数的不利でも連敗ストップ、残る戦術的課題:第33節 鹿児島ユナイテッドFC対水戸ホーリーホック
鹿児島県民160万人の鹿児島ユナイテッドサポーターの皆さん、こんにちは、仙太郎です。
8連敗中の鹿児島ユナイテッドFCですが、前節栃木SC戦では一筋の希望が見えてきました。そしてホーム白波での水戸ホーリーホックとの試合を振り返ります。
鹿児島ユナイテッドFCの前節、栃木戦からのスタメン変更は1人。岡本選手がイエローカード累積で出場できないので、代わりに戸根選手が入りました。最近はスタメンが大きく変わる試合が続いていたのですが、今回大きな変更がなかったことからもわかるように、鹿児島は前節の栃木戦でのパフォーマンスを維持しようとしていたと思います。
前半戦の戦術的展開
鹿児島ユナイテッドは、序盤からロングボールを多用する戦術を選択しました。ビルドアップをする際に水戸の前からの強いプレスを避けるため、リスク回避の一環として選んだ方法だと考えられます。この選択は、場合によっては有効なケースもありますが、この試合における鹿児島のロングボールは、ほとんど相手に奪われるか、味方のアタッカーに繋がらないことが多く、効果を発揮しませんでした。
水戸は序盤からプレスを積極的に仕掛け、鹿児島の守備陣にプレッシャーをかけました。これにより、鹿児島はボールを繋ぐ意図を見せながらも、安全策としてロングボールを選択せざるを得ない状況に追い込まれます。ここで気になるのは、鹿児島が野嶽選手を起用しながら、ショートパスを使ったビルドアップをもっと活用しなかったことです。野嶽選手はボールを動かす能力に長けており、プレッシングを受けながらもパスで展開することができる選手です。監督や選手が、ボールを繋ぐよりも安全策を優先した判断だったのかもしれませんが、この部分の戦術的意図に疑問が残ります。実際彼がいい形でボールを受けられると、水戸陣内にボールを運べていました。
守備面での評価と改善点
鹿児島は前半を通じて、基本的には水戸に主導権を渡してしまいましたが、守備の強度が高かったため、失点を許しませんでした。特に、稲葉選手の守備が際立ち、彼は危険なエリアに素早く対応し、ボール奪取に成功する場面が多々ありました。稲葉選手の動きは、鹿児島の守備の中心となっており、相手の攻撃を効果的に封じる重要な役割を果たしていました。彼のポジショニングの巧みさは、ボール奪取だけでなく、相手の攻撃を遅らせ、チーム全体に守備の準備をさせる時間を与えることにも貢献していました。
一方で、水戸がシュートチャンスを外したことで、鹿児島は幾度となく救われた部分もあります。水戸の攻撃陣がより決定力を持っていれば、前半の内に失点していた可能性は十分にあったと言えます。鹿児島の守備自体は評価できるものの、幸運にも助けられた側面もあったことを忘れてはいけません。
鈴木選手の役割と前半終盤の変化
前半の38分以降、鹿児島は試合の流れを変えるきっかけを掴みました。鈴木選手が下がってきてボールを受け、そこからリズムを作り始めたことが要因です。これにより、チーム全体がショートパスを繋いで前進するシーンが増え、効果的な攻撃が生まれました。特に注目すべきは、鈴木選手のワンタッチでのボール捌きです。彼が下がってきてボールを受けることで、水戸のプレスを回避し、野嶽選手がスルーパスを出して圓道選手が決定的な場面を迎えるチャンスを作り出しました。この連携プレーは、鹿児島が先制点を挙げる布石となりました。また彼は2点目と3点目にも絡み、今の鹿児島攻撃陣に欠かせない選手であることを証明しました。
後半の展開と戦術的変化
後半開始早々、鹿児島はいいプレーを見せ、追加点を挙げました。この時間帯の得点により、試合の主導権を渡さず、勢いに乗ることができるはずでした。しかし、この流れに水を差す出来事が、田中選手の退場でした。彼は後半早々に一枚目のイエローカードを受け、そのわずか10分後のプレーで二枚目のイエローカードをもらい、退場してしまいます。
2点リードしていること、有田稜選手が外で治療を受けていてひとり少ないことを考えると、このプレーは褒められることでは、ありません、
ただこの退場は、鹿児島の連敗を止めたいという田中選手の強い意志の表れであるとも言えると思います。この日の田中選手は積極的に守備に関与にして、先制点の場面も彼のプレスバックからのボール奪取から生まれました。
数的不利となったので、ここからは当然守備的にプレーすると思われました。私自身、この時点で2点を守るために守備を徹底できるので、それはそれでいいかなと思っていました。しかし、鹿児島は前からプレスをかけ続けます。2点リードして、ひとり少ないわけですから、相手陣内でプレスに行く意味が理解できません。そして当然、ひとり少ない鹿児島は、水戸に簡単にプレスをかわされ、ボールを運ばれるシーンが増えました。
数的不利の状況では、守備ブロックをしっかりとセットして、低い位置で守備を固めるべきでした。もちろんこれは下がって守備しろという意味ではありません。一度、後方で守備組織を整えた上で、センターサークル周辺からプレスを掛けるという意味です。そうすればDFライン裏のスペースを気にすることなく、前にプレスを掛けられるので、より安定した守備ができたと思います。しかしながら前線からのプレスが中途半端で機能せず、相手に決定機を与えることになりました。
終盤の守備とリスク管理
数的不利にもかかわらず、鹿児島は積極的にプレスを行ったため、突破されて、それを止めるために自陣でのファウルが増加し、相手にフリーキックのチャンスを多く与えてしまいました。これにより、決定的なピンチが何度も訪れましたが、水戸の決定力不足に救われる形で得点を許しませんでした。しかし、このようなリスクの高い戦術は、次節の強敵横浜FC戦では通用しない可能性が高いでしょう。鹿児島は幸運に助けられた面が大きかったため、次の試合での修正が急務です。
この試合において、鹿児島は勝利を収めたものの、内容的には多くの課題が残りました。前半の終盤と後半の最初のわずかな時間帯を除き、基本的には水戸が主導権を握る展開が続きました。ロングボールに依存した戦術は機能せず、機能しないにもかかわらず、その戦術を続けました。ビルドアップの多様性がなく、攻撃のバリエーションを欠いていました。加えて、数的不利の状況でのプレス戦術も、結果としてリスクを増大させる結果に繋がりました。
勝利によって連敗を止めたことはポジティブですが、次節の横浜FC戦に向けては、特に守備のリスク管理や戦術の柔軟性が求められます。
結局、一試合だけなら内容が乏しくても勝てるんです。でも連勝しようと思ったら、内容が伴わないとできないんです。だから勝ったから万歳ではなくて、勝ったけど課題はあったよねと考え、またこの一週間の練習で、少しでも成長し、つぎの横浜戦でその姿を見せて欲しいと思います
We are challengers!
チェストー!鹿児島ユナイテッド!
ヘッダー画像提供:ジューシーさん @juko3718
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