アジャイルによって、アジャイルな組織になる

 どのようにして組織のあり方を変えていくか? 大きすぎるテーマだが多くの伝統的な組織がDXの名の下に一様に取り組んでいる。いくつかの業界と企業を越えて、その試みに伴走していると実に様々な洞察が得られる。複数の組織の営みを俯瞰することで得られる共通と差分。その中の一つには、どのような「突破口」を作るかという観点がある。

 どのような立ち上げをどんな組織あるいはチームで行うのか。そしてどのようにその活動を組織内で広げていくのか。目指すところも、出発地点の状態も組織によって様々だ。つまりは、組織の数だけ "DX"、組織変革のジャーニーがあるということだ。そうした多様性の中で、一つ得られている仮説がある。

 それは、いかに「芯」を作るかということ。芯とは、探索と適応の発生となる「源」のことだ。これまで踏み込んだことがない領域ににじり寄り、立ち入り、そこでしか得られぬ学びを刈り取っていく。そして、積み重ねていく実践知に基づき、次なる方向性を決めていく。探索から適応、そして探索へ。
 この動きを半年ではなく、3ヶ月。いや、3ヶ月ではまだ長い。3ヶ月から1ヶ月へ。もっというと2週間、1週間。探索適応の「渦」を作り上げることが礎にあたり、同時にすべてとなる。

 最初は一つのチームから。やがて、チームを越えてまとまった組織として。そして、その先には組織全体への影響を生み出していく。変革のスケールを広げていく最中においても、軸となるのは探索適応の「渦」が確かに存在するかどうかだ。チームの単位で、部署部門の単位で、よりハイレベルな組織戦略の単位で。フラクタルな渦を組織の中に作る。目指したい状態のイメージはついてきている。

 問題はそこに辿り着くのに、人の手と精神がついていけるかだ。障壁はいくつも考えられる。むしろ、何一つ手にするものが無いところから、この旅を始めることが多い。
 最初の一つのチーム? いったいどこにそのチームを作るというのか。今ある目の前の仕事にどうやって渦なるものを作り出すのか。探索も適応も何一つ経験が無いところで。
 チームを越えて部署、部門で取り組む? いったいマネージャーにどんな説得をしかければ良いというのか。よしんば合意が得られたとして、部門単位でいかにして探索と適応を行うのか。
 組織全体に働きかける? いったい経営にどうやって理解してもらうのか。どんな組織が変革のミッションを背負って、どう動き始めれば良いのか。

 あまりにも様々な壁にぶつかるので、一つのフレーズに逃げ込みたくなる。「経営のコミットがなければDX、組織変革なんて進まない」と。それは然り、というか経営の理解関与を得ることは前提であるがそれだけで十分とは言えない。
 経営が「ややあいまいではあるが良さそうなこと」をいくらか口にした程度で、数々の壁が取り払われ、"海割り" のように道が見出されるようなことはありえない。あるいは誰もがひれ伏す "印籠" にもなりえない。
 例えば、自社の中期経営計画に、一行「アジャイル」がどこかに追加されたとして。それを手がかりに目の前の仕事をなにかしら変えていこうという自発的な動きが生まれるだろうか(そもそも中期経営計画に目を通しているかどうか)。
 あくまで道を切り開くには地道な漸進が求められる。というのも「組織を変える」という文脈で私達が向き合うのは「人」そのものだからだ。「人を動かす」ことこそもっとも難しく、思うようにはいかない。人は、良いも悪いもなく、もっとも不確実性の高い存在と言える。

 どのように向き合えば良いか、確たる方策が見えていない。この状況は、新しいプロダクトや事業を作るときと似ている。つまり、プロダクト作りに仮説検証が不可欠なように、組織変革に挑むにあたっても同じことが言える。現代組織が探索適応の動きが取れる組織へと至る、その過程にこそ探索と適応で臨む必要があるということだ(「アジャイルによってアジャイルな組織になる」)。

 さて、まずは組織変革の最初の仮説を立てることから始めることにしようか。

以下は、参考ガイド。
仮説を立てるためには?

組織に芯を作るためには?

「組織を変える」旅の歩き方は?

そして、一人から始めるためには。


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