見出し画像

今年のナポリを表す漢字一文字は「変」であることに気付かされたリヴァプール戦 その7

前回まではこちらを

アタランタ戦から一気にリヴァプール戦まで飛んでしまうことをまずお詫びしたい。
その間のナポリはご承知の通り暗く長いトンネルに迷い込んでしまい、結局今日現在も抜け出していない状態が続いている。
アンチェロッティの息子でアシスタントコーチであったダヴィデについては別のタイトルで深く掘り下げて書くことを決めたので、彼の指揮したローマ戦などはここでは触れないことにする。

このタイトルで今年のナポリを振り返ってきて「変」という漢字がナポリの現状を紐解くキーワードであると気付かされたチャンピオンズリーグの対リヴァプールとの2試合。
ナポリは1勝1分けで昨年の欧州王者に対して互角以上の誰にも文句の付けようがない結果を残した。
絶対王者を出し抜いた要因はアンチェロッティが用いた用意周到な戦術面などで様々な人により語られているので省く。
客観的みればこの結果を得られたことが意味するものはナポリの持てる力を全て出しきれば、レベル的には欧州のトップにあり続けていることを証明していることである。
低迷するカンピオナートと欧州トップレベルにあることが明らかなチャンピオンズリーグでのナポリ。
この正と負の二面性がどうしてなのか?このゲームにその謎を解く鍵があった。

今回は対リヴァプール戦の2ndレグ 敵地アンフィールドで行われたゲームにフォーカスし
サッリイズムの終焉となった昨季から一年経ったナポリがどう「変貌」を遂げたのかを追ってみる。

スタメンはこちら

画像1

カジェホンとインシーニェが外れキャプテンマークを巻くのはKK


昨年のスタメンから5人が入れ替わっているが
この内チームを去ったのはアルビオルとハムシク
新戦力として加わったのはマノラスとロサーノとディ・ロレンツォ

画像2

長年ナポリの屋台骨を背負ってきたハムシクが抜け、本来であればその座を継いでいるはずのインシーニェがこの大一番でスタメンに加わっていない。
さらには副将であるカジェホンの姿もない。
怪我をしているわけでもなくチーム内でプライオリティが高い選手である主将と副将の2人がスタメン落ち
客観的に見たらとても「変」である。
1stレグではチームを引っ張ったカジェホンとインシーニェ

しかし昨季のアンフィールドでまったく何もさせてもらえなかったカジェホンとインシーニェの姿は記憶に新しい、またこのアウェーの地で同じ轍を踏む可能性があるとアンチェロッティが判断しスタメン落ちは妥当ではないかと自分は思っていた。
御存知の通り体格に恵まれない2人に共通している欠点はフィジカルでありホームのサン・パオロでは観衆の後押しもあってチーム全体の強度が高まることでその欠点が顔を覗かせることが少なく済んでいた。
逆に相手のホームでは弱点が露呈してしまい、試合から消えてしまうことはこれまでも度々あった。
さらにはゲームの出来不出来はこの2人の気分によって左右されることがとても多く、このムラっ気こそがフィジカル以上にナポリの二面性の正体なのだと思う。
ナポリの二面性の大きな原因である主将と副将
そんなムラっ気をこの大事なゲームで出されては堪らない。
アンチェロッティはこのゲームで明確にこの2人は現在のナポリのレギュラーではないことを内外に示したのであるが、結果的にこの妥当性のある判断を後々解任理由のひとつにされてしまったのだから世の中は何が起こるのか分からない。
アンチェロッティは結局インシーニェに対しては実質カピターノではないとの烙印をこのゲームで押した一方で、インシーニェの使い方の最適解を最後まで見つけ出せないことも示さざるを得なかった。


インシーニェの存在がナポリにはとても大事であると「見せ掛けたい」ADL

カルロが最期までインシーニェを使いこなせななかったことがADLに利用されることになるのだけれど、この解任劇の背景については近日中にまとめたいと思っている。

画像3


スタメンが発表されゲームが始まるまでの間ディ・ロレンツォとマクシモビッチ、更にはマリオ・ルイの配置がどうなのかがTwitter上で話題となる。
ディ・ロレンツォとマリオ・ルイをウイングバックにした3-5-2ではないかとか、いや守備を重視しゴール前に3CBを配置した5-3-2だろうとか様々な意見が飛び交う。
ゲームが始まり蓋を明けてみるとディ・ロレンツォがカジェホンの役割を担うだけのいつもの4-4-2であることが判明。

ディ・ロレンツォのユーティリティ性とCLの舞台であってもフィジカル負けしない特徴を最大限に活かすことで並々ならぬ強度で終始圧倒された昨年の借りを返す、それがこの一戦に進退を賭けたアンチェロッティの狙いであった。

昨年のゲームではサッリの遺産で戦い続けるチームの限界を露呈しチームに何が足りなかったかをよく分析し反省した上で、欧州トップレベルの強度に耐えうる選手を揃えるという必要性からジュントーリSDの出したアンサー
若くて無名でも将来性が見込める選手であると見抜く慧眼の賜物であって、ディ・ロレンツォの獲得は今季ナポリの最も明るい材料だと自分は思っている。
またジュントーリのそうした若手有望株獲得の方針は後半から途中出場したエルマスにも当てはまり、彼らの成長が今後とても楽しみだ。

画像4




試合は前半21分にメルテンスの挙げたゴールを守りきれず、後半コーナキックからロブレンに同点ゴールを許し、その後一進一退の攻防を両チームは繰り広げ1-1のタイスコアのままタイムアップ。


この試合を実況された下田さんのツイート


アンチェロッティは1stレグの勝利に続き、ここアンフィールドでもナポリが、そして監督としての手腕が欧州の最前線にあることを再び証明してみせ昨季からの宿題に完璧な答えを示した。
それと同時にこのゲームでナポリの二面性の原因が何であるかもはっきりと浮かび上がった。

強いけど脆い

この二律背反した命題に、結局アンチェロッティは最後まで答えを示すことができなかったのだ。


つづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?