【長編小説】陽炎、稲妻、月の影 #40
第5話 呻く雄風――(10)
私立境山高校が建てられてから、どれくらいの年月が経った頃だろうか。
気がつけば校舎は増え、多発する心霊現象の所為で、校内の複雑化が進んでいた。
その日も俺は、生徒の賑やかな声に耳を傾けていた。
放課後に入り、部活動に勤しむ生徒の声が聞こえてくる。
しかし、その声の中に、聞き慣れない声が混じっていた。
「どこ? どこにいるの?」
それは、幼い女の子が泣きながらに発した声だった。
迷子だろうか。
慌てて気配を探る。
すると、声の主