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桜。

ピンク、と呼ぶには足りないが白と呼ぶには色付いている。触れたら居なくなってしまいそうな、というほど弱くはないが、いつまでもそこに在るような、と形容するほど強くもない。

貴方は春に呼ばれて来る。卒業式、入学式、受験、そういう青春のシンボルとして、いろんなところで引っ張りだこだ。でも私の記憶では、卒業式には間に合ってくれなかった。漫画の卒業シーンのようにふらりと舞い降りる貴方はどこにも居ない。仕方ないから、咲いているとは言い難い空洞だらけの貴方の下で、写真を撮った。

多分、入学式には咲いていた。でも何故か思い出すのは、側に居てほしい時にいなかった瞬間ばかりだ。

私の通勤経路に貴方は住んでいないので、そういえば今年はまだ会っていない。4月終わりの今、出会ってなければ今年はもうない。昔はもっと貴方に会うことを楽しみにしていたのに。


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