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DX白書2021を読むべし。

 10月11日、IPAからDXのドキュメント発刊された。DX白書2021という。

 実に350ページを越える大部となっている。相当な厚みだが、くじけずに目を通せば何かしらの示唆が得られる内容になっているので、一読をおすすめしたい。というか、DXに関わる者にとっては必読もいいところ。これを無償で配布するのだから、IPA恐るべし。

 まず目次に目を通そう。4部構成になっている。

第1部 総論
第2部 DX戦略の策定と推進
第3部 デジタル時代の人材
第4部 DXを支える手法と技術

 総論の第1部と、具体としての第2部をあわせると100ページほどで、ここは必ず読んでおきたいところ。第3部は人材育成、第4部はDXのコアとなる技術に関する記述なので、関係が深い人はやはり読んでおきたい。

 この白書の白眉なところは、徹底した「日米比較」を行っているところである。数多くの観点について、徹頭徹尾日本と米国での比較を示している。これが非常に分かりやすく、いかに日本のDXが水をあけられているか、これでもかというくらいはっきりと突きつけられるのである。

 最初の十数ページで出てくる「アジャイルの原則とアプローチ」に関する状況から早速学びを得られる。

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 (DX白書2021 P6より)

 アジャイルの原則とアプローチをどこまで組織のガバナンスに取り入れているかの日米比較である。IT部門でさえ未だに大きな開きがあることに少々息を飲んだが、それ以上に米国でのIT部門以外への浸透の広がりに驚いた。

 どのような仕事にどのように適用しているかまでは分からない。しかし、DXを推進していく上で、組織へのアジャイル適用は「山場中の山場」と捉えているものだから、やっぱりそうかと腹落ち感が強い。組織自体がアジャイルになっていくための取り組みがこれからの勝負所となるはずだ。

 この図表が380ページの実に冒頭に出てくるあたり意図的なものを感じたので、巻頭言を読み直したら羽生田さんだったので、僭越ながら思わず賛辞を送らせて頂いた次第だ。

 ということで否応がなしに高まるテンションで読み進めていくと、いくつも発見が得られる。例えば、図表12-5の「評価や見直しの頻度」。これも実に良いですね。

 「顧客体験価値(CX)の向上推進」「従業員体験価値(EX)の向上推進」「戦略推進チームの構成およびスキル」といった重要観点について、どのくらいの見直しを行うか。「毎週」「毎月」「四半期」「半期」「1年」という頻度で問うたときの、やはり日米の圧倒的な差。

 日本の特徴もよく出ている。日本は、半期か1年が大半。米国は四半期はもちろん、毎月がボリュームゾーンで、毎週やるという声もかなり多い。毎週ですよ、毎週。週次でCXやEXの見直し、つまり状況の検査と適応を行っている組織にそれは勝てませんよ。

 図表14-1「ビジネスニーズに対応するためにITシステムに求められる機能(達成度)」も、図表14-2「開発手法の活用状況」も、そのヤバさをひしひしと感じる。20年もこの仕事をしているが、俺のやってきたことは何かしら寄与できているところが本当にあるのか? とさえ思えてくる。

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 (DX白書2021 P13より)

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 (DX白書2021 P14より)

 最後に図表24-5「組織の壁を越えた協力・協業」に触れておきたい。この観点でも日米の差は大きい。日本が40%程度の出来ているに対して、米国は80%を越える。組織の壁を超えて、協働していくこと。この観点が、日本でDXに取り組むにあたっての大きな課題となってしまう。10年以上も「越境」を説いてきたが、その必要性はこれからも続いていくことになりそうだ。

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