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また苦しい山を超えた鹿児島、でも苦しい戦いは続く 第23節 沼津対鹿児島

鹿児島県民160万人の鹿児島ユナイテッドサポーターの皆さん、こんにちは仙太郎です。先週は4失点で破れた鹿児島なので、連敗は避けなければなりません。しかし試合展開は今シーズン最も悪い内容でした。苦しい戦いが続いたアウェー沼津戦を振り返りましょう。

スタメンは米澤選手が先発に戻ってきて、右に五領、FWに有田。前線にはいつものメンバーが戻ってきました。しかし中盤はいつもの中原、ロメロ・フランク選手がベンチ外、木村選手が出場停止と一人も出場できません。そして若手の圓道、野嶽、渡邉選手の三人が初の組み合わせで先発します。

DFは左SBが砂森選手でベンチに薩川選手、CBは井原選手が先発で、広瀬選手と右SBの星選手は鉄板です。

鹿児島の先発メンバー。2試合連続で失点に絡んだ小野寺選手はベンチ外。プロとはいえなかなか厳しい状況ですが、必ずもう一度小野寺選手の力が必要な時が来ると思いますので、これにめげずに頑張っていただきたいと思います

試合開始直後から鹿児島がボールを前に運べません。いつものようにCBからショートパスでボールを前進させようとするのですが、沼津が前からプレスを掛けてくるので、ボールを奪われてカウンターを受けます。ただ先週の試合と違い、沼津は鹿児島ゴールに近づいても、そこからの崩しのアイディア不足で完全に崩せずミドルシュート中心なのと、枠を外してくれたので助かりました。時々、ブラウンノア選手が単独で局面を打開しようとしますが、単独だったので鹿児島も対応できていました。右サイド(鹿児島の左サイド)で1対1になる場面もあったのですが突破されることもなく、沼津の攻撃も行き詰まります。

圓道、野嶽、渡邉選手は一人ひとりはうまいのですが、急造なのでコンビネーションが合わなくて苦しみます。圓道選手は以前は素晴らしいプレーを連発していたのですが、この日は見せ場が作れず前半だけで交代してしまいました。

日本の場合、チーム戦術よりも個人間のコンビネーションでプレーする場合が多く、選手が変わるとそれまでのプレーができなくなる傾向があります。なので今回は中盤の選手が総入れ替えだったので、かなり厳しかったと思います。試合を経験すればよくはなってくるとは思いますが、昇格争いをしている現在、そんな悠長なことを言ってられません。

3人とも若くて経験不足なので、相手の戦術で苦しんだ場合、それに対応することが難しかったですね。少しプレーが単調で相手からしたら次のプレーが予想しやすくプレスを掛けやすい。

例えば木村選手は長短のパスを繰り出すことでスペースを管理し相手のプレスを無効化しますし、中原選手の場合はワンタッチパスで攻撃を加速させ、相手から守備をする時間を奪い、プレスを無効化します。ロメロ・フランク選手はボールキープ力で時間を稼ぎ相手を自分に引きつけて、味方にスペースを提供すると同時に、味方が適切なポジションに付く時間を提供してボールを前進させます。

そしてこの三人は共通してボールキープ力がとても高く、相手の逆を取る動きが得意なので、プレスを無効化することができます。すると相手もなかなか強くプレスに行きづらいですよね。ロメロ・フランク選手のボディフェイクなんて、惚れ惚れします。相手からしたら頭に来るでしょうけどねww

渡邉選手が降りてきて3人でビルドアップする場面。渡邉選手(3人の真ん中)のポジショニングが近すぎるので相手FWからプレスを受けてボールが前進しない。本来もう数歩後ろ(赤点線丸)にポジショニングをして相手ツートップ間をパスで通過(赤点線矢印)させたい。もしツートップがこのゲートを閉じれば、手前にいる広瀬選手(できれば広瀬選手ももう少し後ろでボールを受けられればベター)がフリーでボールを運べる。

鹿児島がDFラインで横パスを回していれば、沼津は中盤の選手が前にプレスを掛けてくるので厳しくなってきます。

沼津は鹿児島のMFが下がってくれば、全力で前プレスに来るので前を向けません。そしてボールを後ろに下げて、またプレスを掛けられるという悪循環です。
沼津は4−4−2でブロックを作ってゾーンで守っていて、中央エリアのスペースを消しながら守っていました。鹿児島の広瀬選手が縦パスを入れるとそれを何回もインターセプトしていました。

ただ鹿児島の選手が下がってくるとマンツーマンでついてき厳しいプレスを掛けてミスを誘っていました。これに鹿児島はかなり苦しむことになります。

これは鹿児島がもっとも苦手とする戦術です。その分、サイドの米澤選手と五領選手が空き、そこにロングパスを出せれば一気にボールは前進していました。前半もロングパスでボールを前進する場面もあったのですが、この日は前線のコンビネーションもよくありませんでした。

