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アンチェロッティ解任の内幕について その2


前回はこちら


前回でも触れていた通り12月11日のヘンク戦の後、ナポリを解任されたばかりのアンチェロッティが12月21日にエヴァートンの新監督に就任した。
就任までの10日間、交渉がとてもスムーズだったことからも12月4日に下されたチームの決定にカルロ自身も納得し、ナポリを去るという既定路線の下エヴァートンとは裏で交渉していたと思われる。


カルロが過ごした一年半を振り返り、いつ何が原因でチームと齟齬が生じたのか?
噂話も含めメディアで数々伝えられていることから検証し、夢半ばで去ることになった名将の解任理由の真実に迫りたい。

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1.サッリの限界そしてアンチェロッティへ


時計を少し巻き戻しサッリの3期目2016-2017シーズンのカンピオナートを振り返る。

ナポリは練度が増したメンバーによる欧州随一と称される美しいゲーム運びで一試合の勝ち点平均2.36というチーム史上最高の勝ち点獲得ペースで快進撃を続けた。
そしてシーズンの大詰めに迎えた34節のユヴェントスとの首位決戦
クリバリーの劇的な決勝ゴールで勝利し勝ち点の差が僅か1に、とうとう王者をあと一歩のところまで追い詰めた。


しかし積年の夢であったスクデットは次節のフィオレンティーナ戦、開始早々に起きたクリバリーの一発退場により雲散霧消してしまった。

このシーズンのナポリはチャンピオンズリーグのグループステージで敗退した後はコッパ・イタリアもヨーロッパリーグも主力を温存しカンピオナート一本に賭けていた。
そのチャンピオンズリーグでのシャフタール・ドネツク戦、そしてマンチェスター・シティ戦でサッリの国際舞台での経験不足が露呈したこと
カンピオナートでは固定メンバーに固執し結果的に主力メンバーの疲労蓄積に繋がりシーズン終盤に息切れしたこと
この2つの点がサッリの率いるナポリの限界を示したと感じたADLとジュントーリ
これらを補いナポリを真のチャンピオンチーム導くことができる監督は誰か?

カンピオナートではユヴェントスを打ち負かす可能性を秘め、尚且つ国際舞台でも結果を残している監督。
2つの条件を満たす名将アンチェロッティにナポリの次期監督として白羽の矢が立ったのは理に適う選択で、サッリ体制から更なる上のステージを目指すのだという強いメッセージ性がある監督交代劇であった。

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2.ハムシクの時代とサッリイズムの終焉

アンチェロッティの前任だったマウリツィオ・サッリがナポリで指揮を執った3シーズン、カンピオナートだけに限っていえば
初年度 25勝7分け 6敗  得点80 失点32  勝ち点82 
2年目 26勝8分け 4敗  得点94 失点39  勝ち点86  
3年目    28勝 7分け 3敗  得点77    失点29  勝ち点91

一方アンチェロッティの成績は
初年度 24勝 7分け 7敗  得点74 失点36  勝ち点79 

初年度の成績だけを比較してみればサッリの成績に僅か勝ち点3及ばないだけ。大型補強が行われない中で最終的にリーグ2位で終えたことから一年目にしてはまずまずの成績で及第点との評価を受けたかに見えた。

一方チャンピオンズリーグではPSGとリヴァプールが同居した死のグループで互角に渡り合い、最終節まで決勝ラウンド進出のチームがどこにも決まってない大混戦に持ち込んだ手腕をメディアは高く評価し、アンチェロッティが依然として欧州のトップレベルの監督であることを印象づけた。

その最終節のアンフィールドでのリヴァプール戦はスコアこそ僅差であるが内容的には惨敗を喫したこと、特にフィジカル面で圧倒され、サッリボールを踏襲しこれまで戦ってきた選手のレベルでは限界があり、路線変更する必要性を内外に露呈した。その必要性を一番敏感に感じたのはチームの屋台骨をずっと背負ってきた主将のハムシクで、自分たちベテランの存在がナポリの若返りを阻んでいることを理由にチームを去った。この主将の英断を受けアンチェロッティは若返りと脱サッリイズムを初年度のシーズン後半のテーマとし、徐々に独自のスタイルをチームに植え付けていくことになる。

そのスタイルはオーソドックスな4-4-2で王者が取るべきものというカルロの確固たる信念に基づいたもの。サッリが編み出したフィジカルやメンタルで劣るナポリの選手の弱点を補う流麗なサッリボールはハムシクが去った後半戦が始まるとすっかり陰を潜めていく。

こうしてハムシクの退団をきっかけにチーム改革にようやく本格的に着手したアンチェロッティなのだがADLの認識は少し違っていたようだ。
サッリの3年目と比較すると勝ち点12の差が付いてしまっていたことの方がどうも会長には不満であったようなのだ。
優勝したユヴェントスとの差を詰めるどころか逆に離されてしまったのも会長にとっては期待外れの結果だった。

事実シーズン後半の19試合で挙げた勝ち点だけで限っていえばナポリはセリエA全体の6位であり、この停滞感がそのまま今季に繋がっていたと見る向きもある。

サッリ体制からの改革には時間を要するという認識はADLにもあったはず。だが、この移行期に順位を落とすことなく尚且つナポリのアイデンティティを失わず遂行するという困難なミッションをアンチェロッティならやってのけてくれると会長は期待して招聘したはずだ。

ハムシクが去ったチームでカピターノの重責を任されたのは地元出身で下部組織上がりのインシーニェで、彼こそがカルロが率いるナポリの象徴となるべき存在と誰しもが期待した。それがナポリとしてのアイデンティティを失わない唯一の方法であるからだ。

しかしオーソドックスなスタイルにインシーニェの特徴が活きるポジションがなかなか見つからない。フィジカルやメンタルで劣る選手の典型であるインシーニェの扱いをどうするか?

解任に至るまでカルロはずっと頭を悩ませる事になる。

つづく







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