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違う親父


俺の親父は、フォーク世代。
特に井上陽水に傾倒している。
しかも学生時代はバリバリのヤンキーだったようで、俺がまだ子供の頃にも、アフロじゃなくパンチパーマに濃い目のサングラスで手を打っているという危険な男だ。

タバコの量もどうかしている。
酸素よりタバコの煙を吸ってるのでは?くらい吸う。銘柄はずっとピース、一択。
だから俺はピースの香りを嗅ぐと、絶対に親父を思い出してしまう。

親父は、勘違いが多い。
「こうだ!」と思い込むとずっとそのまま。

そんな親父の、映画タイトル勘違いをまとめてみたので暇つぶしに読んでってほしい。


ハムプラナイト

これは「ハムナプトラ」のことだ。
一瞬字面がほとんど同じなので「ハムナプトラ」と読んでしまうが違う。

親父の中で、「ハムナプトラ」というのは知らない言葉、意味のない言葉の羅列にしか見えないようで、「ナイト:騎士」から引っ張ってきたんだと思う。とても良い。これは成功例と言えるんじゃないか。



ケロケロッピ

みんなはサンリオの「けろけろけろっぴ」のことだと思うだろう。俺もそうだった。

これは東京の親戚からもらったビデオテープのラベルに親父の字でそう書いてあり「凄い!けろけろけろっぴが見れるんだ!」と小学生の俺は歓喜した。

ワクワクしながらビデオテープを入れると、始まったのは何と「ミュータントタートルズ」のアニメだ。

カエルではなく、亀。
色しか合ってない。
俺は初めてミュータントタートルズを見たんだが、めちゃくちゃ面白かった。

昔、ビデオテープで番組を録画するのは、上書きが基本だった。
「これは“けろけろけろっぴ”に上書きされたミュータントタートルズなのかな?きっとこの後に“けろけろけろっぴ”が入っているんだろうな」
俺はそう思いながらテープを見進めた。

ざ、ざざざ…

ノイズが入る。
上書きされた箇所が切り替わるサインだ。
“けろけろけろっぴ”だ…!くる!
けろけろけろっぴ、、ケ、け、ケロロロロ…


YOU WIN


始まったのは、
ストリートファイターIIのアニメだった。

暴力に染まっていた「ケロケロッピ」のテープ。
元々は何が録画されてたのか。
ミュータントタートルズが、ケロケロッピだったのか。本当のことは親父しか知らない。



八月の妻


これ一発でわかる人いるのだろうか。

親戚一同で食事をした時、「“八月の妻”が面白くてよ〜」と親父が切り出した。

映画は割と見てるほうなのだが、聞いたことのないタイトルで、昭和の名作なのかな?と思って聞いていたが、出てくる俳優が「永作博美」「井上真央」など現代の俳優が多く、内容もかなり重たい話のようだった。

もうわかった人いると思うけど、
これは「八日目の蝉」のことだった。

数字しか合ってないし、作品は「8月」も「妻」もそんなに関係ないのではないか。(見てないけど)
全然違うのに名作の風格を漂わせる「八月の妻」というタイトル。小津っぽい。

まだ細かく言えば色々あるけど、
そんな親父も少し前に定年になった。

電球で相手の頭(ヘルメットしてる)を殴りつけてクビになったりしていたが、色んなことに熱く、とても良い親父だと思う。

いつまでも元気で、ずっと「勘違い」してほしい。

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