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オミクロン株ってわたしたちのせいじゃない?

 マスク生活っていつまで続くんだろうー。と思っている人は多いだろう。私もそのうちの1人。息苦し、メガネは曇るし、耳は痛いし。そんな中、オミクロン株が世界中に急速に広がっている。ワクチンの3回目接種を急がなければならないと先進国が躍起になっている。日本もそれに漏れず大急ぎだ。ただちょっと立ち止まってみないか。以前にも同じような状況があった。本当にいま急ぐべきは、3回目接種だけなのだろうか。

 南アフリカで初めて報告されたオミクロン株は、既に世界中に広がったと言って差し支えないだろう。日本は水際対策を強化したが、国内でのまん延まで時間を稼ぐ効果が期待されるぐらいで、流入を防ぐのは不可能なのは過去の例を見ても明らかだ。2021年中は何とか持ちこたえて忘年会ぐらいは久々にできるだろうが、22年の春先に猛威を振るって、卒業式や入学式といった行事が立て続けに中止されるのではないかと危惧する。もちろん時間稼ぎをするのは、第5波であらわになった病床不足や軽症者の療養などの課題を解消する時間を得るという点では意味があるので、無駄だと言っているのではない点は言い添えておく。

 なぜ南アフリカで見つかったのか。まだ理由は明らかではないし、今後も因果関係が明確に解明されることはないだろう。ただアフリカで見つかった点を考えると、私たちに原因の一端があるのではないかと思い始めた。

 理由はワクチンの偏在だ。日本では2回目の接種完了者が人口の8割に迫り、希望者にはほぼ行き渡ったと考えて良いだろう。かなり生活が戻ってきた実感がある人も多いだろう。12月13日に発表された日銀短観でも、非製造業で改善が見られた。時間の経過と共に免疫力が低下し、ワクチンの効果を再度強化するため、3回目の接種を進める状況だ。

 一方で、アフリカ全体の接種完了率は1割にも達しておらず、2022年末に70%を目指すアフリカ連合の目標にはほど遠いのが現状だ。ワクチン格差がどんどん広がっている。日本を含めた先進国が何もしていないわけではないが、コバックスへの拠出金は、自国の対策と比較してすずめの涙ほどだ。

 「そんなの、自国民が最優先なんだから当たり前だ」という批判が聞こえてきそうだ。その声にいろいろ反論はあるが、ここで声を大にして言いたいは、自国民のためにも3回目の接種よりもワクチンの格差是正に力を入れるべきだということだ。

 「人道的な支援」という側面がないわけではない。全世界の人が健康な生活ができるように対応するのは、非常に重要な観点だ。ただそれだけではない。ワクチン格差は新たな変異株を生む可能性を高めてしまうという点を忘れてはいけない。一般的にウイルスは感染を繰り返すと変異する確率は高まり、新型コロナウイルスも例外ではない。実際にオミクロン株が発見されたのは南アフリカ。アフリカの中で最も発展している国の一つだが、そのほかの貧しい国で既に変異していたものが、南アフリカで偶然発見された可能性もある。状況証拠しかないので明確には言えないが、ワクチンが普及しない状況が感染を拡大させ、その結果、新しい変異株を生み出したと考えられるのではないだろうか。

 今回オミクロン株が確認され、日本も大急ぎで対策を進めた。ただワクチン格差が解消されなければ今後いくつもの変異株が生まれ、そのたびに、何度も水際対策なり、追加のワクチン接種接種なりをずーーーっと続ける必要がある。つまりはいつまでたってもコロナ禍が収束しない。長引き続ける。それは最も望ましくない。ただ3回目の接種を急ぐ私たちは、皮肉にも今以上のワクチン格差を生み出す結果をつくっている。その危険な状態を図らずも生み出しているのは、私たち自身ではないだろうか。

 この点、WHOのテドロス事務局長は今年の夏過ぎから繰り返し、先進国は3回目接種「ブースター接種」を控えるよう呼び掛けているが、先進国は自国を優先して無視しているのはご存じの通りだ。

 私は今時点で「全面的に3回目接種を停止しろ」と主張しているわけではない。オミクロン株が喫緊の脅威として迫る中、医療従事者や重症化リスクの高い基礎疾患を持っている人、高齢者施設の利用者など、罹患して亡くなるリスクの高い方には、是非3回目の接種を進めてほしい。ただ健康な市民は3回目接種を一度思いとどまって、その分を接種の進んでいない地域に融通し、世界全体で免疫力を高めなければならない時期に来ているのではないだろうか。でないと何度も何度も何度も感染の波を繰り返さなければならない状況が続いてしまう。それは第6波やオミクロン株を乗り越えても繰り返される。それだけは避けなければならない。「怖いからワクチンを打つ」だけではなく「世界でコロナに免疫を付ける」へと発想を転換し、世界のワクチン格差の是正に真剣に取り組むよう、わたしたちのためにも、舵を大きく切るべきだ。

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