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鹿児島の強さの秘密 第20節 鹿児島対松本山雅

鹿児島県民160万人の鹿児島ユナイテッドサポーターの皆さん、こんにちは仙太郎です。

https://youtu.be/a8zZE2hMoNI

中盤の山場、二連戦の初戦藤枝戦を惨敗して迎えた、勝ち点で並ぶ山雅との戦い。ここで勝つか負けるかは大きな意味を持ちます。

鹿児島対松本山雅 先発メンバー

先発メンバーは中原選手が怪我から戻ってきて、CBにはレンタル移籍してきたばかりの小野寺選手がいきなり先発します。彼はまだ移籍して練習参加してから数日でしょうから、大抜擢ですね。これは高さのあるルカオ対策だったと思います。さすがに砂森選手ではルカオとマッチアップするのは厳しいですよね。米澤選手がベンチ外。恐らくローテーションの一環で休ませたのだと思います。

中央を守る山雅に対して鹿児島はサイドを中心にボールを前進させます。両SBの薩川、星選手がこの日も躍動していました。薩川選手はスピードの乗った突破やアーリークロスで、星選手は五領選手とのコンビネーションでパスの出してにもなったり、パスの受け手になったりと鹿児島の攻撃を組み立てていました。

鹿児島のビルドアップは、時には木村選手が降りてきたり、時には白坂選手が絡んだりと山雅が前からプレスを掛けて来ても、それを少ないタッチ数でかわしてボールを前進させていました。山雅のプレスは藤枝と比べると強度が低かったのも鹿児島にとっては有利に働きました。

山雅もライン間でボールを受けたりと、ボールを前進させることには成功しているのですが、鹿児島が押し込む時間が多かったこともあり、全般的に攻撃時の押し上げが遅くなり、ロングボール主体の攻撃が多かったと思います。鹿児島のSBが高い位置をとり、山雅のサイドハーフを深い位置に押し込めていたので、いつも狙われて危ない鹿児島SBの上がったあとのスペースを使われることも数えるほどしかなかったと思います。山雅は最後の崩しのアイディアが少なかったと思います。

その原因のひとつに山雅の横山選手のポジションがあると思います。彼は山雅で最も危険な選手なんですけど、ピッチ中央にいることが多いのであまりいい形でボール受けられていませんでした。ルカオみたいに強靱なフィジカルあれば、後ろ向いて受けられるので、中央のポジションでもいいのですが、横山選手は小さいですからね。彼は上手いのでボールを納めることはできるのですが、それは彼が得意とするスタイルではないですよね。

彼はスペースで前を向いてボールを持ったときに脅威になると思うので、サイドに置いておいて前向いてボール持たせたほうがいいと思います。藤枝の久保選手がサイドから鹿児島に脅威に与えていたようにね。ただ正直、鹿児島的にはこれにはかなり助けられました。もし彼がサイドにいて鹿児島SBの裏のスペースをもっと使われていたら、鹿児島のDFはパニックになりますし、SBが上がりにくくなっていたかもしれません。これが勝因のひとつと言っても過言ではないと思います。

また山雅はこれまでの相手と違い鹿児島の弱点を突くと言うよりは、自分達のサッカーで鹿児島を破ろうとしていたように思います。これも最近、弱点を攻められて苦戦していた鹿児島には、有利に働いたことは間違いないでしょう。

それでは得失点シーンを中心に試合を振り返りましょう。
まずは前半7分、いきなり鹿児島が先制します。これはCKが一度逆サイドに流れたところから、薩川選手がダイレクトでセンタリングをします。このボールを加入したばかりの小野寺選手がヘディングで落として、スペースに走り込んで来た広瀬選手がダイレクトであわせてゴールします。SBからCB経由でCBが得点するという珍ししケースですね。

この時、小野寺選手は一度、CBの後ろに逃げてCBの視界から消えているんですよね。そしてそのCBの前に飛び込んであわせてアシストします。見事なマークの外し方で、いきなり大仕事を成し遂げてくれました。

小野寺選手が山雅のCBの後ろに移動し、視野から消えてセンタリング時に空けておいたスペース(赤点線丸)に走り込みヘディングで落とし、山雅DF裏のスペースに走り込んだ広瀬選手(緑点線丸)がゴール

