![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/139670760/rectangle_large_type_2_af8df8cb719ad24e4fb116d98e525027.jpeg?width=800)
「奇特な病院」他人のせいにしたい科
※連作短編小説ですが、1話でも完結します。
第22外来:他人のせいにしたい科(担当医 新山伸介)
うまくいかない人生の理由を。
失敗した理由を。
失恋した理由を。
今、つまずいた理由を。
胃もたれする理由を。
全部、自分ではなく、他人のせいにしたい!
あぁ、それでいいさ。
それで気持ちがすっとするのならば。
でも、ずっとそのまま他人のせいにして生きていくと、いらいらは、避けられないかもしれませんとお伝えする。
それでも、お金のない理由を他人のせいだと続けて話す人もいる。
根底には、自分は悪くないと。
それが、根底にあり、自分の非を認めると、「存在意義が揺らいでしまう問題」を引き連れてくる場合がある。
他人のせいにすることで、自分が自分であることを守っている。
そうだ、終始自分を責め続けるより、他人のせいにしてしまう方が、健康的な反応かもしれない。すべては自分を守るため。
ずっとあなたが悪いのよと言われ続けたら、もう一つ、ささいなことを自分のせいだと言われたら、死にたくなってくるかもしれない。
それなら、私は悪くない。
私は、何もしていない。
それは、私ではなく、あなたのせいだと。
言い返すぐらい許されていい。
「先生、私が悪いんですか?」
そう質問される患者さんも多い。
「それは、なんとも言えませんが、一つ、僕に言えることがあるならば、誰かのせいだと考えながら生きるより、誰かのおかげでこうしてあなたが今、生きていると考え方を変える方がずっと楽になりますよ」
患者さんは、大抵きょとんとされる。
誰かのせいより、言葉だけでも、誰かのおかげと言い換える。
少し肩の力を抜いて、楽になってくれればいいけど。
他人のせいという言葉に含まれる怒りは、体力を消耗するから。
あなたのおかげで、私は苦労していると胸を張って、嫌味たっぷりに。
あなたのおかげで、私は、生きている。
そう思うことはできますか。
お大事に。
(第23外来は、人の顔色を読んでしまう科です)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?