はじめてのプロダクトオーナーが心にとめるべきたった一つのこと

 先日、「はじめてのアジャイル開発で、はじめてのプロダクトオーナーをつとめる」という方々と立て続けに仕事をすることがあった。DXの文脈ではこうした状況に直面するのは珍しいことではない。そもそも組織としてはじめてアジャイル開発の取り組むのだから、プロダクトオーナーなんて役割も誰が担ってもはじめてになる。

 はじめてのプロダクトオーナーに伝えたいことを、絞りに絞って整理した。書籍「正しいものを正しくつくる」の4章で書いたとおり、プロダクトオーナーに求められることは数多くある。すべてを一度に整えるのは、相当に困難である。いわんや、エンジニアリング知識が無い人が臨むにあたっては尚更のこと。

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 この中で、プロダクトオーナーが持つべき原則というのをまとめた。

・決める→会話する→確認する→フィードバック
・アリの目、トリの目
・現実に計画をあわせる
・現物を確認する
・経験主義
・目的から始める
・疑問をそのままにしない
・協働を意識する
・何を作るべきかのリード役
・チームの外側を引き受ける
・アウトプットは手段、アウトカムが目的

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 絞っても11原則。これだけでも、心がけて取り組んでいるのはやさしいことではない。だから、すべてを説明するものの、最後に必ず一つ念押しをするようにしている。このうち、いや、この話で、これだけは覚えておいてほしいことを1つだけあげるとすると「疑問をそのままにしない」なのだ。これだけは心に留めてもらうように伝える。

 はじめてのアジャイルで、はじめてのプロダクトオーナーを務めると何が起こるか? 数多くの疑問が去来することになる。これで良いのだっけ、これは何のためにやっているのか、ここでどういう振る舞いをすればいいのか、これまでの開発と違うけど大丈夫? これって間に合うの?...

 こうした疑問が、プロダクトオーナーの胸の内だけで閉じ込められていると、周囲のチーム、関係者が気づくことができない。そうなると、問題(期待のすれ違い)の発見が遅れ、手遅れになることも珍しいことではない。プロダクトオーナーとは、それだけプロダクト作りを左右する役割なのだ。

 だから、プロダクトオーナーが「疑問を口にする」ことがプロジェクトやチームを救うといっても過言ではない。ごく基本的なことと感じるかもしれないが、意外と、チーム活動をいちいち止めないために、あるいは自分以外の誰かを信じ込んで(「なんせ私ははじめてなのだ」)やりすごしてしまっていることが少なくない。

 こんなこと聞いてしまってもいいのか...と逡巡されるかもしれない。大丈夫、案外みんながみんな分かっているわけではない。ちょっと良いですか? その一言をみんなが実は待っているかもしれない。

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