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音は身体を通ってやってくる

以前から体調が悪くなるのは喉からやってくる。今回も喉からやってきた。朝の寝覚めに喉に違和感を覚え、日中に喉がざらつき、鼻の奥の方で「前兆」めいたものを感じるのが常だ。その悪いサインが数日続くと、あとは熱が出てきたり寒気を感じたり、いわゆる風邪の症状。

っていうのを経験的に知っているのに、陽気も寒くなってるのに習慣のままに酒とか飲み、わかっちゃいるのに止まってくれない身体の行方コントロール効かない、あれよあれよと「休め」のサインにしばらく寝込んでしまった。寝込んだおかげで良くなった。

今は便利なもんで、仕事もスマホでメールのやりとりをすることで致命的な滞りにはならずに保留状態で進められる。お願いするものはお願いして、どうにかなりそうなものは目途を立てておいて、おかげで寝込んでも仕事。いいのか悪いのか。大汗かいて熱も引き、喉の痛みも引いた。

ボーカリストとしては致命的だよね、って言ったら妻ははははとカラ笑いした。

数年前の四谷ライブの時も高熱で危うく皆に迷惑をかけるところだった。それも喉からやってきた。溶連菌にかかってその月は3度も高熱を出した。

寝込んでいると元気な身体を思い出す。さすがに子供のように全自由的な身体はもう戻ってこないだろうが、どこまででも手足が伸び、どこかへと身体がいってしまいそうな躍動を記憶は覚えている。無闇矢鱈でべらぼうに無駄が多く、立ったりしゃがんだり走ったり飛んだりを繰り返していたはずだ、っていうのを子供が集まったりすると目の前でまさにやっていて思い出す。そして羨ましくなったりする。


「こうしたい」という希望に向かう音。「こうである」という現在の状態を表す音/やれないことは増えたがやれることも増えた。「父である」からこそ生まれてくる音がある/よーいどん!って言ったら駆け出す。よーいどん!って言われたら駆け出したい/60歳になって初めて身体から出てくる音がある。60歳になったら娘が結婚とかしちゃって、結婚式でパパバンドやって泣いちゃったりするのを想像するだけで変な心地になるけど、娘の立場だったら「なにやってんの」とか、そんな言われようのないようにまだまだ「今だからできる/今しかできない」音は身体を通ってやってくる。

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