一日目 悪魔の手術、それから入院スタートの巻 ~先生、それ痛いっす~
月曜日、朝10時の整形外科の診察室。響いているのは私の断末魔。止まらないのは医者の手。継続的に襲い掛かる、おそらくは人生最大級であろう痛み。
そこにはきっと私の人権なんてものはなく、ただあるのは「左足に溜まった膿を出す」という目的だったのだろう。
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_そもそも、なぜこんなことになったのか。話は先週の水曜日まで遡る。
何の前触れもなく左足が腫れ始め、慌てて最寄りの整形外科に向かったところ
「お前訳分からん。原因不明、デカい医者行け。(意訳、医薬だけに)」
と言われ、タクシーでデカい病院に。CTやら採血やらの結果、血腫ができて筋肉を圧迫している「筋挫傷」との診断を受けた。
その週の土曜日に所属している柔道部の引退試合を控えていた私は焦った。もうそれはそれは焦った。
なんとか出ることは出来ないか医者に頼んでみたところ、「金曜にまた来るがよろし。そこで判断しまひょ。(意訳。医薬だけに)」とのこと。とりあえず痛み止めと腫れを抑える漢方(味はほんのり苦く、何故かコンソメの香りがする。感動的な味わい。)を処方してもらい、金曜までは自宅で安静ということに。
自宅で安静の間は、そりゃあしんどかった。おそらく水曜~金曜の平均体温は38.5を下回らないだろう。最高値は40.3をマーク。ほとんど常に熱と頭痛が私を襲い、包帯と松葉杖がないとまともに移動もできない始末。家族には大いなる迷惑をかけたと思う。ありがとう。
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ほんで、金曜日。水曜日の私予想だと、この時点である程度治っている予定だったのだが……残念ながらそんなことはなく。
採血の前の診察では、「明日の試合は…あきまへん。(意訳)」とのこと。ただ採血の結果が割と治っている方向に向かっていたのもあって、「(ホントはダメだけど)出てもいいよ♡」とのお言葉を頂いた。
ちなみに血腫には細菌が繁殖しており、
「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」
という症状も併発していたようだ。
そして土曜日の試合も出られ(チームとしては負けてしまったが、一勝はあげられた。)、本日再び病院で診察を受けたのだが。
「ものすごく膿が溜まっている。」とのこと。
…感じる嫌な予感の中、医者が口を開き続ける。
「じゃ、ここで抜いちゃうか。注射で。」
ほ~ら、やっぱり。ほらほら。やっぱりね。
診察室内のベッドに寝かされ、足をアルコールで消毒される。遠くの方に見えたのは、なんだか針が太くていらっしゃる御注射様。あの太さ、何処かで見たことが…。あ、献血だ。
あの爪楊枝ぐらいの太ぇ針を、アタシ、これから刺されちゃうのね。アルコールで冷たくなった肌に緊張感が走る。仰向けに寝かされて足は見えないが、針が近づく気配は感じる。
そして、ぶすり。
…一つ分かったことがある。
「行けたら行くわ」と「ちょっとチクッとしますよ~」は同じタイプの言葉だ。
この世に「チクッ」で済む注射なんて1つもない。ましてや、それが爪楊枝の太さの時は。
痛い痛い!!…けど、膿は滅茶苦茶に出たようだ。チラッと見た注射には膿が満タン。痛かったけど、これで怪我が治るならいいかな。よしよし。
これで処置も終わりか。あ~痛かった。
ただ、晴れ晴れとした俺の気持ちとは裏腹に、先生の顔はビミョーそうだった。
「ちょっと切開しようか」
え?
え????
医者がそう言った。どうやら聞き間違いじゃないようだ。残念なことに。
麻酔の注射を刺される。ぶすり。採血とさっきのと合わせて、本日三度目の注射である。毎回目的が違うのもちょっと面白い。
というか先生、ここでやるんですか?!?!?!普通に診察室だし、ドア一枚向こうは廊下だし。唐突過ぎて言葉が出てこない。
麻酔が効いてるので、切開されること自体はそんなに痛くなかった。が、やばかったのはここからだ。
ごりっ!!ぐいぐいっ!!!ごりごりごりっ!!!!!!!
____足全体に激痛が走る!痛い痛い痛い痛い!!!!!!
思わず叫ぶ。なんだこれ?!?!麻酔効いてるんじゃねえの?!?!?!
私自身は仰向けのため見ることは出来なかったが、同伴していた親父によると、「ピンセットを切開した切り口に突っ込み膿を搔き出していた」らしい!
そりゃ痛ーわ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
だって麻酔の範囲外ですもん!普通に内部組織をゴリゴリしちゃってますもん!!
痛覚がある生物向けの処置じゃねえよ!絶対!!
痛い痛い痛い痛い!!!!!
叫び続けて15分程。漸く手術が終わった。突然診察室で行うには余りにも痛すぎる処置。ただ、これも先生が私の怪我を治すためにしてくれた必要な処置。感謝の気持ちで胸がいっぱいです。
…でもごめん。先生のこと、少しだけ投げたいです。
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まあそんな突発的な手術も終わり、普通の診察に戻った。
外来での治療が難しいこと、安静にすべきことなどから、なんと突然入院することに。
またもや急展開であったが、治すためならしょーがない。入院のための検査を受け、順番待ちの後親父と別れ病棟へ。
そういえば順番待ち中、さっきの診察室からパソコンのキーボードの音が聞こえてきた。
………ああ……俺の絶叫、めちゃめちゃ聞こえてたんだろうなぁ………。
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車椅子で案内されたのは救急病棟。後日一般病棟に引越しになるようだ。
それっぽい服に着替えたら、早速点滴を受けた。車椅子に点滴なんて、なんだか入院っぽくていいじゃない。ベッドも結構デカくて、快適に暮らせそう。
メシも出てきた。量も少なくはなくて、味も美味い。明日の朝メシで何が出るか、今から楽しみだ。
トイレは近くにあるのだが、行きたい時に看護師さんを呼ばなきゃいけないのがちょっと申し訳ない。足が良くなれば勝手に行ってもいいようになるかな。
入院初日のイベントはこのぐらいで、ドタバタしてたらあっという間に終わってしまった。足は多少痛むが、昨日までより100倍マシだ。ずっと上がっていた熱も上がることは無くなり、膿を出しただけでかなり良くなったんだと思う。
そういえば、昼の医者が大勢の医者を引き連れて見舞いに来てくれた。
なんかちょっとだけニヤニヤしてた気がする。気のせいだろう。
一日目 完
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