iPS細胞研究の最前線:山中伸弥教授が語る可能性と課題
こんにちは、皆さん。今回は、2010年10月2日に京都大学で行われた山中伸弥教授による講演「iPS細胞研究の最前線」の内容をお伝えします。iPS細胞研究の第一人者である山中教授が、この革新的な技術の現状と将来展望について詳しく解説しています。
iPS細胞とは
まず、iPS細胞(人工多能性幹細胞)について簡単におさらいしましょう。iPS細胞は、皮膚細胞などの体細胞に4つの因子を導入することで作られる細胞です。英語では「induced pluripotent stem cells」と呼ばれ、その頭文字を取ってiPS細胞と名付けられました。
iPS細胞には2つの重要な特徴があります:
多能性:理論上、体内のあらゆる種類の細胞(200種類以上)に分化できる能力
自己複製能:ほぼ無限に増殖できる能力
これらの特徴により、iPS細胞は医療応用に大きな可能性を秘めています。
iPS細胞の作製方法
iPS細胞の作製過程を簡単に説明しましょう:
皮膚生検:
トレパンという器具を使用して、上腕や太腿から数ミリの皮膚組織を採取
比較的簡単で短時間で終わる処置
細胞培養:
採取した組織を培養皿に置き、2〜3週間培養
10cm程度の培養皿全体に皮膚細胞が広がる
因子の導入:
4つの因子(Oct3/4、Sox2、Klf4、c-Myc)を皮膚細胞に導入
約1ヶ月後にiPS細胞のコロニーが形成される
iPS細胞の培養と分化:
形成されたiPS細胞を増殖
必要に応じて様々な細胞に分化誘導
例えば、心臓の筋肉細胞に分化させると、培養皿の中で自発的に拍動する細胞を観察することができます。これは、もともと皮膚細胞だったものが、iPS細胞を経て全く異なる性質の細胞に変化したことを示しています。
iPS細胞の医療応用
山中教授は、iPS細胞の医療応用について、主に3つの方向性を示しました:
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