見出し画像

とっくに賽は投げられちゃってる

例えば、吉永小百合さんに橋幸夫さん、浜田光夫さんや松原智恵子さんたちがご出演の日活映画「いつでも夢を」という公開された頃(1963年/昭和38年)。工場に勤めることはピカピカで、夜間高校で苦学する吉永さんたちの将来に希望の光となっているのも工業生産に従事すること。

定時に出社して、残業も厭わず、言いつけ通りに機械を組み立てる。流れ作業の一端を担っているだけだから全体は見えないし、見ようとすれば「面倒臭いヤツ」だと会社に目をつけられたかもしれない。故に、一心不乱に目の前に流れてくる製品を部分的に組み立てて、そして、昼休みは「みんな」でバレーボール。

バレーボールといえば、僕らに世代には「スポ根」ものの元祖みたいな感じ。1964年の東京オリンピックの時は金メダルを取った全日本女子の監督さんのセリフだったという「黙って俺についてこい」が、当時は流行語にもなり、監督さんは参議院議員にもなった。

そういう感じが美徳だった。

「黙って俺についていく『みんな』」であることも美徳。それが工業生産な経済立国を支えた美しい方便だった。戦後世代の一期生にしてもそうだし、「進め1億 火の玉だ」の時代には軍国少年・少女だったの世代だってそうだった。

みんなが「みんなで」に疑いを持たない。

疑いを持とうと思えば持てたし、実際にそういう人もいたんだろうけど、たいていが、そうではなかった。モノによる豊かさにつられて、その必要性を感じなかったんだろうし、実際にお金持ちになった実感もあったんだろう。昨今の振り込め詐欺等の特殊詐欺の被害件数と被害総額からは、高度成長期ってよっぽど庶民レベルでも、手につかない金を手にすることができたんだろうことが推測される。

国策的に創られた「過保護なボンボンとお嬢」みたいな感じが、この国の御隠居さんたちだし、たいていの僕たちであり、不惑な世代なんでしょう。

(ガンダムも「組織」ありき。故にワンピース世代になるまでは「工業生産」型なのかな。で、軍国少年・少女やスポ根ではなくても、組織の優秀な部品であることには疑いを持たない。そして、仕事はあくまでも凌ぎのための苦役です)

「これから」を考えると、僕らも辛酸を舐めながらたくましくなっていくのかな。同時に新しい時代の黎明でもあるんだから、順応していけば「これまで」の時代に感じていた息苦しさからは解放される。前の敗戦前後から高度成長期へという時代もそんな感じだったんだろう。

無用の超高層ビル群と、杜を潰し、桜を切り倒して強行される面的な再開発事業と。

でもね。街場の世論は、いまだに無口なんだ。

あから、まず食い物と職業を失って「闇市」からのやり直し。その状況が落ち着いたら、新秩序。組織の時代が終わり、会社員の時代が終わる。安倍さん的にいえば「一億総自営」の時代。優秀な高校野球の選手を目指せばよかったのが、いきなりメジャーリーガーじゃなきゃダメっていう。

多分。ベイシックインカムが実現するまで、世の中はガタつくんだろう。「戦国時代」って一口にいうけど、100年だからなぁ。

でも、しょうがない。とっくに賽は投げられちゃってる。