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6 家庭裁判所における調査官調査(後編)


 後編でも前編に続いてそしてここで大切な手法をいくつか。

調査報告書の責任の重さ

 調査官は自身の調査報告が事実と誤った報告書になることをとても懸念しています。例えば自分の報告が間違っていたがばかりに誤った審判が下され、それを高等裁判所でひっくり返されるなど、本当に避けなければならないこと。それくらい大きな責任を持った重要な書類作成をしているのです。
 そこで当事者としてはどうするべきか?嘘はつかないのはもちろんですが、自分の主張の根拠となる証拠について、調査官に調査の場で見せておくというのが非常に効果的でした。私は実際にそのような事をしたのですが、調査官調査を振り返ってみてここは非常に良かったと思えるポイントのひとつです。
 なぜかというと…。実際に手元の証拠を証拠化して裁判所に提出するとなると、果たして証拠化して問題ないのかどうか(相手が持っていない情報で、相手が欲しがる情報ではないか)、そしてそのタイミングはいつが良いか(今、裁判所が必要としている情報か)など、裁判の期日の進捗や裁判官の心証などを見ながら慎重にタイミングを図る必要があります。
 証拠は事実の提出ですから自分にとって有利な証拠だとあなたが評価して提出したものであったとしても、今度はその「証拠の評価」で相手側と争うことになることになります。
 結果として自分が出した証拠で相手の主張を補強してしまうこと、丁寧に説明しないと自分の主張に誤解を生み兼ねないなど不本意な結果になることもあり得るのです。これはなんとしても避けたいところです。だからむやみやたらと証拠を提出するべきではないのです。しかし、調査官に対して、
「実は○○についてはこんな証拠があります。必要に応じて必要なタイミングで提出をするかも知れません。弁護士と相談します。」
と言って証拠を見せておくことだけしておくのです。これだけであなたの主張はぐんと信ぴょう性を増すことができます。これは
「実際に事実と異なる調査結果や審判が下ってしまったときには、それらに反論する証拠がありますよ」
と暗に調査官に伝える意味があるわけです。
 証拠は言うなれば我々の手の内です。できれば相手方にはあかさないまま、進行をしていきたいものです。でも、調査官には手の内を見せて、こちらの主張に信頼性が高いこと、間違った調査報告を出すと証拠付きでの反論が待っていることを暗に匂わせましょう。
 もし調査官に見せた証拠に対して調査官が非常に強い興味を示した場合には、大事な争点に関わる可能性があるので、自分の代理人弁護士と証拠化の是非について検討をした方が良いでしょう。

元パートナーの印象について

 それと調査官によく聞かれた事として、争っている相手方に対する印象、心証があります。どういった目的でそれを聞くのかよくわかりませんが、本当に多くの調査官に聞かれました。これはぜひ答えを用意して調査官調査に臨んで欲しいと思います。おそらく調査のマニュアルにあるのではないかと思います。
私は
「子の連れ去りなど子どもが悲しむような行動をしてしまったこと自体は残念ではあるけれど、○○なところはとても素敵な人、××なところは尊敬できる人だと今でも思っています」
というような回答を用意していました。相手を下げる、否定する、攻撃するような言葉は避け、ただ子の利益や福祉に反した行いをしたこと自体はしっかり指摘した上で、相手の長所、感謝しているところ、自分にはまねできないようなことなどはきちんと認めましょう。 相手に裏切られたことで、もう憎さやら怒りやらで脳内は100%埋め尽くされているかもしれませんが、かつては恋愛感情があって一緒になった相手です。過去にはどこかしら尊敬できるところ、憧れたところ、好きになったところがあったはずです。きちんとそれらについては認めましょう。調査官も子の親権を託す相手は、相手に対して罵詈雑言の限りを尽くす人間よりも、相手の良いところは素直に認めて大人の会話をできる人間であった方が良いと考えるだろうと思うからです。これは何が正解か教えてもらったわけではないのでわかりませんが、本当によく聞かれたことですので、皆さんそれぞれ回答を用意しておきましょう。