その後も鹿児島は何度もチャンスを作りますが、なかなか追加点が取れません。しかし前半35分に待望の追加点が生まれます。今回も薩川選手のセンタリングから、有田選手が相手CBを一回転してかわしゴールします。

この時、山雅のDFラインは高い位置を取っていたので、薩川選手はその裏のスペースにアーリークロスを入れます。そして有田選手はオフサイドにならないように、一度後ろに戻ってから飛び出します。有田選手はトラップしてボールを止めるとくるっと一回転して相手CBをかわします。これも相手のDFラインの裏にクロスを入れて、相手CBが自分のゴール方向へ動きながらのディフェンスで、攻撃側が有利な状況だったので、このような結果になりました。決して偶然ではありません。

有田選手の見事なボディバランスからのゴール。GKと1対1になった時に慌てずに一瞬間をとって相手GKが動くまで待ってのシュートは見事としか言いようがありません。

山雅DFライン裏にスペースがある事を認知して、そこへ走り込む有田選手へパスする薩川選手とその裏のスペースへ走り込む有田選手

その後も有田選手のシュートがポストを叩いたり、牛之濱選手のヘディングシュートなどチャンスはありながらも得点のできない鹿児島。このままハーフタイム突入かという前半ロスタイムにやられてしまいます。

前半47分に危険な横山選手にゴールを決められます。広瀬選手に当たりコースが変わり、白坂選手が反応して手に当てるもゴール。正直、前半終了間際の失点は痛かったです。

この攻撃時の起点は山雅のカウンターだったのですが、横山選手がドリブルでボールを持ち上がるのを中原選手が手でシャツを引っ張って(残り時間が少ないのがわかっていたので)意図的にファールして止めようとしたのですが、止められずに与えたCKからの得点でした。すごい横山選手のドリブルでしたね。

鹿児島の課題のひとつであるボランチの二人がボールサイドとDFラインに吸収されてDFラインの前にスペースを提供したシーン。横山選手のシュートは見事でした。

こうして嫌な感じでハーフタイム突入します。そしてそのままの勢いで後半4分に要注意だったルカオ選手にヘディングでゴールされ、同点に追いつかれます。

小野寺選手競り負けたのですが、この時もルカオ選手は一度小野寺選手の背中側に動き、視界から消えています。そして小野寺選手がルカオを視野に入れようと後ろに動いた瞬間に、できた前のスペースに走り込み頭であわせました(小野寺選手の先制点アシストと同じことをルカオ選手にやられてしまった)。そのため小野寺選手は競りに行くのが一瞬遅れて体を当てることができずに見事なヘディングを決められてしまいました。これはルカオ選手が一枚上手でしたね。

ルカオ選手が小野寺選手の背中に位置し、視界から消えている。小野寺選手がそのルカを選手をマークしようと下がった瞬間にできたスペースに走り込みヘディングシュートしたルカオ選手
それにしてもルカオ選手の高い打点。小野寺選手も一歩及ばず。小野寺選手的にはルカオ対策として抜擢されたのですから、かなり落ち込む失点だったと思います

実はこの失点は中原選手のパスをインターセプトされてから始まっているのですが、この時の山雅のCB 大野選手のインターセプトが秀逸だったので紹介しときます。通常、カウンターの場面で鹿児島の選手が前向いてボールを持ったらCBは下がって裏のスペースを埋めるのがセオリーです。ただこの時大野選手は中原選手のパスを予測し下がらずに上がってボールを奪いました。

下記の写真を見てもらうとわかるのですが、彼の後ろには大きなスペースがあります。多分映ってはいないのですが、もう一人のCBが後ろに残っているとは言えここでインターセプトできていなければ、鹿児島の選手はざっと数えただけでも4人がカウンターを狙っています。

つまりここでインターセプトできていないと、恐らく山雅の1対4とかになっていたと思います。そのリスクをわかっていながらインターセプトを狙った大野選手の判断は敵ながらあっぱれでしたね。これが同点弾につながる見事な守備でした。

山雅のCB 大野選手がインターセプトを狙う(黄色点線矢印)。その裏には広大なスペース(黄色点線丸)があり、鹿児島の選手四人がカウンターを狙っている。これもしインターセプトできていなければ、鹿児島の決定的なチャンスになっていたと思います


