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【記事和訳】アウジーウカ最新情勢&ロシア軍のヘリ運用状況:2024年1月ウクライナ(FRONTELLIGENCE INSIGHT)

このnote記事は、上記リンク先英文記事の日本語訳である。リンク先のSubstack記事(日本時間2024年1月24日投稿)は、ウクライナ軍予備役将校が創設した戦争・紛争分析プロジェクト「FRONTELLIGENCE INSIGHT」によるウクライナ戦況分析記事である。

なお、この記事で使用した画像は、原文記事に添付されている画像からの転載である。


日本語訳「アウジーウカ最新情勢&ロシア軍のヘリ運用状況」

2023年末までの時点で、Frontelligence Insightはアウジーウカ情勢の安定化を報告した。ここ最近の進捗は、アウジーウカ情勢のウクライナ軍にとっての悪化を示している。ロシア軍は同市南部住宅エリア内で、限定的だが成果を収めており、このエリアに歩兵を浸透させることに何とか成功している。これは、以前の安定した状況からの変動であり、注目すべきことだ。

アウジーウカの北側がAKHZ[アウジーウカ・コークス工場]の堅固な工業用建築物によって守られている一方、南部エリアは1〜2階建ての脆弱な家屋が主体であり、砲火の影響を受けやすい。このことは典型的なロシア軍の手法に最適な条件をつくり出している。それは、占領が不可能なら、砲撃したうえで軽歩兵を送り込み、そして、瓦礫と化した廃墟を占領するという手法だ。

ウクライナ領ドネツィク州アウジーウカ
48.122435, 37.753418
2024-01-17 07:41 UTC
©️Frontelligence Insight

砲撃が都市外周部から住宅エリアへと進んでいることは明らかで、このことは上述した手法にロシア軍が移行したことを示している。このエリアを支配しているのがどちら側なのかは、上記画像からは分からないが、このエリアが徐々に廃墟と化すなか、この地区の防衛の困難さが増すことが予想される。同様の脆弱性は、近隣の複数階からなるマンション建築物にも広がっており、そこは以前、ロシア軍のFAB[燃料気化爆弾]の攻撃破壊対象になっていた。

両側面の状況は相対的にみて、今でも安定しており、ウクライナ軍によるアウジーウカ防衛の持続を可能にしている。画像分析によって、アウジーウカの北方における継続的な砲撃箇所の移動が分かり、ノヴォバフムティウカ付近とノヴォカリニウカ付近の地区が砲撃目標になっている。現在も進行しているこの傾向は、アウジーウカ両側面を通って機動しようとするロシア軍の取り組みと、あまり防護されていない、より後方のエリアに位置するウクライナ側兵站線を遮断しようとするロシア軍の取り組みを示している。

ウクライナ領ドネツィク州アウジーウカ
48.204288, 37.682308
2024-01-21 07:41 UTC
©️Frontelligence Insight

私たちのチームは、ステポヴェ、ベルディチとその周辺エリアで新しい砲撃痕を引き続き目撃しており、それはこれらのエリアにかかる圧力を示唆している。そして、ステポヴェ〜ベルディチ地区は依然として激戦地区である。

まとめると、アウジーウカ情勢はウクライナ軍にとって悪化しつつあり、ロシア軍砲兵への有効な対抗措置が不足するなか、ウクライナ軍は住宅エリアから徐々に締め出される状況に直面しているというものになる。欧州諸国からの不十分な供与と、国内の政治的難題に起因する米国の援助中断が引き金となり、ウクライナが入手できる砲弾に限りが生じているという状況は、ある種のギャップを生んでおり、ロシアはこのギャップをうまく利用している。それを支えているのが、イランからと、それ以上に北朝鮮からの供与がもたらす、ロシア側の砲弾数の面での優勢である。また、FPV[一人称視点]ドローンは依然として重要であり、ロシア軍の攻撃に抵抗するウクライナ側防衛にとって有益な存在である。一方でロシア軍はFPVドローンを効果的に投入して、ウクライナ軍兵站ルートを狙っており、また、砲撃・空爆を誘導している。

再動するロシア軍ヘリコプター任務

ウクライナ領ヘルソン州ストリルコヴェ
45.89054, 34.89552
2023-05-20 12:47 UTC
©️Frontelligence Insight

私たちのチームは、ストリルコヴェにFARP(前方武装燃料補給地点)目的のヘリコプター基地があることを以前、特定した。ルハンシクとベルジャンシクのロシア軍空港にウクライナがATACMSで攻撃したのち、この基地をロシア軍は放棄し、この基地は最近まで使われないままであった。

ウクライナ領ヘルソン州ストリルコヴェ
45.890820, 34.895839
2023-01-27 08:27 UTC
©️Frontelligence Insight

2024年1月以降の最新の衛星画像によって、上記画像の基地にロシア軍ヘリコプターが展開していることが明らかになった。複数日間、分析を続けた結果、ロシア軍は同時に3〜4機しか配置していないことが分かった。さらに、ここのヘリコプターは、利用可能なスペースが限られているにも関わらず、かなり分散して配置されているようだ。

ロシア軍がウクライナに供与される西側製兵器に適応する意志をもっていることを、Frontelligence Insightはいつも強調してきた。一時的な状況改善ではなく、継続的なパワー・バランスのシフトを成し遂げるために、本当の効果を発揮するには、西側製兵器の十分な供給が必要だと、私たちは確信している。兵器が小出しで提供される場合、短期的な優勢が得られ、優勢な状況下で作戦上の成功が可能になるけれども、敵軍は時間とともにこの優位性に適応し、優位性を最小化する。

私たちのチームは、ロシア軍の兵站がこのような変化にどのように適応するのかを、すでに扱ってきた。そして、私たちはロシアの軍事インフラの変化に関して、かなりの情報を集めており、今後の数週間、継続して最新情報を提供していく予定だ。

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