前半、沼津陣内の右サイドでボールを保持する鹿児島。狭いスペースで4対4なので、ここから崩すのは難しい。できれば逆サイドに展開して米澤選手がシュートするのが理想的

特に左サイドの米澤選手と砂森選手はほとんど絡むことがなく、米澤選手が単独でフィニッシュにまで行きますが、沼津も寄せてくるのでいい形ではシュートができません。

後半最初から圓道選手に変えて、木出選手を投入し右サイドに配置し、五領選手をトップ下に配置しますが、前半以上に苦しみます。後半はロングボール入れても米澤選手には繋がりませんが、相手のクリアボールを拾えていたので、ボールを前進することもできていましたが、鹿児島も最後の崩しのコンビネーションがなく、米澤選手が個人で突破してシュートの場面が多く、崩す場面はほとんでありませんでした。

鹿児島のビルドアップのシーン。星選手が下がってきてボールを受けて前を向いているが、讃岐の選手が急速なプレスを掛けて星選手から時間を奪っている。渡邉選手が近づいてきたことにより、その前に大きなスペースがある。ここに圓道選手がおりてくるが
星選手はスペースに降りてきた(多分)圓道選手にパスするもマンツーマンでマークされてボールロストしてカウンターされた場面。まさに沼津の守備戦術にハマってしまった。星選手は厳しいプレスを受けていたので圓道選手にマークがついてることを認識できいなかったと思われる。本来、赤点線丸の位置に野嶽選手がいればボールをフリーで受けられるし、圓道選手のパスの逃げ口にもなる。もし野嶽選手がプレスを受けても井原選手に落として、サイドからボールは前進できる

正直、鹿児島に点が入る気配すらありませんでした。これは0−0の引き分けでも仕方ないなと諦めかけていた後半72分、満を持して薩川選手を投入します。そして薩川選手のCKから後半76分に先制点が生まれます。

FKから得たCKを薩川選手が蹴ります。薩川選手の素晴らしいボールに対して、広瀬選手が前回の今治戦同様、ファーに逃げながら折返し(多分広瀬選手は自分でシュートしようとしたボールが結果的にパスになったように見えます)、それを木出選手が押し込んで待望の待望の先制点です。

ファーに逃げる広瀬選手をマークする沼津の選手はボールを見て広瀬選手を見えていない。広瀬選手はマークを外した状態。

20節の松本山雅戦でもチームを救う決勝点を決めた木出選手が、また苦しい試合でもクラブを救う決勝ゴールを決めくれました。今回も決めた本人が一番驚いてる感じでしたね。木出選手は今年のラッキーボーイになるかもしれません。

ライブで見ていると木出選手のポジションはオフサイドぽかったですが、この写真見ると結構微妙な感じなので、審判のミスジャッジとまでは言えないかと思います。

広瀬選手がパスをした瞬間、黄色矢印の沼津の選手がオフサイドラインと思われるが、他の選手の影になっていてオフサイドかどうか正直わからない

そして得点後、全員の守備意識が高まり4−4−2になり前プレ掛けて相手のミスを誘います。これは見事でしたね。選手全員の意識が1点を守り切る意識に統一されたので、ボールを奪っても無理につなごうとせず、安全なプレー選択をします。そうなると自分たちで崩す形のない沼津は攻撃が行き詰まってしまいます。

そして試合終了間際に米澤選手が時間稼ぎと審判への暴言?で2枚のイエローカードを立て続けにもらい、レッドカードで退場。次節は出場停止となりました。米澤選手のレッドカードという代償を伴いましたが、勝ち点3には代えられません。

他のクラブを見ても、いわきは83分に決勝点、藤枝は讃岐と引き分け。松本山雅はなんと90分に決勝点でギリギリの勝利。今治は北九州相手に79分に決勝点を取られて敗戦。
と苦戦しているのは鹿児島だけではありません。

下位だからといって安心できないJ3は恐ろしい。逆に下位クラブは守ってカウンターと戦術を明確にできるので、やりやすい面もあります。下位のクラブは引き分けでもいいので、0−0で焦るのは上位クラブですしね。

沼津戦のスタッツ。CKを10も与えているのが、苦しかった試合を象徴しています

9月は鹿児島は下位クラブとの試合多く組まれています。しかし対戦相手が下位だからといって安心はできないのは、この試合でも証明されています。ただこの9月を勝てるかどうかが、10月以降の優勝争い、昇格争いに決定的な意味があります。とはいえ目の前の一試合を集中して戦うしかないんですけどね。

それでは来週は讃岐戦でお会いしましょう。
「チェストー!鹿児島ユナイテッド!」

PS
普段は数字は見ないのですが、この試合は面白いスタッツがあったので掲載しておきます。

この数字はシュートの数ではなく、シュート質(ゴールになる確率)を計算した値になります。鹿児島のゴール期待値が得点するまでは低空飛行で、得点したときに急激に上昇して、その後は全く変動なしというのがわかります。沼津の方も前半は上昇していますが、後半になるとほとんど上がっておらず、失点したあとは鹿児島と同じく増えていません。これらは試合を見ていた実感と合っていますね。
どの選手間同士が、どの程度パスを成功させたかを示すのがこちらの図になります。驚くことに野嶽、圓道選手はほとんどパスに絡んでいないことがわかります。これも試合を見た実感と同じですね。しかしこれではボールが前進しないわけですね。

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