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「奇特な病院」ここから突き進む科
※連作短編小説ですが、1話でも完結します。
第21外来:ここから突き進む科(担当医 仲井摩耶)
この科の仕事は、実にシンプルだ。
患者さんの応援隊。
私の頭には、常に「必勝」のはちまきとお祭りの法被。もちろん看護師さんたちにも協力を求めて、看護師さんたちのはちまきには「GO!GO!GO!」の文字。それと法被。
ここの科だけちょっと他の科とは、雰囲気が違っている。
だって患者さんたちの相談も気合も他の科とは違っている。
とにかく突き進むことをテーマにやってくるのだから。
突き進むと決めているのだから、応援するしかないじゃない?と私は、はちまきなどこちらも格好から完璧にしましょうと提案した。
「応援団のように学生服でも着ますか?」
と看護師さんが言い出したけど、
「それは、やりすぎでは」
という声が上がって、学生服は着ないことになったけど、私だけだったら、もしかしたら学生服にOKを出していたかもしれない。
患者さんは、受験を控える人も多い。
「まだ受かるかどうかギリギリなんです」
と相談にこられる。
一通り、思いの丈を語ってもらったあとで、私の決め台詞。
「いけますか?」
と聞く。
「頑張ります」
患者さんが答える。
「ここから突き進みましょう」
その台詞と同時にその場にいる全員の看護師さんが言う。
「GO!GO!GO!」
患者さんは私たちの様子に、一瞬びっくりするけど、大抵軽やかに帰られる。
しかし、この科にいる私を含めて看護師さんたちは、みんな声が大きいので、病室の外にまで響く。
なぜか診察時間と診察室が隣に割り当てられているどこか冷めている科の戸田先生は、私と目が合うと、とても冷めた目でこちらを見ながら、通り過ぎる。
戸田先生とは別に仲が悪いわけではないけども。仲良くなれそうにはない。
こちらが、盛り上げているのを冷たい目で見る人。
きっとなにやってるんだと心の中で笑っているのね。
気にすることはないわ。
もっと楽しくいきましょう。
向けられる冷たい目など気にせず、ここから突き進みましょう。
お大事に。
(第22外来は、他人のせいにしたい科です)
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