その後、鹿児島優位で試合が進みますが得点はできず、引き分けでも止むなしと考えられ始めた後半42分に決勝点が生まれます。後半25分から投入された木出選手がゴール。なんとこれまで出番のなかった木出選手が左足を振り抜きネットを突き刺しました。


この攻撃の起点になったのは中原選手の強い縦パスから。それを山本選手が受けてポストプレーから木出選手へのパスでした。渡邊選手が縦に走り、一瞬にそこへパスの選択肢もあったのですが、渡邊選手に引っ張られて山雅の選手が後ろに下がり、スペースができたので、そのまま中へ持ち込みシュートしました。

このゴールは本人が一番驚いたんじゃないかと言うくらいの衝撃でしたね。あまりのすごいゴールに驚き、声も上げられませんでした。

渡邊、山本、ロメロ選手が裏のスペースを狙うことにより山雅は後ろ向きの守備を強いられている。山雅が下がってできたスペースを認知した木出選手が中に切れ込み思い切りのいい左足のシュートでJ初ゴールが決勝点になった。試合を通じて山雅はDFラインの裏をつかれて戻りながら守備をする場面が目立ちました。DFラインのコントロールには課題があるようです

後半44分に鹿児島がPKを得て、それを山本選手がサイドネットに突き刺しとどめを刺します。

このPKの起点はロメロ・フランク選手が裏のスペースへ縦パスを出すところから始まります。そのボールを木出選手が山雅の外山選手と競り合いますが相手ボールになります。この時木出選手は一瞬ファールをアピールしますが、気持ちを切り替えてそのままプレスに行きます。この時外山選手が後ろ向きの状態でゴール前に浮き球のパス。

カーブが掛かり、受ける大野選手も後ろ向きで非常に難しいトラップとなり、ボールが手に当たりPKを取られます。ただこれは大野選手は責められないですよね。自分も後ろを向きながらボールはカーブがかかって来ますから、正確に止めるのは至難の業です。

ボールを持っていた選手は中にパスではなく、鹿児島ボールになってもいいので、サイドへボールを蹴るのがセオリーです。木出選手のプレスがなければ前を向いて選択肢が増えたと思いますので、この木出選手のプレスはとても良かった思います。

木出選手がプレスを掛けてボールを中に入れざるをなかった山雅の外山選手。ボールを受ける大野選手は後ろ向きでボールを肩越しで受けるのでかなり難易度の高いトラップ。しかも後ろ向きだったので、後ろから鹿児島の選手が来てないか確認するために首を振ってボールから一度目を切っている。これもトラップの難易度を高めた。

ただ負けていて鹿児島ボールにしたくなかったので、中にパスしたのだと思います。GKへのバックパスも選択肢だったと思いますが、GKがボールに近づいてしまい山本選手が容易にプレスにいける位置だったので、これもできず最後の選択肢として中へパスしたのですが、これが裏目に出てしまいました。パスした選手は圓道選手が見えていなかったと思います。トラップミスした選手はボールを見失っていていたので、PKでなくても圓道選手がボールを拾ってシュートできていたと思います。決まっていたかどうかはわかりませんが。

今日の試合は今年の鹿児島を象徴していたと思います。新加入の小野寺選手がいきなりアシストしたり、これまで出番のなかったが木出選手が決勝ゴールしたりと、誰が出ても活躍できるというのは、練習時にも出場時間の短い選手のモチベーションを上げている大嶽監督の手腕ですよね。例外なく休ませながらシーズンを戦っているのも長期的にはいいと思います。コンディションを維持して、最後の1ヶ月をベストコンディションで戦えることがとても重要ですからね。得点したときに、ベンチメンバーが出てきて一緒に喜んでいるのもよきよきです。最初は固定メンバーで戦っていたので少し心配でしたが、お見事としかいいようがありません。これが今年の鹿児島の強さの秘密のひとつです。

後半最初に同点に追いつかれたのも、結果的には守りに入ることがなかったので良かったと思います。いつもなら後半リードしていると、どうしても下がりすぎてボールが取れなくて連続で攻撃されて体を投げ打って守ってとなるのですが、同点になったので再び攻撃に出る必要が出てきて、結果的には良かったと思います。

それでは来週は相模原戦でお会いしましょう。
相模原戦は私も現地で応援させていただきます。

「チェストー!鹿児島ユナイテッド!」

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