲目はホイッスルで始まる

           G-クレフの『MATERNITY WOMAN』

           楽しくウキウキする曲の最中

           バイオリン弾きの二人が再び動き出す

           ちょうど 運〇く

           二人の間にいたギター弾きと一緒に

           いや 二人が彼をはさみ打ち状態にして

           そのまま 三人仲良く客席へ

           チェロ弾きはいつーの間にか動き

           ベース弾きの隣にいた

           と思ったら いつーの間にか

           二人も客席に降りていたりして

           つまり 計五名による大乱入大会って訳

           ホールはお祭りの御輿が大通りに

           ワー!と繰り出したみたいな大騒ぎ

           弾きながらぞろぞろ練り歩く彼等に

           観客は喜びの声を上げ盛り上がり

           幸せなドンチャン騒ぎの内に

           五人はステージに戻り 曲は終わった


     と ふいに空気が変わる

     バイオリン達が聴いた事のあるメロディを

     静かに奏で始め

     ゆるやかに力強く始まった

     カシオペアの『大世界』

     広いところへと誘う10人の音は

     終わりを感じさせる

     でも 新しい始まりも強く感じる

     そうだね

      終わりと始まりの繰り返しだよ

      日々は 人生は

だって もう お祭りは締めの時

全てのプログラムを終え

10人はステージ前に揃って

「ありがとう」のお辞儀をし

とびっきりの笑顔を

観客にプレゼントして去ってゆく

笑顔のままで 去ってゆく


観客はアンコールをまた求めるけれど

終演を告げるアナウンス 明るくなるホール

仕方なく 名残惜しげに動き始める

でも 表情はすっごくよかったりするんだな

どうしようない位 嬉しくて

幸せな笑顔のままで帰ってゆく みんな


午後10時頃 

『ヘリオス スーパーフュージョン』終了

---大・成・功!