 さて、これらの用意をして結局最終的には親権関連の裁判では証拠化しなかった証拠も調査官には存在をお伝えして、相手方への罵倒はせず、子どもへの愛と子育ての責任や覚悟を語って調査官調査は終わります。
調査官は調査の最後に、唸るようなおおきなため息をひとつついてから…

「親権はお父さんが持つべきだと思います。」

と調査を終えた感想を述べてくれました。

すごく嬉しかったです。

調査の順番と人間の心理

 なお、最後に本当に小さな事かも知れませんが、調査官調査の順番について触れておきます。調査官は当事者それぞれを裁判所に呼んで裁判所で調査官との面談を行い、次いで監護養育環境を調べるために監護親のところに家庭訪問に行きます。
 さて、自分と相手、どちらが先に調査官調査を受けた方が良いと思いますか??
 調査官はこういった調査のプロですからそう大きな影響はないかも知れませんが、一般的には人間の脳は最初に受けた印象はなかなか後から覆す事が難しいと言われています。
 最初に相手方の調査があった場合、相手方が調査官に好印象を残せたり、あるいは私たちのことについて酷い悪印象を残すような事に成功した場合には、それをひっくり返すのが難しいという事です。逆に先に調査を受ければ調査官にフラットな状態で偏見や先入観なく調査を受けて貰うことができます。自分が自滅するような立ち振る舞いをしなければ、先に調査官に強い印象を持ってもらう事ができるので、できるなら先行で調査を受けるようにしましょう。調査官からの日程調整の打診があったら相手よりも先の日程になんとか予定を空けてでも入る事は意義があると思います。後攻より先攻。これが良いと思います。
 私は残念ながら後攻でした。相手も同じことを考えていたのかどうかは知りませんが、調査官の空き日の最初の日に相手の調査が先に入ってしまっていました。私に先に日程調整の打診をくれれば良かったのですが…。

 以上、これらが私が考える調査官調査でした。

 これから調査官調査を迎える人にとってはとても有意義な記事になったのではないでしょうか。
 最後にまとめると

①人として調査官に信頼を得る、ファンになって貰う
②当日の服装は清潔に、礼儀正しく、正装で(スーツなどが良い)。髭はそり、鼻毛は抜き、髪も美容室などで整えましょう。女性は濃すぎない印象の良いメイクを心掛けておくといいかも知れません。
③調査の最初と最後には礼を欠かさない事
④調査官の態度や言動に間違いやイラっとすることがあっても顔に出さず穏やかに受け答える事
⑤電話での調査官調査、電話での調停ではなく可能な限り出席して顔をみせて対応すること
⑥決して嘘はつかない事
⑦一目で事実関係が分かるような表なども駆使して陳述書をつくること
⑧事実を明らかにすることができる証拠があればこの場で調査官には見せておく事。
⑨訴訟相手方の悪口は控え、子に対する愛と責任を述べるよう心がける事

 どれもこれも
「言われてみれば当たり前の事」
ばかりで目新しい事はなかったかも知れません。しかし、これらを意識せずに全て完璧にできる人はそうはいません。上記9項目、色々ありますが、仮にそれぞれの項目が3人に2人はできることだとしても、9項目全て完璧にできる人は、512/19683、約2.6%の人しかいないという事になります。特に⑧⑨は意識していないとできないでしょうから実際に調査を受けるうち2.6%もこれらの事ができる人はいないのではないでしょうか。せっかくこの記事に偶然出会う事ができた貴方は、少なくともこれらはコンプリートして良い調査官調査を終えてください。

最後に…。
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キャラメルマキアート 写真はトールサイズ

これを著者である私に
「一杯ごちそう」
したと思ってくだされば幸いです。

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それでは長きに分かりお読みいただき、ありがとうございました。

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