「奇特な病院2」外面科
※連作短編小説ですが、1話でも完結します。
第34外来:外面科(患者 鳴川里美)
ある日、娘は言った。
「お母さん、病院予約しておいたから」
私は即座に答えた。
「どこも悪いところないわよ」
娘が差し出したチラシを見たら、
「外面科」
と書いてあった。
「何これ?」
「いいから、私が運転して連れて行くから」
私は訳がわからず娘の言うままに、「外面科」を受診することになった。
納得はいっていなかった。
なんだか訳のわからないままに、この病院に連れてこられた。
待合室で娘は、一言もしゃべらない。
名前を呼ばれてると、娘もついてきた。
「あんたも来るの?」
「当然でしょう。お母さん、意味がわかってないでしょ」
「それもそうね」
私は、まだよくわかってなかった。
診察室の扉を開けると、女の先生がにこやかに言った。
「どうされましたか?」
娘は、早口で答えた。
「母の外面についてどうにかしていただきたいんです」
「あんた何言ってるの?」
私は、娘に言い返した。
「だってお母さんは、すぐ他人に気を遣ってるふりをして、セールスに来た人にお茶を出して、商品も勝手に買ってしまうし、すぐ騙されるし、私になんか節約、節約と言うくせに、外面ばかり気にするんです。先生どうにかできませんか?」
私は、きょとんと娘を見つめた。
先生は、娘を見ると、
「娘さんは、お母さまが心配なんですね」
「そうなんです。それに確実に貯金が減っているんです」
「それは、娘さんも心配ですね。ご本人に自覚はありますか?」
「いいえ。私騙されてなんか」
「ご自覚はないんですね。そうですか」
それからも私と娘の骨肉の争いの仲裁をしながら聞いてくれて、先生が私たち2人の顔を交互に見て、最後に言った。
「お大事に」
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