まだ外は しとしと雨が降っている

でも 雨はいつか上がる

         きっと上がるから

濡れていいや 歩いてゆこう


まだ外は 闇の中 夜はまだ終わらない

でも 朝はいつかくる

          誰のもとにもやってくるから

まずは眠って 元気になろう


夢を叶えたいなら 強くなろう


【4】

守りたい存在がある

思い切り抱き締めたい位の

誰もが持っているはずの


心から素直になれて ほっと安心でき

イヤな事に立ち向かう力を生み出す

誰もが持ちたいと望んでいる


でも本当は とても脆く

いつ消えてもおかしくなくて

誰もが失うのを恐れていて


何かを


世界は常に揺れている

ヒビを大きくしてゆきながら

モノを壊しながら 尚モノを求め続ける都市

建前だけの為に

迷彩色の飛行機は異国へ向かう

巨大なマスメディアの波に呑まれて

消えてゆく幾つかの小さな事実

忘れ去られてゆくささやかな命--


守りたい


ライブを『ONE NIGHT DREAM』なんて

カッコ良く言う人がよくいるけれど

ライブは実際に行われたのだ

夢みたいな一時 でも

架空の物語 とか 虚偽の世界 ではなく

ただの事実 本当にあった出来事なのだ


そう ほんとうの音楽の楽しさを

         世界中に伝えたい人達と

         音楽と演奏者さん達が大好きで

         見守り続けたい人達と

         全てを記録し マスメディアを通じて

         音楽の楽しさを他の大勢の

         知らない人達に教えたい人達

あの日の夜 あの場所に居たみんなにとっては

とびきり素敵な本当の出来事


守りたいよ


壊すのではなく     つくる

忘れるのではなく おぼえている

捨てるのではなく いだきつづける


夢を


ライブは終わり 日々だけが過ぎてゆく

のではなく

来年のお祭りのプランを考えながら

今年の祭りのまとめをする日々


まだ割り切れず やるせない日々が続く

のを終わらせて

新たな柱を

他の3本と共に守ってゆきながらも

去っていった柱を忘れず想う日々


立ち止まったまま

いっそ 諦めてしまおうかと考える

方向を思いっきり変えて

ほんの少しでも 向上心っていうのを持ち

やりたい事をともかくやってゆこうと

動き出している日々


今は今でも動いている

一番素敵な明日に向かって動いている


もし守りたい存在があるのなら

あるだけの力を出して 守ろう

誰の中にも必ずある力を

かたちに変えて


守り続けよう

たくさんの人に

伝えてゆきながら

たくさんの仲間をつくり

共に守ってゆこう

小さくても 大きくても

普通でも 特別でも

どんなかたちをしていようが

大切だと思っているなら

大好きだったら

叶えたいなら

みんな 同じだよ 夢は

守り続けてゆこう

いつまでも

どんなところにいても

ずっとね


いつかきっと

一番幸せなあなたの笑顔に出逢えるまで


いつかきっと

一番幸せな自分自身の笑顔に出逢えるまで


がんばろ



それではまた

センチュリーホールで逢いましょう




 てなワケでひとつのライブをほぼまんま詩にしてもうた、更に前後にまあ色々語ったとんでもない詩、ナンでしょうか。ともかくライブ後から勢いで書いて一ヶ月後のライブのテレビオンエア前にはまとめると意気込んでましたっけ。で見たら忘れていた場面が結構ありまして、解説をつらつら書くがてらその補完をば。
【1】はスーパーフュージョンの成り立ちですね。中部日本放送CBCテレビのプロデューサーが仕掛け人で、89年夏名古屋がぶっちゃけオリンピック誘致出来なかった代わりみたく開いた博覧会のイベントのひとつから始まりました。この時は名古屋の出版社が協賛で雑誌名の『Cheek』がアタマに入り、カシオペア・T-スクェア、「2バンドを前座にして笑」のオットットリオ(カシオペアとスクェアのギタリスト二人とも一人ギタリストが入ったユニット)というフュージョンガチ勢なプロデューサー曰く「いっぺんやってみたかった」面々で行ったら、大好評に。翌年から協賛に名古屋の貴金属業の会社が入り9月に、様々な方々を呼んで続いたのです。
【2】は92年晩夏のカシオペアの突然のドラムスの交代を、私情丸出しで書きました。この年はお盆辺りのジャズフェスに梯子追っかけしてカシオペアのライブを観ていて、日山正明さんの叩く姿を見ていたから「体調不良の為」という理由も受け止めきれず、気持ちをこうして文章にぶつけていましたっけ…。勢いで色々書いていますが私個人はこう想いました、ということで。
【3】はライブレポートを詩にしたものです。オープニングアクトは岡崎倫典さんというアコースティックギター弾きさんで、今もライブ活動されているかと。テレビオンエアでエンディング曲でここで演奏した『ドリーム』がしっとりと流れました。                        一バンド目のG-クレフ(Wikipediaリンク→此方)はともかくよく動いてました。詩の通り1曲目から客席乱入かまし『TIME』で2階3階突入した次第。今はカシ三番と同じレーベルに所属している柏木さんもラストにもう1回チェロ持って乱入してましたのぅ。若さで突っ走ったバンドさんでしたわとしみじみ。
 二バンド目且つ本命のカシオペア、【2】の終わりに5歩目と書いたのはスーパーフュージョン前にイベントやら日比谷野音、福岡に神戸とツアーみたくライブが続いてまして。それをこなした新ドラマー熊谷徳明さんはすごいわ。4年後カシオペアから巣立ち今は熊谷さん、TRIXというインストバンドのリーダーしてます。話しを戻して、ここはそのセレクト版なラインナップでした、この年出したアルバム『ACTIVE』からの曲をメインに。                                                                      詩に書けていないシーンの補完ですが。ギターとベースのバトル曲『ECCENTRIC GAMES』の後奏の掛け合い、先にベースなのにギターが入り鳴瀬さんがニヤニヤしながら目で先走らないと野呂さんに言っている件とか。テレビスタッフの編集がドラマチック-全体撮影とラスト以外ドラムスを入れなかった、ラストも背中だけという編集の意図があぁと分かる『DOOR OF TRUTH』とか。ベースソロは今回映像では入ってませんが、一バンド目に対抗して2階まで行った、ような。
 合同演奏は1曲目2曲目は詩の通りです。『MATERNITY WOMAN』での〇は今見ても良か悪か、悩みます笑 テレビ側もこの乱入状況をここまで想定していたかどうか。まあ、野呂さんを引っ張り回したのは後にも先にも彼等だけ、かな。ラストの『大世界』はあの場では感じなかったものが映像にありうわーとなり、今見てもうわーとなります。始まりからあれ?となり中盤ではっきりしてきて、カメラも気付いたのかなるべくメインに捉えていて。詩的に表現すると、風が彼中心に集まっている感じで。それが後半でステージにホール全体にわっと広がった、でしょうか、ひとりの方の「意識の風」が。別の書き方すると約一名様の気に他9名様が煽られていた感じも。コレを見てから私には『大世界』は大切な曲になりました。
締めの【4】は読み返すと、感情のおもむくまま書いたねあの頃の自分よ、って気持ちになります。当時はPKO派遣が時事問題でしたっけ。                                                                    ただ、現実はひっくり返りました。協賛会社が倒産かな?して翌年93年は場所も内容も違うイベントになり、『スーパーフュージョン』はこの92年で終わりました。                    けど、今振り返ると、97年『野音で遊ぶ』や私は観れずじまいの『PAL MUSIC』、DVDブルーレイ化した『CASIOPEA VS T-SQUARE』や2014年と15年に行われた『FUSION FESTIVAL 』等に、想いみたいなのは引き継がれているのかなぁと。                世の中諸々むつかしいですが、インストバンド頑張れ、集まって盛大に楽しもう的イベント的ライブが、続くと良いなと願います。収録あると更に嬉しいです。
この詩をずっとどこかに公開したい、いろんな人に読んでほしくてここを見つけやっとこうしてアップ出来ます。前にアップした『花束が降る夜へ』が自分の詩の書き方みたいなのが出来、やや迷った期間あって『センチュリーホールで逢いましょう』で、ライブで感じたものや湧き上がった言葉を詩にぶち込むスタイル笑が決まりました。以降今日に至る次第、ライブに行かなくなると詩も書かない時代を経つつ。後、場所、会場を意識したのもコレが始まりで、近年カシ3番のファンクラブ会報で書いた寄る辺シリーズに繋がってます。                                                                 しかし改めて微修正しながら打ちましたが、長い。どんなけ詰め込んだかと、過去の熱い自分に呆れながらの作業になりましたわ。コレ並みに長く熱い文章が今後書けるだろうかと想いますが、まあ来る時は来るかな。今は、この作品にここまでお付き合いありがとうございましたと、お礼のぺこりをして終わります。