「奇特な病院2」こんな目にばかり科
※連作短編小説ですが、1話でも完結します。
第32外来:こんな目にばかり科(患者 宮崎佐助)
今回の受診は、二度目となる。
前回の受診で、自分の不幸の話を延々と先生に聞いてもらい、少し肩の荷が下りたような気がしたから、今回またやってきた。
「どうってことないことだ」
そう思って生きる方が楽だと思う。
だけど、ときどき、どうしようもない愚痴が出てしまう。
仕方ないか。
先生は、特にこちらにアドバイスというものをしてくれたとは思わないけど、ただ私の話を聞いてくれた。
時に話せる相手がいるだけで気が楽なものなのだ。やっと見つけた相手だった。
前回は、あまりに愚痴ばかりで申し訳なくなった。
先生にもそれを謝らないといけないと思い、今回はやってきた。
先生は、私の顔を見ると、覚えていてくれたようで、
「遠いのに、よくいらっしゃいました」
と言った。
私は、
「前回の診察が申し訳なく感じて」
と反省を言おうとすると、それを察した先生は言った。
先生は、
「ここは、病院だから、宮崎さんの力になれればいいのです」
と力強く言った。
それからまた前回の診察から今までの苦労話を聞いてもらった。
また申し訳ないと思いながらも、先生と話していると、少しずつ気が楽になっていくのを感じて、また来ようと思った。
「また来てもいいですか」
私は嬉しかったのだ。すると、先生は申し訳なさそうに言った。
「申し訳ないのですが、来月で私は、この病院を辞めるんです」
「どうして?」
「妻の父が経営する病院へ移るのです」
「どうして、どうして、せっかく」
私は、大人げなく、駄々をこねた。いい大人なのに。私の他人に対するこんな反応は初めてだった。
先生は、困ったように私を見た。
「他の先生がこの科は引き継いでくれると思います」
「それじゃ、だめなんです。せっかく先生を見つけたんです。なんで私は、こんな目にばかり合うんですか」
先生は、ずっと困っていた。そして言った。
「お大事に」
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