【長編小説】暮れなずむ秋と孤独な狛犬の歌 #28
10月6日(日)ーー(3)
「腹式呼吸も発声練習も、だいぶ慣れてきたようだな」
「そうかな」
基礎練習を終え、水分補給のために水筒からお茶を注いでいると、そんなことを言われた。
まだ練習を始めて数日しか経っていないから、僕自身の感覚としては曖昧だ。これで慣れてきていると言えるのだろうか、甚だ疑問である。
「うむ、アキは日々成長している」
満足そうに頷き、少女は言う。
「実はこれ、おざなりにしてしまおうとすれば、簡単にできてしまうことだからな。とはいえ、そんなことをして