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【SNS投稿和訳】2024.02.24時点のロシア・ウクライナ両軍の戦力展開状況(Pasi Paroinen氏)

OSINTアナリストでフィンランド軍予備役将校のパシ・パロイネン氏が、2024年2月24日時点のロシア・ウクライナ両軍の戦闘序列(Order of Battle)を解説したものを、X上に投稿しています(日本時間2024年2月26日01:09投稿)。同氏はフィンランドのOSINTチーム「Black Bird Group」のメンバーとして、ロシア・ウクライナ戦争のモニターと分析を行っている方です。

以下は、このパロイネン氏の連続投稿の日本語訳になります。

なお、戦闘序列を示した地図は、パロイネン氏の投稿からの転載になりますが、note上でオリジナル画像の画質で表示されるのかどうかは分かりません。画像のキャプションに記載したURLをクリック/タップすると、画像添付投稿にアクセスできますので、必要に応じて、投稿原文を参照してください。

日本語訳:ロシア・ウクライナ両軍の戦闘序列(2024年2月24日時点)

ロシアのウクライナ侵攻が始まって2年が経過した。このスレッドで示したのは、2024年2月24日時点でのウクライナ・ロシア両軍の前線状況と部隊配置状況の概要である。添付した画像は、私たち制作の戦闘序列追跡地図の高画質画像だ。拡大すると、より詳細が分かるようになっている。

https://x.com/inkvisiit/status/1761785595389444279?s=61

戦線上のウクライナ軍は、3つの「作戦・戦略部隊集団(OSG)」として組織されている。それは、オデーサ(O)、タウリヤ(T)、ホルティツィア(K)の3つだ。

https://x.com/inkvisiit/status/1761785599546036371?s=61

OSGオデーサの任務は、ドニプロ川を渡っての急襲任務と嫌がらせ的任務を遂行することと、作戦担当地域内へのロシア軍の侵入を防ぐことにある。このOSGの作戦担当地域は、だいたいオデーサ市からザポリッジャ市にまで延びる範囲にあたる。

OSGオデーサは約11〜12個旅団を有しており、(上記地図に示したように)ざっと4個師団相当の戦力である。この戦力の大部分は軽歩兵部隊(4個海兵旅団で増強された地域防衛軍と国家警備隊)である。

OSGタウリヤの作戦担当地域は、ざっとみて、ザポリッジャ市からホルリウカまでの範囲だ。この作戦担当地域は現在、激しい戦闘が続く4つの方面に分かれている。それは、トクマク〜オリヒウ、ヴェリカ・ノヴォシルカ、ノヴォミハイリウカ〜マリインカ、アウジーウカの4つだ。

OSGタウリヤが有する戦力は、おおむね35〜40個旅団+砲兵部隊である。これは、だいたい11〜12個「師団相当戦力」に等しい。試算が難しいのが、ウクライナ軍予備戦力であって、3〜4個旅団と、前線に展開している部隊から引き抜かれて退がってきた、休息中の部隊で構成されているものと思われる。

OSGホルティツィアの作戦担当地域は、活発な動きがみられる戦線の残りの部分で、だいたいホルリウカ市からクプヤンシクまでになる。また、ハルキウ州でまだロシア側支配地域になっているところも担当している可能性が高い。ここで現在、活発な動きがみられるのは、バフムート、クレミンナ〜リマン、クプヤンシクの3軸だ。

OSGホルティツィアが有する戦力は、約42〜52個旅団で、言い換えると、14〜17個ほどの「師団相当戦力」である。OSGホルティツィアはまた、最も多い予備戦力を抱えている可能性が高い。けれども、その予備戦力は以前の前線展開から引き上げられて、回復・再建を行っている部隊で構成されている可能性が高い。

ロシア軍は自軍を4つのOSGに分けている。「ドニエプル」、「東部」、「中央」、「西部」の4つである。この戦力は、さらに約10個の軍規模作戦集団に分けられている。

ドニエプルOSGは現在、ロシア軍OSGのなかで最も強力で、約12〜13個師団相当の戦力を有している。このOSGの戦力はさらに第18軍部隊集団と第58軍部隊集団に分かれており、第18軍はドニプロ川に面して配置され、第58軍はザポリッジャ方面に配置されている。

第18軍部隊集団には、2個の機動師団(Maneuver Division)が所属している。第70自動車化狙撃師団と第104空中強襲師団がそうで、両師団は現在、クリンキ橋頭堡での反撃のために集結している。それに加えて、ここには多数の各種旅団と地方で編成された自動車化狙撃連隊が存在している。

https://x.com/inkvisiit/status/1761785617996763370?s=61
https://x.com/inkvisiit/status/1761785617996763370?s=61

ドニプロ川沿いに展開しているロシア軍戦力の大部分の質は、好意的に評しても、問題があるというレベルだ。しかし、予備戦力の規模はかなり大きく、必要があれば、戦線上の他地区に送り込むことができる。

