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久保建英選手のすごさを相手選手から読み解く


最近、評価がうなぎ登りの久保建英選手ですが、彼の本当のすごさを知っているのは対戦する相手チームの選手です。特に久保と対戦するディフェンスの選手は彼のすごさを肌で感じているはずです。だから彼らから久保のすごさを聞きたいのですが、それを聞いたところで素直に相手選手を褒めるわけもありません。だから映像を見ながら相手選手が久保をどう考えているかを読み解いていきましょう。

見ていくのはマジョルカが大勝したセルタ戦です。

まず最初は、動画の1分52秒から始まる久保が右サイドでボールを受ける場面から始まるプレーです。
この時、久保は二人がマークに来ているにも関わらずボールを僅かに動かし、素早い振りからゴール枠内にシュートをしています。これで相手のDFは久保に自由に持たせると危ないと認識しました。

次に2分36秒から、これもまた右サイドで久保がフリーでボールを受ける場面から始まるプレーです。この時、セルタの選手はまたも二人で久保に行っています。画面で左から寄せている選手は本来、バイタルエリアを守るべき選手ですが、サイドバックが久保と1対1になっていると危険なのは理解しているので、サポートに行きます(ただこのサポートのポジション間違っていて、あまりサポートになっていないのですが、ここではそれは触れないでおきます)。

これで本来誰かが守らなければならないDFラインの前のバイタルエリアに相手選手は1人だけで、しかもボールより遠いポジションにいて、マジョルカの選手2人が大きなスペースに二人もいる状態です。ここで久保はさきほどと同じように自分で仕掛けて突破する選択肢もありましたが、彼はスペースに味方がいることを認知して、自分より有利な味方の選手にパスをしています。

しかも相手のCBは久保がボールを持ったときに、当然ながらボールよりも低い位置にポジションするのがセオリーですから、その通りにポジションしています。そこで3分から始まるこのプレーを横から映したVTRを見ていただきたいと思います。相手CB二人の前に大きなスペースがあるのがわかると思います。このスペースも久保が作ったスペースになります。久保が怖くない選手であればCBはここまで下がることもありません。なので久保からのパスを受けた選手は余裕を持ってシュートできています。

パスのタイミングも絶妙です。サポートに来る相手選手を引きつけてパスしているので、スペースを埋めようとした相手MFが一瞬遅れて、得点した選手と入れ替わってしまっています。久保がもうワンタッチしていれば、このMFの選手は間に合ってパスをカットできています。

ここで最初に見た久保のシュートシーンをもう一度見直して欲しいのですが、久保が自分でシュートに行った場面では自分より有利な状況の選手がいないことがわかると思います。つまり最初のシュートを打った場面では久保が自ら仕掛けることがひとつの正解だったことになります(サッカーには絶対的な正解がないのでこのような表現になります。この最初の場面でもファーサイドにひとりマークを外している味方選手がいるので、縦に突破してセンタリングする選択肢もありますし、そのままリターンパスを戻す選択肢もありましたが、常に第一選択肢はシュートですから、このプレー選択はひとつの正解になります)。

彼のすごいところは、この的確な状況判断です。ただのドリブル小僧ではありません。ただドリブルが上手いだけではなくて、チームにとってベストのプレー選択をできるところが、そんじょそこらのドリブルのうまい選手との大きな違いです。

4分11秒の久保の横パスから始まるプレーも見てみましょう。久保がリターンパスを受けると当然のように二人がマークに来ます。ここでも一瞬縦に行くふりをして、相手二人を中央に動かしてから、真ん中のスペースで有利なポジションにいる味方に横パスします。

ここで4分26秒からの横から見た動画を見て欲しいのですが、久保が持ったことで相手のCBがポジションを上げているのがわかります。彼は久保が中央を突破してきたときにつぶせる位置にいきたかったのだと思います。確かにそのCBの前には久保にリターンパスをした選手がいるにはいるのですが、CBは久保を見ていてこの選手をマークしようとはしていません。その証拠にこのCBが空けたスペースをこの久保にパスした選手に使われて失点しています。もしこのCBがこの選手をマークしていたのであれば、このようなことにはなりません。

つまり久保はこの場面で三人を引きつけて、フリーの味方にパスして、そこからのラストパスでチームメイトが得点しています。しかも中盤の中央のゾーンを埋める選手が久保にマークしに行っているので、そこに大きなスペースを作ることにも貢献しています。久保が並の選手と認識されていれば、この選手は中央のゾーンを埋めに行くはずです。つまりこの4点目は半分以上、久保が作った得点と言っていいでしょう。

普通、ボールホルダーに二人行っている状況で、その後ろにいるCBが上がることはありません。でも久保なら中央を割って突破してくるかもしれないと警戒しているので、このようなポジショニングをしていたと思います。つまりそれだけこの試合の久保はセルタの脅威になってし、それがセルタ守備陣の久保への評価と言うことになります。

こういう自分が相手を引きつけて、味方にスペースを作り、有利なポジションにいる味方選手にパスをするのが世界一うまい選手がいます。それはリオネル・メッシです。彼は自分で決めることもできますが、相手が4人も5人も集まってきたら、できたスペースに走り込んだ味方(ジョルディ・アルバがこのプレーが得意です)にパスをすることも多い選手です。

これ口で説明すると簡単なんですけど、実際プレーするのはとても難しいです。そんな難易度の高いプレーを易々とやってみせるところに彼の素晴らしさ、すごさが表れていると思います。

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