「奇特な病院2」他人のせいにしたい科
※連作短編小説ですが、1話でも完結します。
第22外来:他人のせいにしたい科(患者 新妻しほ)
事前に、ちゃんとこちらにも連絡が欲しいと、先方にはお伝えしておいた。
なのに、当日になって、
「やっぱりできません」
という連絡が来た。仕事での話。
こんなことは、仕事をしていると日常茶飯事だ。
でも、そんなことじゃ困る。部下に、
「ちゃんと期日までに、この仕事を終わらせてね」
と、くぎを刺しても、
「忘れてました」
と答えが返ってくる。
なんでみんな私はきちんと仕事をしているのに、ちゃんとできないの。
ちゃんとできないんじゃない。やる気がないんだと私は思う。
ストレスは溜まるばかり、なんであっちもこっちも私の言うことをきちんと聞いてくれないのと半べそ状態。ストレスも最高潮に達して、私は、一日だけ休暇を取ることを申し出た。
何をするかというと、新聞広告を見ていて、「他人のせいにしたい科」というのを見つけて、是非話を聞いてもらいたいと思ったので、診察してもらうのだ。
待合室の患者さんは、そんなに多くないけども、みんなどこかいらいらしているように見えた。
診察に入るなり、私は、部下の話、仕事の話、日ごろのストレスの原因になっている他人の愚痴を矢継ぎ早に、ぶちまけた。
「やってられないんです」
「そうですか」
先生は、困っている。それも私にはわかっていた。
でも、ここは、「他人のせいにしたい科」でしょ。
「ここは、他人のせいにしたい科ですよね?」
「そうです。はい」
「私のせいですか?」
「そうではないと思います。はい」
先生は、申し訳なさそうに言った。
「それでも、他人のせいではなく、おかげだと言うことはできませんか?」
「おかげ?なんのおかげだって言うんですか!誰のおかげだって言うんですか!」
私は、何も悪くない先生に最後はキレた。
それから、先生にまで当たり散らして、私は、やっとストレスを発散できた。かなりすっきりした。もう来院しないけど。
先生が終わりに恐る恐る言った。
「お大事に」
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