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フットマーク

昨年の11月からサーフボードのブランドなるものを始めた。コトが起こる時というのは本当にトントン拍子に進む。サーファーという生き物はある意味人類でありながら人類とは別の種族のように台風がその生を世に受けたその時からその子の動きに一喜一憂する。

それはまるである決まった季節になると大量に発生してくる獲物を待つ肉食獣のようでもある。

そしてその日常ではない非日常な時間の中でも、より特別なのがいわゆるサーファーことばで「The day」だ。そのボードブランドが誕生したのはまさにその日のその時を待つわずかなひとときだった。

40代に入り、人生の大きな節目を迎えた男はひたすらに古ぼけたロングボードのレールをサンドペーパーで擦っていた。
それを眺めてお茶を啜りながら、30代のサーフボードビルダーと50代の男は今日やってくるであろう波の話をしていた。

そのポイントはやんばるの東に位置し広く南向きに口を開いた湾の中にある。

沖縄らしからぬコーヒー色の水ではあるが、右から左に順序よく崩れていく波はほかにはない。このあたりのサーファーなら誰しもが待ち望んでいるパーフェクトブレイクだ。

40代の男は、内地と沖縄を行き来するデュアルライフをその年の4月から始めていて内地で手に入れた中古ボードをローカルサーファーに譲ったりもしていた。
そう内地から離れているがゆえになかなかいいサーフボードを手にいれるのが難しい。
そんなジレンマからの行動だった。

そして、このクセの強いやんばるの波に合うサーフボードはなかなかない現実もあった。

そこにビルダーがいるのだから、自然とどういうボードが合うのかという話になった。そしてそのボードを作るためのブランクスも今工場に在庫しているというではないか。

だったら作ろうと盛り上がっていくのは自然の節理。

なんということだ。急に現実化した流れ。
3人は自分達の乗りたいもの、そして乗りたいターゲットウエイブについて語り出した。なかなか話はまとまらない。それはそうだ、みんな好みが違う。

ただみんなが笑顔になれるものをつくりたい。
その一点はブレてなかった。

今まで乗ってきた心揺さぶられるボード達。
それぞれが15~30数年波乗りしてきた思い出のボード。とにかくグライドする気持ちよさ、波と一体化できるFLOWを感じれるそんなボードが欲しかった。現代的なコンケーブボトムではなくロール系やVボトムのデザインが良かった。

ミッドレングスのエッグタイプのサーフボードのアウトラインを参考にしながらも極端にテイクオフが掘れてくるやんばるに合うようにロッカーを再構築してノーズの形やテールもリデザインして一気にシェイプした。

それがwood pecker Gera プロトタイプだ。
たまたまそのボードが出来上がった日にtossy とyamaが参加しているサーファーたちの模合があったのだ。二人は急遽その出来上がったボードとクラウドファンディングの企画書を作り参加したのだった。
大いに盛り上がりなんと二人が出資してくれることに。

涙が出るほど嬉しかった。


そこからはひたすらにpeckerに乗る日々が続いた。
7’3 というミッドレングスど真ん中のサイズで幅の23あり浮力もしっかりとあるシングルフィン。
フィンひとつとってもどれがはまるのかわからない。テストという名の波乗り。

こんな楽しいことないって思った。
そして乗れば乗るほどこんなにも楽しいボードはないのではないか。本気でそう思えた。

そして乗りまくったボードには勲章のように乗った数だけのフットマークがつくのである。

中古としてボードの販売する時には出来る限りフットマークがない方が値段つく。
しかし、ぼくたちのボードにはその調子のよさを如実に物語るフットマークが燦然と輝いているのである。

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