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残留をかけた一戦:鹿児島ユナイテッドFC vs ロアッソ熊本: J2第31節

鹿児島ユナイテッドの課題と熊本の圧倒的ポゼッション

明治安田J2リーグ第31節、鹿児島ユナイテッドFCとロアッソ熊本の試合は、鹿児島にとって極めて重要な試合でした。この試合前、残留圏まで勝ち点差7である鹿児島にとって、直接のライバル熊本との対戦は、勝てば勝ち点差4に縮められる一方、敗れれば勝ち点差が10に広がり、シーズンの残り試合数を考えれば致命的な結果となる可能性がありました。

鹿児島ユナイテッドFC対ロアッソ熊本 スターティングメンバー

試合前のスタメン変更と両チームの戦術

鹿児島は前節から4人のスタメンを変更。星、藤村、武、鈴木選手が外れ、新たに外山、田中、中原、チャーリー選手がスタメン入りしました。この変更が試合の流れにどのような影響を与えるのか、注目されました。

試合のポイントは、ボールを保持する熊本に対して、鹿児島がどのような戦術で対応するかにありました。

4分 鹿児島のカウンターの場面。田中選手がドリブルでボールを持ち上がっていて、右サイドをチャーリーが駆け上がっている。左サイドに中原選手がいるが、彼は前のスペースには上がらなかった。もし彼が左サイドを駈上っていれば3対2の数的有利な状況になった。ただ彼はカウンターで前のスペースに上がるタイプの選手ではないので仕方ない部分ではある

序盤の鹿児島はツートップを活かし、ロングボールを使った攻撃を試みます。FWがヘディングでそらし、もう一人のFWが裏を狙う形でチャンスを作る場面もありましたが、得点にはつながらず。

一方、熊本はいつものポゼッションスタイルを展開し、徐々にボールを前進させる戦術を貫きました。熊本は、鹿児島の中途半端な前プレスによってできたDFとMF間の大きなスペースに、縦パスを頻繁に通して鹿児島ゴールに迫る場面が多く見られました。特に鹿児島の高いDFライン裏へのパスは、熊本が前線にスピードのある大本、唐山両選手を配置していたことで効果的に機能しました。

37分 熊本の先制点の場面。DFライン裏へ浮き球のパスを出されているが、DFラインを下げられなくて、簡単に裏に取られている。ただパス自体は素晴らしく泉森選手が高いポジションを取っていても防げなかったかもしれない

鹿児島の守備と熊本の攻撃

熊本の攻撃は、練習から徹底されていると思われ、後から選手がどんどんボールを追い越していきます。これによりパスコースが複数生まれ、鹿児島は相手の動きを予測しづらくなっていました。

さらに、熊本の縦パスを受ける選手に対して鹿児島が強度の高い守備を仕掛けられなかった点も課題として挙げられます。熊本が鹿児島の縦パスに対してファウル覚悟の強い守備をしていたのに対し、鹿児島の守備は緩く、簡単にポストプレーを許してしまう場面が目立ちました。

また鹿児島はDFが高いポジションを取るのはいいのですが、その高いDFライン裏を熊本に狙われていて、これに全く対応ができていませんでした。本来、ボールホルダーにプレスが掛かっていないときには、DFラインを下げなければならないのですが、それができずに簡単にDFライン裏に侵入されてピンチを招いていました。先制点もその形から失いました。

鹿児島のカウンター攻撃の欠如も問題です。守備に重きを置きすぎた結果、前線に人数が足りず、カウンターを仕掛けられる状況がほとんどありませんでした。加えて、カウンター向きの選手も少なく、攻撃に連動した動きが乏しいため、熊本の守備網を突破する術が見当たらなかったのです。

51分 熊本の決定的な場面。ここでもDFライン裏へ簡単にパスを出されていて、シュートされる。ただここでも泉森選手のスーパーセーブで失点を防ぐ

試合の決定的なポイントと守備戦術の欠如

先制点を奪われた場面では、泉森選手のポジショニングがもう少し高ければ防げたかもしれません。鹿児島の高いDFラインに対して、GKも高いポジションを取ることが求められますが、その調整が足りなかった可能性があります。

とはいえこの日の泉森選手は、セーブで大活躍でした。彼がいなければ0-5で負けていてもおかしくはなかったでしょう。彼の能力の高さをまざまざと見せつけてくれました。

序盤に泉森選手からのロングボールでチャンスが二度ありましたが、決めきれなかった点も大きな分岐点となりました。

鹿児島の守備戦術には不安が残りました。特に、前線からのプレスが機能していない点が顕著でした。プレスが曖昧で、方向性が決まっていないため、最終ラインが押し上げられず、ライン間に大きなスペースが生まれてしまいました。また上記の理由で、パスコースが予想できず、ボールが出た後に追いかける形になり、ボールを奪い切れない場面が続きました。

52分 鹿児島の決定的な場面。田中選手がフリーでボールを持ち、熊本のDFライン裏へアウトサイドのパスを出している。そこへ有田稜選手が走り込んで、GKをかわす見事な浮き球のシュートを打つが、カバーした熊本のDFにクリアされる。基本通りの動きではあるのだが、こちらも見事なプレーでした

田中選手が前にプレスに行く際、熊本のウイングバックにフリーでボールを持たれ、渡邉選手と1対2の状況を作られる場面も多く見られました。プレスに行くならもっと強く速く仕掛け、前にパスを出させないようにする必要がありました。

57分 熊本の追加点の場面。MFのラインが一列になっていて、このパスコースを防げていない。
ワンタッチで前を向かれて、ドリブルを仕掛けられて、しかも2対1の数的不利な状況なので、岡本選手はボールにアタックできなくて固定されている
山口選手がボールホルダーを倒すが、そのボールが熊本の選手にこぼれる。この時、サイドでは外山選手が1対2の数的不利な状況でシュートコースを防げていない。ただ外山選手が中を守ると、外にパスを出されるので判断が難しい。この場面、井林選手が中に絞ってこなくてはいけない。ただシュート自体は見事なゴラッソで、泉森選手はノーチャンスでした

もっともこれも田中選手だけが悪いというわけではないし、高いDFラインの裏を守れていないのも、選手だけが悪いわけではありません。きちんと戦術を徹底できていない指導者の課題だと思っています。

鹿児島ユナイテッドFCには、戦術的な一貫性と守備強度の向上が急務です。熊本のポゼッションスタイルに対抗するためには、より高い守備の強度でボールを奪取し、カウンターを狙う戦術が必要でした。

73分 熊本の攻撃の場面。ここもボールホルダーにプレスが掛かっていないのに、DFラインを下げずに簡単に裏を取られている。しかも井林選手はマークする相手を自分の背中側に置くという致命的なミスもしている。オフサイドにしようとしたのかもだが、他の二人はラインを上げる素振りもない

また、選手起用の面でも、チーム内のバランスを取ることが重要であり、結果が伴わない状況が続けば、チーム全体に悪影響を及ぼしかねません。次節に向けて、チームの戦術を再構築し、残留争いを勝ち抜くための明確なビジョンが求められます。

次の試合も残留争いの直接のライバル、栃木戦になります。負けられない戦いが続きます。

We are challengers!
チェストー!鹿児島ユナイテッド!

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