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アンチェロッティ解任の内幕について その4

前回まではこちらを




プロローグ

11月5日ザルツブルグ戦の後に起きたロッカールーム騒動
伝えられている通り会長の発した合宿令を主力選手が拒否したことである。
その2日後ナポリの地元紙 Il Mattinoに興味深い記事が掲載される。
記事の概略はアンチェロッティがバイエルンから連れてきたテクニカルチームが縁故関係者で占められておりまるで幽霊のようにチーム内を漂っている。とりわけアシスタントコーチで息子のダヴィデ・アンチェロッティに対する選手からの風当たりが強い。それはアンチェロッティという姓のため生まれる「特権」に原因があるからだろう。
このカルロの家族的なテクニカルチームこそがそれまで保たれていた秩序を乱し今季ナポリの混乱(カオス)を招いている元凶であると書かれている。
家族的な経営はナポリのチーム風土でもあり、カルロの就任当初は歓迎されていた節もある。
しかしカルロが解任された今となってはこの家族的な負の側面であるもたれ合い、馴れ合いが仇となっていた可能性が強い。

今回はダヴィデ・アンチェロッティと父カルロがどのような道をこれまで歩んできたかを振り返る。

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ダヴィデ・アンチェロッティ来歴

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・1989年7月22日 父カルロ母ルイサの間の長男として生まれる
・2007年7月よりACミランのユースチームに入団
・2009年12月レンタル先のセリエDボルゴマネロにて現役引退

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・この間パルマ大学にてスポーツ科学を専攻しトレーニング理論を学ぶ

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・2012年1月より2013年6月までPSGのフィットネスコーチ
・2013年7月より2015年5月までレアル・マドリーのフィットネスコーチ
※この期間にUEFAのコーチングライセンスA級を取得したと思われる

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・2016年6月より2017年9月までバイエルンのアシスタントコーチ

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・2018年7月より2019年12月20日までSSCナポリのアシスタントコーチ
・2019年12月21日よりエヴァートンのアシスタントコーチに

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母と息子の絆が過剰ともいえるくらい強いことから
イタリア語にはマンモーネというマザコンを表す言葉がある

しかし父子でここまでべったりなのはあまり例を見ないと思う。
親子鷹といえばマルディーニ父子などいくつか例はあるが
息子が父の威光を借りて成り上がったわけでもなく、プロサッカー選手としての地位を激しい競争の末に勝ち取ったからこそ。なので賞賛に値する。

ダヴィデとカルロの父子関係は健全に育った男の子には必ずあると言われるエディプス・コンプレックスが存在しなかったと思われても仕方ないほどの親バカとファザコン息子だと言えはしないか。

ダヴィデの来歴を書きながら思った率直な感想だ。


親の七光り

かつてアンチェロッティがバイエルンを解任された後に息子のダヴィデはガゼッタ・デッロ・スポルトの取材に応じ、意味深な発言を残している。
GdSの原文にはPrivilegiatoという日本語で「特権」という言葉があり
記者の
「あなたはカルロの息子という立場、つまり特権階級という目で選手に見られていたのでは?」
という質問に
「そうだね、でも僕の身に付けた知識やメソッドは(親の威光を借りずとも)どこで通用するものだよ」
と反論していてダヴィデがこうした色眼鏡で見られていることを自覚し、反発心を抱いていたことが分かる。

現場でのキャリアが親の庇護の下で作られていくことに少なからず抵抗感が本人にあるのは驚きでもあるが
GdSのインタビュー記事で強がってみせたダヴィデの話はその後ウリ・ヘーネス会長(当時)の「バイエルンでのカルロとテクニカルチームは選手からの信任を得られていなかった」との発言で全面的に否定される。

こうしてみるとナポリのロッカールーム騒動もバイエルンでの出来事も原因は一緒ではないかと思われる。
テクニカルとメディカルを分業制にしていたところに兼業するスタッフが入ってきたことによるチーム内の混乱それが大きな要因であるのは間違いないであろう。

こうしたことから考えればそれまで長年に亘りナポリのメディカルチームを支えてきたデ・ニコラ博士がアンチェロッティ体制の2期目を前にチームを去ったのは偶然ではないであろう。博士はまだ60歳になったばかりで勇退させるには早すぎる年齢である。
カルロが率いたテクニカルチームの越権行為がメディカルチームとの軋轢を生み、結果的にデ・ニコラ博士を追い出すことになったと思われる。


テクニカルチームの瓦解
そしてアンチェロッティ解任


合宿騒動から一ヶ月が経った12月5日
ナポリの地元紙 Il Mattinoにテクニカルチームと選手との不和が決定的ともいえる記事が掲載される。
この日はウディネーゼ戦に備えた練習を行ったのであるが、記事によれば練習にテクニカルチームは関与することを許されずピッチの傍に立たされ見学するだけという異様な情景の中、アンチェロッティただ一人が選手に対し指示を行ったとある。

カルロ以外のコーチ陣すべてのコーチング権限を剥奪。

この措置を下したのはSDのジュントーリで、おそらく前日ローマで行われた秘密会議で決定したのだと推察される。

そのウディネーゼ戦は1-1のドローに終わり
カルロが一人で行ったコーチングは結局実を結ぶことなく終わった。

そして翌週のヘンク戦を最後にアンチェロッティとテクニカルチームはナポリを去ることになったのだ。

つづく




























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