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だんせいきょうふしょう

私は男性恐怖症だ。

5歳くらいの頃砂場で遊んでいたら、
近くにいた中学生くらいのお兄さんに、無言で
下半身を見せられた。
びっくりしたし、怖かったし気持ち悪かったし
その行為がなんなのか
よくわからなかった。

何も言えずにその場を去り、家に帰っても誰にも言えなかった。
母親に言ったら怒られるんじゃないかとさえ思った。

変質者、性的に頭のおかしいやつだと
理解するのはもっと先で、それから
嫌というほど変質者、痴漢に1年に数回、
毎年のように出くわしてきた。
性についてのあらゆることを 出来るだけ
拒絶した。無いものにしたかった。自分から
遠ざけたかった。

中学の頃、テストの答えに「精子」と書く問題があったが
書けなかった。書きたくなかった。

自分の椅子に「いねむりこは○○とsexしたい」と
落書きされたとき、ショックだった。
だけど、そういうこと考えたことないから
女子でも性欲あるんだなと気づかされた。

高校の時は保健体育の授業が嫌で 頭の中で音楽をかけた。
当然テストは赤点ばかり。20点とか。

食欲も性欲もない私でも好きな男子はいた。
ずっと片思いでいいと思ってた。

好きなバンドのライブを見て 映画を観まくって
気の合う女友達がいれば それでよかった。

社会人になったとき職場の男性と話すだけで
緊張し、赤面し、休憩室で昼ご飯を食べるとき、
男性職員が一人でもいると
緊張しすぎて 吐き気がして 食べることができなかった。

そのうちとうとう恋人ができてしまった。
不安しかない。
「今が一番楽しい時だね」って何?
デートのたびに緊張して胃薬をのんでいた。
私を好きになってくれた人なのに、心が追いつかない。
いざ ことに及ぶことになると嘔吐したり、
泣き出したり、過呼吸の発作が出た。
休みの日は休みたい。
ライブにも行きたい。
それが出来ずに うつになる。

もう男の人の下半身なんか見たくないんだよ私。
私、男の人ダメなのかな。
女の人といる方が何十倍も楽しいけれど、でも
恋愛感情ではないんだよな。
そして自分の体さえ、汚くて気持ち悪いと思ってしまう。
私のジェンダーってどこにも当てはまらないのか。

これから一生 恋愛込みのパートナーは
できないのかも。

仕事で夜中、すごく良いものが出来たとき
吸えないタバコに火をつけて
煙を吐き出しながら
「ああ、オトコいらねぇ」と呟くのが
好きだった。

だからオウジを好きになってしまったとき
どうしよう、逃げたい
でも失いたくない
友達ならずっと続けられるのかな

ひとを本気で好きになって向き合うことから
私はずっとずっと逃げてきた。
また逃げるの?
本気で好きな人が目の前にいるのに?
10年も友達と会わず、孤独に 限界を
感じてるのに?

今日までの孤独の苦しみを思えば
不安だの緊張だの いくらでも耐えられるんじゃ
ないのか?
緊張なんて数年経てばなくなってしまうだろうに。

ご飯も喉をとおらない恋わずらいのなか
何度も今日のデート 逃げちゃう?
いいや 頑張って行こう。

そんなことを繰り返し
思春期の片想いみたいな苦しみに飛び込んで
今がある。
一緒に暮らし始めたこの街は
とても治安が良くて、痴漢や変質者が出没することはめったにない。
くまは 出没しているみたいだけど。

今の私は オウジの鼻くそだって愛おしい。
赤ちゃんの甘い香りとオイリーがまじった
髪の匂いも、嗅ぐと母性本能がくすぐられる。

よし 頑張ったね私。


最後はのろけです。
読んでくださって心から
ありがとうございます。