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【記事和訳】アウジーウカ戦線:兵站面からの分析 11月12日情報(FRONTELLIGENCE INSIGHT)

ウクライナ人予備役将校が立ち上げた戦争・紛争分析チーム“FRONTELLIGENCE INSIGHT”が、ウクライナ東部アウジーウカ方面の戦況分析記事(日本時間2022.11.13, 04:14公開)をSubstackに投稿しています(無料記事)。

本記事は、上述のFRONTELLIGENCE INSIGHT戦況分析記事の日本語訳になります。なお、本翻訳記事中で使用した画像は、元記事からの転載になります。


日本語訳

今週初めの私たち推定に基づくと、ロシア軍はすでにステポヴェ内の東側区画を一部奪取している。ロシア軍は今後、この村落全体を奪取する試みを続けていくことが予期される。今回の記事では、今後の進展の分析と、最近の進捗を私たちが正確に見通せた理由を示すことにする。

ロシア軍の戦術に対する低評価とアウジーウカ周辺での甚大な損失があるにも関わらず、ロシア軍の全体的なアプローチは、部分的な成功をもたらしている。ロシア軍はアウジーウカの北にある防衛陣地に何とか穴を開けることに成功し、鉄道線まで到達した。この結果、アウジーウカへの補給路は危うくなり、一方でロシア軍の選択肢はかなり狭まった。つまり、ロシア軍には、ステポヴェを占領したうえで、ベルディチを奪取する試み、もしくは、AKHZ[アウジーウカ・コークス工場]を制圧する試みという可能性が生じている。どちらのシナリオを取ったとしても、アウジーウカへの主補給路に圧力がかかることになる。

激しい砲撃によるステポヴェの建造物の破壊が私たちに示していたことは、ロシア軍がステポヴェへと進入する可能性の高さであって、それは先週末に起きたことだった。がれきの山を守ることは、防衛側にとって極めて困難なことだ。そうであるがゆえに、ロシア軍がステポヴェを奪ったとしても、ここは、ベルディチ内へとさらに進んでいくための有効な足場にはならない可能性がある。

ロシア軍がステポヴェからベルディチ内へと進んでいくという見方に対して、私たちは依然として懐疑心を抱いている。それにはさまざまな理由があり、そこには兵站面の問題も含まれる。ロシア軍には北からベルディチに圧力をかけるという代替案があるとはいえ、そうする場合、ロシア軍兵站が過度に延ばされるという欠点が生じ、結果的にロシア軍を脆弱な状態に置く。

もっと広い文脈で見ると、兵站は両軍にとっての重要な懸念材料になっていくだろう。鉄道線をまたぐ形で兵站を管理することは、写真画像で示したように、ロシア軍にとって難しいことになっていく。それと同時に、泥濘期の間、道路の多くは通行できなくなっていき、防衛側のための補給路を狭めていくことになる。ロシア軍がこの限られたルートを火力制圧下に置こうと試みる可能性は高い。

現在、ロシア軍はアウジーウカとその外の戦力をつなぐ道路への火力制圧ができていない。そうであるとはいえ、私たちは事実確認のできない個人レベルの報告をいくつか受けとっており、それらの報告は、FPV[一人称視点]ドローンを用いて、道路に沿った補給ルートの妨害を試みるロシア側の取り組みを示唆している。

現段階において、ロシア軍がAKHZ内に足場となる拠点を築くために、分隊〜中隊規模の歩兵グループを投入していくだろうと、私たちは予想している。目下、状況は安定している模様で、ロシア軍は石炭屑集積場[ボタ山]の完全な支配を確保することと、AKHZ付近の鉄道線を越えたところに強固な足場を築くことの困難さに直面している。


まとめ:

要するに、アウジーウカの戦いにおける現状の展開は、両軍がそれぞれの兵站ルートを維持できるかどうかに左右されているということだ。ロシア補給線は狭く引き延ばされており、継続的なウクライナ側の監視下にある。そのことが今後のロシア軍の移動にかなりの制約を課す。とりわけ鉄道線を越える動きが制限され、そこでロシア軍はすでに足場を維持することの難しさに直面している。一方で、ウクライナ側の兵站業務は、泥濘期が始まり、使用可能な車両数と使える道路の数が減ることによって阻害されていくことになる。この状況は、ロシア軍が砲兵とFPVドローンを用いて車両を攻撃目標にする機会を、同軍に与えることになるだろう。ウクライナ軍がAKHZ工業地区とオルリウカ〜ベルディチの線を効果的に防衛できる場合、ロシア軍が現在の計画を放棄せざるを得なくなり、それとは別の戦術的・作戦的アプローチを選ばざるを得なくなる可能性が生じる。

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