ロシアの南部戦線には、ザポリッジャ〜オリヒウで対峙している第58軍作戦集団がおり、戦力を強力に集中させている。具体的には、2個VDV[ロシア空挺軍]師団(第7と第76)、2個自動車化狙撃師団(第19と第42)が存在している。第58軍作戦集団は全体で約5〜6個師団相当の戦力である。

https://x.com/inkvisiit/status/1761785623667413151?s=61
https://x.com/inkvisiit/status/1761785623667413151?s=61

「東部」もしくは「東方」OSGは、ヴェリカ・ノヴォシルカに面して配置された強力な第5軍作戦集団と、ポロヒー周辺に配置された相対的に弱い第35軍部隊集団を有している。第127自動車化狙撃師団は東部OSGの主要機動戦力であり、現在、ヴェリカ・ノヴォシルカ周辺で戦闘を続けている。

中央OSGは約17〜19個師団相当の戦力を有しており、これらは3つの作戦集団に分けられている。第8軍部隊集団は現在、ノヴォミハイリウカ〜マリインカ地区で交戦を続けており、別の部隊集団はアウジーウカ周辺で、さらに別の部隊集団はバフムートで交戦中である。

第8軍作戦集団は約3〜4個師団相当の戦力で、この地区の戦闘部隊の中核となっているのが、第20親衛自動車化狙撃師団と第150自動車化狙撃師団に所属する部隊である。アウジーウカ方面集団の戦力は、だいたい5〜6師団相当の戦力に等しい。

バフムート作戦集団は7〜8個師団を有する。バフムート作戦地域におけるロシア軍戦力の中核は、2個VDV師団(第98と第106)に所属する部隊で構成されている。なお、この2個師団には、それぞれ元々隷下に置いている2個連隊に加えて、3個目の連隊が最近、追加された。

「西部」OSGは、中央OSGと同様に3つの作戦集団に分かれている。一つはクレミンナ〜リマン作戦軸上の第20軍、もう一つはスヴァトヴェ〜ヴェルフニア・ドゥウァンカ地区の第1親衛戦車軍、最後がクプヤンシク作戦軸上の第6軍である。全体で13〜14個師団相当戦力を、このOSGは有している。

https://x.com/inkvisiit/status/1761785636044837131?s=61
https://x.com/inkvisiit/status/1761785636044837131?s=61

第1親衛戦車軍の展開とその態勢に関するスレッドを、私はすでに投稿している[*注:下記のリンク]。そのため、ここでより深く説明するつもりはないが、一つだけ指摘しておきたいことがある。それは、第1親衛戦車軍所属部隊の一部がリマン作戦軸に送られている可能性があるということだ。

第20軍部隊集団は正確な戦力評価が最も難しい部隊の一つだ。クレミンナ〜リマン作戦軸は全体的にみて、さまざまな種類の部隊が入り混じって集まっており、そのなかには別の地区に再配置された部隊もあれば、上述したように別の地区から送られてくる部隊も存在している。

この地区のロシア軍の中核は、第3・第67・第144自動車化狙撃師団の各隷下部隊だ。それに加えて、第2親衛自動車化狙撃師団と第47親衛戦車師団に属する部隊が、上記戦力を増強するために送り込まれている可能性もある(低確度情報)。

第6軍部隊集団は最弱部隊の一つで、その中心となる機動部隊は第21・第138自動車化狙撃旅団である。この2個旅団は、多数の、各地域で編成された自動車化狙撃連隊によって支援されている。今後のいずれかの時期に、私は各作戦地域に関して、もっと詳しく解説するつもりだ。

最後に免責事項とコメントをいくつか添えて、このスレッドを締め括っていこうと思う。地図上で「予備(In reserve)」という表記が伴っている部隊すべてと、上級司令部すべての位置は、可読性を配慮して地図に示されており、これら部隊の正確な展開地点を示すものではない。

ウクライナ軍の前線配置部隊のすべては、撮影位置特定可能な動画に基づいており、その情報源のほとんどはGeoconfirmedからのものである。アスタリスク(*)なしで年月日表記が付いている部隊も同様だ。1つ、または、2つ以上のアスタリスク付きの年月日表記有りの部隊すべては、CDSやマショヴェツ氏のような副次的情報源に基づくものだ。

私はまた、Ukraine Control Mapの成果にかなり頼っている。基本的に私は、過去3カ月(12月23日〜2月24日)のデータだけを利用しようとした。この地図は、とても頻繁に更新されており、部隊の一部が行方不明になっている可能性が高い。

最後に、ジェニー&アンッティ・ウィフーリ財団に感謝申し上げたい。この財団からの資金提供によって、データを入手し編集することが可能になっている。私たちBlack Bird Groupのほかのメンバーもフォローしてください。また、以下のリンク先で私たち制作の前線情勢地図が閲覧できる。

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