なんきちさん
きのうも夕暮れ時になってから
しぶしぶ散歩へ出かけた。
近所の公園で落ち葉の上を歩いて
ああ落ち葉のなかごろんごろんしたいわ
うずうずしていたら
道路を挟んだ向こう側にキツネがいた
何かにんじんみたいな物をくわえて
びくびくしながら歩いている
痩せて 冬毛と夏毛がところどころ混じってる
バサっとした毛並み
ここから山まで戻るには交通量の多い道路を
あと3回も渡らなければならない
どうか無事でいて
車にひかれませんように
怖いニンゲンに見つかって
怒鳴られたり
石ぶつけられませんように
誰にも見つかりませんように
痩せ細って空腹だろうに 食べ物を
くわえたまま歩いてく
子どもたちと食べるのかな
どうか 熊もたぬきも鹿も
ニンゲンに見つかりませんように
私たちニンゲンは
野生動物の暮らす場所を奪って
自然環境を壊しておいて
それでもまだ、満たされないでいるんだよ
ごめんなさい
家に帰ると新美南吉の詩を読んだ