刑務所の冬。

寒さも日に日に厳しくなり、各地の大雪がニュースになっている今日この頃。去年は塀の中で着てたヒートテックを引っ張り出すと思い出す。

自分が入ってたのは九州の刑務所だったので、北の方や山陰に比べたら、寒さなんて甘っちょろいのかもしれない。去年は雪も降らなかったし、マイナス気温も数日くらいか。しかし、あたりまえだが暖かい家電に囲まれた家のようには過ごせない刑務所の冬。網戸越しの夜の匂いを吸い込みながら振り返る。

刑務所の冬コーデ

まず、冬寒いからと言っても普段着は定番のエルメスグリーンのセットアップのまま、春秋と同じペラペラシャツ。それにプラスで中着(中に着る襟なしのシャツ、しん着)とチョッキ(伸縮性のあるペラいベスト)、少し厚めの靴下などが、冬処遇と言って、いわば寒い時期の冬コーデとなる。着なくても別に良い。それからアクセがあって、手先が凍えるので軍手、ミミが寒いので耳あて、ホッカイロやマスクなど、これらはレベルが上がると自費で購入できるが、例外もあり。場所にもよる。

そして、冬に1番大切なメリヤス

メリヤスって、刑務所スラングだろってぐらい刑務所でしか使わない品名だと思う。よくあるおじいちゃんとかが下着に着てるモモヒキ上下セットだ。綿素材で少し厚くて暖かい。このメリヤスが寒さ対策には必需品で、官物(刑務所備品)のレンタルは出来るが、長い人は自分専用に何セットかあると重宝すること間違い無し。

近年ではヒートテックが欠かせない存在となり、毎年の刑務所トレンドとなっている。ヒートテックの中でも"極暖"などの厚い生地のものはダメなので注意。普通のヒートテックを上下何セットか用意しよう。色は白、黒が無難。

ヒートテックを最大限に活用する為のポイントとして、ヒートテック(上)をメリヤスではなく肌着(下着)として私物登録する事だ。これが1番暖かく、着心地も良かった。ヒートテック(下)はメリヤスとして使うか、ヒートテックでなく分厚いメリヤスの方が暖かいかもしれない。しかし着心地はヒートテックに勝てない。ヒートテックシャツは多めに準備しよう。

ヒートテック→メリヤス→チョッキ→中着→官着 このコーデで冬を乗り切る。靴下も冬仕様のものを拘置所にいる時点で揃えておこう。

工場(仕事場)によっても違ってくるが、外での作業が多いとこなんかはキツい。雨降ったら濡れるし、寒さが容赦なく襲ってくる。

薄いくせに重い毛布

冬処遇時期になれば、布団も追加される。普段は一枚の毛布が、もう一枚。ザラザラしてて肌触りは最悪。毛布というか、絨毯みたいな、、うーん、引っ越しの際に養生で使われるような毛布、あれに似ている、、笑 無いよりはマシだが、二枚の毛布と掛布団をかぶると、かなり重い。。寝返りうつのもツラいし、いつも朝腰が痛かった。毛布は膝掛けとして、座って書き物をする時なども使える。しかし、使い方に決まりがあって、膝に掛けるのみで、腰に巻きつけるなどしてはいけない。座っていると腰が寒いので、どーしても巻きたくなる。。

人の暖かさ

雑居部屋、独居部屋によっても環境が変わる。雑居だと4人とか6人とか。同じ室内に人数いると室温が高くなる。お陰で窓の結露もすごいが。。 独居はやっぱり寒い。どんな嫌なヤツでも暖かさにはなる。

仮就寝が早い

仮就寝とは、布団を敷いていいですよ〜の合図。夏場は19:00からしか敷けないが、冬場は18:00から。寝転がって本も読めるしテレビも見れる。年末年始の祝日や免業日(仕事休みの日)なんかゴロゴロして飯食って、お菓子食って寝るだけで1日が終わる。この時期、雑誌や本、手紙の差し入れが沢山あると、少しハイな気分になれるので差し入れ待ってます。

冷たいごはん

これは場所によりけりかもしれないが、おかずと汁は冷めている。麦飯はギリあったかい。   カレーのときはマシだったけど、アツアツはまず無い。1日3回ヤカンに貰えるお茶は熱いので、それが唯一の救い。

自分は暑いよりは寒い方が好きだったのと、装備もバッチリで入ったので、そこまで苦痛は感じなかったけど、やはり寒い地域に行かれた方々の辛さはハンパじゃないと思います。お疲れ様です。拘置所で未決2週間の時に一緒になった、1番席の服部さん、色々教えてくれて有難うございました。

年末〜正月

クリスマスにはケーキ出ます。笑       刑務所も正月は仕事が休み。仕事納めが29日かな?それから5日くらいは連休となる。土日挟めばもっと休みも長くなる。お菓子が連日で食えて、大晦日には普段の21時就寝が24時まで延長され、テレビも見れる1年に1度の大祭だ。元旦には普段のメニューにプラスで、おせち弁当が出る。普通に豪華なおせちで、お菓子も食ってるし腹パンパンになる。この時ばかりは、罪を償う人間が、こんな待遇を受けて良いのかと考えてしまうが、、税金使われてるし。

中に居るとき、いつも開かない網戸越しに鼻を近づけ、夜の匂いを嗅いでいた。向かいの棟の住人たちが、それぞれの余暇時間を過ごしている。冷たい空気が、気持ちを落ち着かせてくれていた。

どこもまだまだ冬はこれから。今年は寒いらしーから。

久々の記事でしたが、またボチボチやります。 出てから半年、あっという間だった。     皆様よいお年を。



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