16本目「ザ・フェイス」【ネタバレなし】


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池袋シネリーブルにて

映画についての基本情報

公式サイト↓

公開日:2024/2/23
監督:バムシー・パイディパッリ(インド、テルグ語)

インド、アーンドラ・プラデーシュ州のバイザーグ。サティヤは恋人のディープティと結婚を考えていたが、地元のギャングのドンであるヴィール・バーイがディープティに目を付け、彼女をつけまわすように。サティヤとディープティは州都ハイダラーバードに逃れようとするが、ヴィール・バーイと手下たちに襲撃され、2人の乗っていたバスが炎上。ディープティは焼死する。顔面に大やけどを負いながらも一命をとりとめたサティヤは、ハイダラーバードで大がかりな整形手術を受け、全く別の顔に生まれ変わる。ラームと名を変えた彼は、ヴィール・バーイへの復讐のためバイザーグへと舞い戻る。

ザ・フェイス : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)

まえがき

私がインド映画を観るようになったキッカケ、それはやはり「RRR」であろう。
昨今あまり観ない愚直なまでにストレートなストーリー、温度が高すぎてともすれば「臭く」なりそうな台詞回し、その臭みを感じさせない演技や画面の熱量。短い3時間であった。

その後、私は配信や劇場でインド映画を観るようになったのだが、その多くはヒンドゥー語映画(ボリウッド)であった。ボリウッドの映画は「RRR」等の属するテルグ語の「トリウッド」に比べ、なんというかハリウッド感が強い。味の濃いハリウッド。それはそれで好きなのだが、時には野趣溢れるテルグ語映画も恋しいのだ。

そんな時、この「ザ・フェイス」の上映を知った。主演は「RRR」のクールな方、ラーム・チャラン。これは観るしかあるまい。

感想など

ところで、皆さんは豚骨ラーメンはお好きだろうか。
知っての通り、豚骨ラーメンという食べ物は作っている時には結構臭い。デキるラーメン屋はその臭みをうまく消して美味い一杯を作り上げるのである。

翻って、この映画は如何だったというと、そうではなかったのである。まずBGM。普通のアクション映画ならクライマックスのシーンでしか使わないようなBGMを立て続けに鳴らし、ギャグシーンはまるで吉本新喜劇の如きベタな音。非常に騒々しい。臭みは消してない。むしろ開き直ってさえいると言えよう。

ストーリー展開も同様で、冒頭に引用したあらすじの様なベタな復讐劇が猛スピードで展開するのだが、ところどころ挟まれるギャグがまた古い(後で知った事だが、本作は10年以上前の作品らしい。当然だ)。

設定も荒唐無稽で、全身70%にやけどを負った筈の主人公はたった数ヶ月で数ひとつないラーム・チャランに転生してたりする。突っ込んだら負けだ。

上映開始1時間くらいの時点では「ああ、これはハズレかな」と思っていたのだ。

ところが、だ。
このクドい味付け、アク抜きの足りない臭みがどうも慣れてくると悪くない。この映画(前半)の本質が「やたらシリアスな設定のギャグ」だと気付くと、身体が慣れてくるのだ。そこからはもう、楽しい。

主人公の行動はシリアスな笑いに満ち溢れている。並のアクション映画なら最後の最後にしか言わないような決め台詞を4人の仇にわざわざ言ってあげたりする。その人、多分そのセリフに心当たりないよ……。
劇中のダンスシーンもベタベタで、⇩みたいなものすんごい歌詞が飛び交うのだ。

女性:「私はスマホ 触って」
        「愛のwifi 繋いで」
男性:「君の電波はノー・シグナルさ」

こんな具合である。
アクのめちゃ強い豚骨スープをとことん煮詰めて、さらにニンニクやニラをドカドカぶち込んだのになぜか美味い、本作はそんな趣の映画であった。

ここまで述べたのは概ね前半の感想である。
冒頭に引用したあらすじであるが、あれは本作の半分しか表現していない。後半部では、全く予想外の角度から別のストーリーが展開されるのだ。

ネタバレ回避の為に詳細は避けるが、前半のギャグっぷりは形を潜め、めちゃくちゃシリアスでメッセージの強いストーリーが展開される。

ラーメン屋にはよく半分のラーメンと半分のチャーハンをセットにした「半チャンセット」というお得メニューがあるが、本作はそれとは似て非なる様相を呈する。前半が極濃のラーメンであったように、後半のチャーハンも結構胃にたまるボリュームだ。どちらも並の映画1本分以上の重さはある。「半チャンセット」とは言えない。敢えて言うなら「全チャンセット」かな

劇場を出る頃には相当に胃もたれしてるであろう。
娯楽に対して懐が大きい皆さんにとっては、お得かもしれない。
疲れてるときには重いかも。

ペーパーお薦め度

★4。
前半のベタベタや、全体的にお約束感の強いストーリーが嫌いでなければ、かなりの満足感を味わえるであろう。

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